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定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!① ~予防保全とは?~ 2025年1月10日

どちらが経済的でしょう?

日々稼働している工場の設備は、メンテナンスによって支えられています。設備保全は一見地味な業務にも思えますが、最先端の設備であっても、状態が万全でなければ本来の能力を発揮することは出来ません。今回は工場を支える設備のメンテナンスについて、3回シリーズで解説します。

事後保全・予防保全・予知保全の違いとは?

設備の保全にはよく知られている3つの手法があります。1つずつ解説します。

事後保全

最もシンプルなメンテナンス方法がこの事後保全で、設備が故障した後に対策する手法です。リソースが節約できるため、照明などの交換が容易な設備に適していますが、故障が発生した箇所以外にも負担がかかるため、一度の修理費用が大きくなり、機械全体の寿命を縮める原因にもなります。

自動車のタイヤに例えてみましょう。この場合、タイヤがすり減って、車がスリップするなどの不具合が出てきたらメンテナンスするのが事後保全にあたります。無駄が無いようにも思えますが、タイヤがすり減ったまま走っていると燃費や乗り心地が悪くなってしまいますし、さらにすり減ったまま放置すると道路交通法違反の状態になり、タイヤの破裂などの事故の発生にも繋がります。


小さな不具合を見過ごすと大きな損害を発生させてしまう恐れがあるのが、事後保全のリスクです。タイヤの場合は交換してしまえば良いのですが、大きな設備になるとすぐにメンテナンスして使えるようになるとも限りません。修理する人員の手配、部品の手配などに時間がかかり、長期間の生産停止を招く可能性もあります。

予防保全

予防保全は設備メンテナンスの手法として広く採用されています。これは設備や機械の故障を未然に防ぐために、定期的なメンテナンスを行う方法です。工場の休日などに合わせて行うことが可能で、「毎年1回」「運転時間〇時間ごと」などの基準を設けて行います。その他に、状態の悪化や故障の早期発見をきっかけにメンテナンスするのも予防保全と言えます。

自動車のタイヤに例えると、1ヶ月に1回、スケジュールを決めてタイヤの溝の深さをはかったり、スリップは起きていないけれど少しすり減ってきたと思った時点で交換したりするのは予防保全に当たります。このくらいなら皆さんは実施されているかもしれませんね。

予防保全のコストは一見高いように見えますが、実際には経済的です。まとめてメンテナンスする事後保全に比べると、修理箇所が小さい範囲で済み、1回ごとの費用が安くなる傾向があるからです。設備を長く使えるという点も経済的です。そして設備を良い状態で使えるということは、設備自体にかかる費用を低減させるだけでなく、生産ラインの効率的な稼働にも繋がります。

メンテナンスのスケジュールを決めておくメリットは、予算をあらかじめ確保できる点にもあります。メンテナンスしたいけれど予算が無いため来年まで待つ、故障してしまったため予定していなかった出費をして修理をするといった事態になれば、余計な費用がかかってしまいます。

設備にはそれぞれのメーカーが推奨するメンテナンスのサイクルがあり、サイクルに沿って実施すれば多くのメリットがあります。予防保全の費用をコストではなく投資と考えてみてはいかがでしょうか。

予知保全

最後にご紹介するのが最新のメンテナンス方法である予知保全です。予兆保全とも呼ばれています。予知保全は、IoTデバイスやセンサーを活用して設備の状態を常時監視し、不具合の兆候を察知して事前にメンテナンスを行う手法です。

具体的には、温度や振動、音などのデータをリアルタイムで収集・分析し、異常の兆候を検知します。これにより、突然の故障を未然に防ぐことができます。メンテナンスにかかる工数を適正化することができますが、初期費用が高めである点がデメリットです。


予防保全と予知保全は似ている点もありますが、下記の点が違います。

点検時期の違い

予防保全:あらかじめ決まったサイクルで点検を実施
予知保全:センサー等を使って常に状態を監視

メンテナンス実施時期の違い

予防保全:特に不具合がなくとも、時間の経過や運転時間の蓄積でメンテナンスを実施
予知保全:故障の兆候が出たらメンテナンスを実施

自動車のタイヤにも予知保全の技術があります。タイヤの空気圧センサーは既に良く知られていますが、タイヤの空気圧や温度だけでなく、路面と接した時のひずみを測定することで、摩耗状態まで推定する技術が登場しています。ドライバーがタイヤの状態をリアルタイムに把握できるだけでなく、遠隔でのモニタリングが容易になり、自動運転車の普及にもつながると期待されています。

タイヤの例でもわかるように、遠隔操作や集中コントロールを可能にする点も予知保全のメリットです。今は予防保全が主流ですが、今後は技術の進歩に従い、予知保全がどんどん広がっていくことでしょう。

コラム インフラの長寿命化計画

工場設備とは規模が違いますが、国や自治体がインフラの予防保全にシフトしています。橋梁やトンネルの他、個々の機械も対象とした取り組みで、2018年を起算点として30年後の2048年には維持管理・更新費が50%縮減する計画です。また、30年間の累計でも30%縮減できる推計になっています。

図1 将来の維持管理・更新費用の推計(2018年11月 国土交通省発表)

予防保全の推計でも2018年度より増えていますが、これは仕方のないことで、高度経済成長期に建設されたインフラが既に老朽化しており、今後は新規の建設よりも維持管理が主になる転換期に来ているからです。インフラ長寿命化計画を策定するきっかけは2012年に起きた笹子トンネルの天井板落下事故とされています。

最初は既に老朽化したインフラを集中的に修繕するため、コストが膨らんでしまいますが 、今まで事後保全で済ませてきたツケですので、今後は計画的なメンテナンスによりコストが低減される予定です。メンテナンスしないとこうなるという例とも言えます。

事後保全と予防保全のサイクルをイメージした図があります。橋梁などの維持計画で参照される図ですが、コンプレッサなどの個々の設備にも同じことが言えます。事後保全の赤いラインは、機能が低い状態で設備を使用し続けることになる上、1回ごとのメンテナンス費用もかさんでしまうことを示しています。

図2 事後保全と予防保全のサイクルイメージ

予防保全には費用の削減だけでなく、設備を良い状態で使えるというメリットがあることがわかりますね。

影響が大きい設備はどうしたら良い?

コンプレッサなどの工場を支える設備は、故障すると生産ラインが停止しかねません。生産が出来ないということは、時に経営にまで大きな影響を与えます。

こういった設備については、突然の故障による損失を考慮して予備の設備を用意しておく必要があります。また、予備の設備があったとしてもメンテナンス計画を立てておくことは重要です。予備の設備があれば、メインの設備を止めて修理している間も工場を稼働させることが出来ます。

生産停止のリスクを回避できることや、稼働率が向上することを考えれば、予備機と予防保全の費用は高くありません。また、予備機を普段から寝かせておくのではなく、メイン機と交替で稼働させて設備の寿命を延ばす手法もあります。

例として、アネスト岩田の一部スクリューコンプレッサとクローコンプレッサは、コンプレッサを停めない簡易診断で圧縮機本体とモーターのベアリングの振動を測定し、本体の状態がわかる診断システムの利用が可能です。稼働中にも診断が行なえる点は大きなメリットと言えるでしょう。※診断はサービスマンが行ないます。

まとめ

工場設備のメンテナンスには、事後保全、予防保全、予知保全の三つのアプローチがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、設備や状況によって適した手法を選択することになります。特にコンプレッサなど、停止すると影響の大きい設備は、予備機を用意して、予防保全の計画を立てておくことがおすすめです。

次回は工場を陰で支える重要なインフラ、コンプレッサのメンテナンスについてもう少し詳しくお話しします。