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定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!③ ~スプレーガンのメンテナンスと塗装不良~ 2025年3月14日

不良と手直しのロスは生産管理の大敵です。

メンテナンスについて解説するシリーズの第1回では予防保全や事後保全について、第2回ではコンプレッサのメンテナンスについてお話ししました。3回目の今回はスプレーガンのメンテナンスと塗装不良についてお話しします。

※当初3回で完結を予定していましたが、次回第4回で塗装ブースについてお話しします。

前回の記事 定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!② ~コンプレッサを長く使うために~
前々回の記事 定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!① ~予防保全とは?~

メンテナンスをしないとどうなる?

スプレーガンのメンテナンスを怠ると、塗装不良やスプレーガン自体の故障に直結します。また、塗装不良は生産現場のロスの中でも特に減らしておきたいロスです。詳しく見て行きましょう。

塗装不良と故障のリスク

スプレーガンの中の塗料経路は狭く、先端のノズルの部分の塗料の通り道は直径0.4㎜~2㎜程度です。内部で塗料や液剤が硬化すると詰まってしまいます。塗装作業をされている方なら、固まってしまった塗料を落とす作業の厄介さは良くご存知でしょう。

ひどく固まってしまった塗料を無理に落とすとスプレーガンを傷めてしまいますので、スプレーガンを使用した後には必ず洗浄しておきましょう。特に2液混合型の塗料は硬化剤投入後の可使時間(ポットライフ)が限られているため、使用後は素早く入念に洗浄する必要があります。また夏場などの温度が高い時も硬化が早くなるので注意が必要です。


日々の洗浄の他に、必要に応じて部品も交換しましょう。消耗や変形をした部品をそのまま使い続けていると、これもまた塗装不良や故障の原因になります。

塗装不良は見た目を悪くするだけでなく、塗膜の耐久性を下げ、被塗物の寿命を縮める原因になります。手直しするにしても塗膜を一旦除去して塗り直す必要があるため、大変な手間がかかります。スプレーガンのメンテナンスを適切に実施することは生産性向上に直結すると言っても良いでしょう。

あなどれない、塗装不良による損失

トヨタ生産方式では、製造現場で削減すべき「7つのムダ」、すなわち加工のムダ、在庫のムダ、不良や手直しのムダ、手待ちのムダ、作り過ぎのムダ、動作のムダ、運搬のムダを改善項目として掲げています。7つのムダの覚え方の「かざふてつどう」はご存知の方も多いのではないでしょうか。

この中で最も影響が大きいのが「ふ」の「不良や手直しのムダ」と言われています。不良品が発生すると発生箇所より前の工程をすべて見直す必要があり、稼働が停まり、手待ちや在庫のムダなど、他のムダも発生します。また、手直しして最終的に出荷できたとしても余分な材料費や加工費がかかり、直行率が低下してしまいます。

「直行率」は生産管理で使われる指標です。投入数に対して、修正や手直しなしに1回で良品になった完成品の割合を指します。これに対して、「歩留まり」は手直し後に良品になった完成品も含む数値です。近年、歩留まりよりも直行率を指標として採用する傾向があるのは、この手直しのムダを重視しているからです。

図1 歩留まりと直行率


例えば最終工程の検査の段階で塗装不良が発見されたとします。不良品を廃棄する場合はそれまでにかけたすべてのコスト(材料費・人件費・電気代等)がムダになってしまいます。手直しする場合は不良が発生した工程よりずっと前に遡って、塗膜を剥がして塗装し直しになります。塗料の材料費だけでなく、塗装工程の後半の、人件費をかけなければいけない部分の作業費用が再度発生します。

塗装業は他の業界に比べて、製品原価のうち人件費が占める割合が高いと言われています。不良品が発生すると被塗物や塗料などの材料費がムダになりますが、それよりも作業員の人件費のムダや、他の仕事ができない機会損失の方が深刻です。熟練の職人が製品をチェックする検査工程では、何の材料も使っていなくとも職人の貴重な時間が使われているのです。

工程が自動化されている場合でも、塗装不良の発生は深刻な影響をもたらします。計画外のライン停止によって塗装ロボットを動かせなくなった時の機会損失は莫大な額になります。

スプレーガンの不具合の兆候とメンテナンス

スプレーガンのメンテナンス不足はすぐに塗装不良などの症状になってあらわれます。小さな不具合でも作業への影響が大きいため、異常のサインを放置することはあまりないと思いますが、原因が分からないと不具合解消に時間がかかってしまいますので、代表的な症状と対策を知っておくと良いでしょう。

スプレーガンの不具合

スプレーガンのさまざまな症状と原因・対策については、アネスト岩田のFAQサイトにも掲載しています。

アネスト岩田 FAQサイト

パターン不良

パターンがきれいに広がらず、かたよったり、三日月形に変形したり、塗面に「スピット」と呼ばれる粗い粒子があらわれたりします。それぞれ考えられる原因がいくつかあり、洗浄や部品の交換を行なって対処します。

パターン不良の中にはメンテナンス不足によるゴミや傷が原因ではないものもあります。くびれや中高パターンなどは、塗料の粘度や噴出量、吹付圧力の多寡が原因ですので、調整して対処します。

エア漏れ、塗料漏れ、塗料詰まり、息切れ

先端部や接続部からエアや塗料が漏れたり、塗料が出なかったり、途切れたりする不具合が発生します。原因としてはゴミ・部品の傷や摩耗の他、部品の締め付け過ぎや締め付け不良でも発生します。

スプレーガンを長く使うために

スプレーガンを長く良い状態で使うためには、日々のメンテナンスが大切です。使い終わった後はすぐに洗浄しておきましょう。

洗浄を怠ると次の日すぐに使えませんので、手順を決めて確実に実施するのがお勧めです。毎日使って洗浄している場合でも、分解せずに洗浄液を通すだけでは落としきれない塗料が少しずつ堆積しますので、定期的に分解洗浄する時期も決めておきましょう。

その他、塗料ノズル・ニードル弁ASSY・ニードル弁パッキンセット・空気弁・空気弁棒などは消耗品です。摩耗したら交換しておきましょう。

図2 スプレーガンの消耗品(例:WIDER1)


コラム スプレーガンのメンテナンスでやってはいけないこととは?

本体や空気キャップを洗浄液に漬ける

塗料がこびりついてなかなか落ちないときなど、洗浄液に漬けたくなるかも知れませんが、これはNGです。塗料で汚れたスプレーガンを洗浄液の中に漬けると、溶けだした塗料が空気経路に侵入して付着し、空気の通り道が狭くなります。吹き出せる空気の量が減りますので、霧化状態が悪くなり、パターンが拡がらなくなり、最終的には詰まってしまいます。また、パッキン類は洗浄液に漬けると膨潤(シリコンなどが溶媒を吸収してふくらむこと)してしまいます。

洗浄液をしみこませたウエスでふき取るか、付属のブラシでこすって落とすようにしましょう。

金属製のブラシやタワシでこする

金属製のブラシを使うと、部品が摩耗してしまいます。スプレーガンには樹脂製の専用ブラシが付属していますので、そちらを使いましょう。

~職人は削った竹を使う~
クリア塗料などが空気孔にこびりついて落ちない場合、竹を削って楊枝を作り、シンナーに浸して穴の中をこする方法があります。同様に塗料ノズルに付いた汚れが落ちない場合は、竹をヘラの形に削ったもので擦ると落ちやすくなります。

モンキーレンチを使う

分解や組立の際に、モンキーレンチなどの滑りやすいスパナを使うと、部品が潰れてしてしまう、いわゆる「なめて」しまうトラブルが起こります。なめてしまうと部品同士のクリアランス(部品の間に確保すべき距離)が崩れてしまい、性能を発揮することができなくなってしまいます。専用スパナ(オプション品)やメガネレンチ、ソケットレンチを使うのがおすすめです。

図3 スプレーガンのメンテナンスに使う工具


まとめ

今回はスプレーガンのメンテナンスと、塗装不良の発生による損失についてお話ししました。塗装不良は、塗装工程に大きな生産ロスをもたらします。洗浄や部品交換などのメンテナンスを確実に実施して、出来るだけ不良の発生を予防しましょう。

スプレーガンを長く良い状態で使うためには日々のメンテナンスが大切です。丁寧に手入れをしていると愛着もわいてきますので、是非大切にして、長くお使い下さい。