KAIZEN記事

定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!④ ~塗装ブースを長く使うために~ 2025年3月28日

法定点検の時期はいつか、確認しておきましょう。

メンテナンスについて解説するシリーズの第1回では予防保全や事後保全について、第2回ではコンプレッサ、第3回ではスプレーガンのメンテナンスについてお話ししました。最終回の今回は塗装ブースのメンテナンスについてお話しします。

第一回 定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!① ~予防保全とは?~
第二回 定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!② ~コンプレッサを長く使うために~
第三回 定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!③ ~スプレーガンのメンテナンスと塗装不良~

メンテナンスをしないとどうなる?

法令違反に注意!

塗装ブースにはフィルタでミストを捕集する乾式ブースと、水を使ってミストを捕集する湿式ブースがあります。乾式と湿式どちらの塗装ブースも、メンテナンスを怠ると排気能力が落ち、塗料ミストを捕集するという塗装ブース本来の役割を果たせなくなります。有機溶剤ミストが作業場に滞留すると作業者が中毒になる危険性があります。

有機溶剤を使う作業場では法令で塗装ブースの自主点検と作業環境測定が義務付けられています。定期自主検査は1年以内に1回実施し、ブースの摩耗や腐食がないか、吸排気の能力などに異常がないかチェックして、記録を3年間保存します。作業環境測定は6ヶ月以内ごとに1回実施し、作業場の有機溶剤の濃度を測定して、測定結果を3年間保存します。どちらも有機溶剤中毒予防規則に定められ、違反すると懲役や罰金などの罰則もありますので、確実に実施しましょう。

図1 塗装ブースの法定点検


労働基準監督署の調査の結果、法令違反があった場合は是正勧告書が交付され、期日までに違反事項を解消するよう求められます。是正勧告書は事業者の自主的な改善を促すものですが、違反状態を放置していると刑事事件として書類送検や起訴されることもあります。また、違反していなくとも改善が必要な場合には指導票が交付されます。

是正勧告等とは別に、設備の不備などで労働者に急迫した危険があると判断された場合、労働安全衛生法98条、99条に従って使用停止等命令書が交付されます。この場合は危険な設備の使用をただちに停止しないといけません。違反が是正されたと認められて使用停止命令が解除されるまでは設備が使えませんので、操業に大きな影響が出ます。

これらの違反は労働基準監督署の立ち入り調査で発覚することがあります。労働基準関係法令の違反は社名や住所・違反内容が公表されますので、企業イメージを大きく損なってしまいます。罰則よりこちらのダメージの方が大きいと言えるでしょう。

乾式ブースの場合

乾式ブースの場合、気を付けなければいけないのは火災です。乾式ブースでは自然発火する塗料を使ってはいけません。また、自然発火しない塗料でも引火する可能性はあり、フィルタやその他の場所に塗料カスが堆積すると火災が発生するおそれがあります。実際に静電気や古い部品が原因で発生した火花が塗料カスとホコリのかたまりに引火して火災が発生した事例があります。


湿式ブースの場合

湿式ブースで注意すべきことは水の管理です。水槽に沈殿した塗料をそのままにしておくと悪臭が発生します。塗料にはバクテリアの餌になる樹脂が含まれていますから、水の中でバクテリアが増加して硫化水素を発生させ、「卵の腐ったような」と表現されるひどい悪臭を放ちます。これは溶剤系塗料でも水性塗料でも同じです。この悪臭は作業環境を悪化させるだけでなく、近隣トラブルの原因にもなります。

悪臭が発生しているような状況では、多くの場合水槽の水が酸性になっています。酸性の水は金属でできたブース本体を腐食させ、放置しているとブースに穴が開き、水漏れが発生します。

例えば、アネスト岩田の湿式ブースVB-30F(間口3,000㎜)の水槽の標準水量は1,260ℓもあります。水が漏れれば床を濡らすだけでなく、作業場の外へ流出する危険性が高くなります。その場合は土壌や河川を汚染し、汚染事故として企業イメージを損なう可能性がありますので、悪臭や腐食を軽視せず、きちんとメンテナンスすることをおすすめします。

その他の注意点

乾式ブースも湿式ブースも、塗料ミストを捕集することはできても、臭いを取ることは出来ません。運転中は排気ダクトを通じて臭いの成分が外へ排出されているため、作業場ではそれほどひどい臭いに感じないことがありますが、排気ダクトから出る臭気で近隣トラブルになる事があります。これはメンテナンス不足が原因ではありませんが、見落としがちなので注意しておきましょう。

その他、塗装ブースの排気能力が落ちていると、滞留した塗料ミストが被塗物に再び付着し塗装不良の原因になります。また、塗装ブースはモーターやファンを備えた装置ですので、メンテナンスを怠ると異音が発生したり消費電力が増加したりするだけでなく、故障の原因にもなります。故障した場合すぐに修理できるとは限りませんので、その間は生産が停止してしまいかねません。日々の清掃と定期的な点検整備を実施し、突発的な故障のリスクを下げておきましょう。

塗装ブースの異常のサインとメンテナンス

塗装ブースを使っているうちに異常に気が付いたら、出来るだけ早く対策をしましょう。不具合をそのままにしていると、中毒などの事故や故障の発生など、損害を大きくしてしまいます。

塗装ブースの異常のサイン

異音

塗装ブースのトラブルで良くあるのは異音です。異音がひどいと作業環境が悪化し、近隣トラブルの原因にもなります。ファンやモーターのベアリングの摩耗が原因の場合は修理が必要です。また、ベアリングではなく、ファンに塗料カスなどが付着して、バランスが崩れて異音が発生していることもあります。こちらは塗料カスを除去することで解消できますので、定期的に清掃して塗料カスの堆積を予防しましょう。但し、中途半端に塗料カスを落とすとこれもまたファンのバランスを崩す原因になります。清掃する時は全体を丁寧に掃除しましょう。

風速の低下(塗料ミストの滞留)

乾式ブースのフィルタが詰まっていると風速が低下します。マノメータ(フィルタ差圧計)を設置しておくとフィルタの目詰まり状況を把握しやすくなりますので、お勧めです。湿式ブースの場合は水位が高過ぎると風速が低下しますので、メーカー推奨の水位を保つようにしましょう。アネスト岩田では、水位を一定に管理する自動給水装置のご提案も可能です。また、排気ダクトの防鳥網がホコリ等で詰まっていると、これもまた風速低下の原因になります。

腐食(湿式ブース)

前述した通り湿式ブースの水槽の水が酸性に傾いていると、金属でできたパネルを腐食します。塗料がこびりついていて腐食が見えなかったりすると、知らない間にどんどん進行してしまいますので、水槽の中はきれいに保つようにしましょう。

塗装ブースを長く使うために

乾式ブース、湿式ブースどちらも定期的なメンテナンスを行なうことで良い状態で長く使い続けることができます。法で定められた点検はもちろんのこと、日々の清掃やメンテナンスを着実に実施することが大切です。

湿式ブースの水槽の水のpH値は1日1回は測定して、水質をややアルカリ性(pH9~10)に保っておくと、悪臭と腐食双方のリスクを抑えることができます。水槽に溜まった塗料スラッジの粘性が高く回収が難しい場合、処理剤を使用すると回収しやすくなります。また、スラッジ除去作業の負荷が高い場合は、自動でスラッジの回収ができる機器もありますので、検討してみて下さい。


まとめ

4回にわたって設備や機器のメンテナンスについてお話ししてきました。突発的な生産の停止による機会損失は、時に経営を傾けるほど大きな額になります。定期的な予防保全を実施することで、思わぬ損失が発生するリスクを低減するとともに、トータルで見た時のメンテナンスコストも低く抑えることができます。

コンプレッサや塗装ブースのように工場を裏から支える設備は普段は忘れられてしまいがちですが、停まると影響が大きいのも事実です。日々のメンテナンスは今日からでも実施できますので、是非お使いの設備の取扱説明書をチェックしてみてください。