定期整備を実施して機会ロスを抑えよう!② ~コンプレッサを長く使うために~ 2025年1月31日
見えないところで、ずっと働いています。
メンテナンスについて考えるシリーズの第1回では、事後保全・予防保全・予知保全の違いや、予防保全のメリットについて解説しました。2回目の今回は、工場を陰から支えるコンプレッサのメンテナンスについてお話しします。
コンプレッサは縁の下の力持ち
コンプレッサの稼働状況を車に例えると…?
工場設備の中でコンプレッサは「縁の下の力持ち」とも言われます。工場のラインが稼働している裏で圧縮空気を供給し続け、目立たない存在になっているからです。
工場のラインを支えるメインのコンプレッサは、工場が稼働している間運転し続けています。1日8時間、年間250日稼働していると仮定すると、年間の運転時間は2,000時間にも達します。これは平均時速40kmで走っている自動車で考えると、年間8万kmも走行している計算になります。食品工場や半導体関連の工場では、夜間・休日も稼働していることが珍しくありませんので、運転時間はさらに多くなることがあります。
車の寿命の目安が走行距離15万kmと言われていますので、コンプレッサにかかる負担がどれほどのものかお分かりいただけるでしょうか。車の場合でもきちんとメンテナンスをしてブッシュなどの樹脂製部品を交換していれば20万km、30万kmと乗り続けられるように、コンプレッサも定期整備をおこなって部品を交換していれば、良い状態で長く使い続けることが出来ます。
コンプレッサの異常のサインと原因
前回の記事でお話ししましたが、コンプレッサのように突然故障すると困る設備では、予備機を用意した上で予防保全を心掛けることが大切です。予防保全の中には定期的な点検整備のほか、軽微な異常が出た時点ですぐにメンテナンスを行なう早期対応も含まれます。コンプレッサの異常のサインにはどんなものがあるか、見ていきましょう。
中にはかなり要注意の症状もありますが、異常に気が付いた時点ですぐに対処すれば比較的小規模のメンテナンスで済む可能性が高くなりますし、突然のライン停止で大きな損害を出すことは避けられます。
こんな症状が出ていたら注意!
異音や異常な振動がする
コンプレッサの運転音は運転方式によって違いますが、普段と違う音や振動がし始めた時は要注意です。ベアリングなどの内部の部品が摩耗して、摩擦を起こしている可能性があります。また、ちょっとした部品の緩みでも、ビビり音などの大きな騒音や振動が発生することもあります。
異常な騒音や振動が発生しているということは、通常ではあり得ない負荷が機械にかかっているということです。「うるさいだけでまだ動くから」と放置していると、異音や振動の原因になっている部品が破損するだけでなく、他の部品にも振動が伝わって、故障箇所が拡がってしまいます。
吐出温度が高い
コンプレッサの吐出温度が高くなっている場合、エアドライヤ付きのコンプレッサであれば、ドライヤが正常に働いていない可能性があります。コンプレッサ用のエアドライヤの多くは圧縮空気を冷却してドレンを除去する冷凍式ドライヤです。ドライヤの冷媒が漏れて冷媒が足りなくなっていたり、その他の異常が発生したりしている可能性があります。また、吸い込みフィルタの目詰まりが起きていると、吐出温度が高くなることがあります。フィルタの点検と清掃は定期的に実施しましょう。
スクリューコンプレッサやクローコンプレッサなど一部のコンプレッサでは、温度センサーがついていますので、異常があれば報せてくれます。
圧縮機本体の温度が高い
圧縮機本体の温度が高くなる原因としては、コンプレッサ周囲の温度が高すぎたり、換気が不十分だったりする場合が多いのですが、圧力開閉器式のコンプレッサの負荷が高すぎるような場合も、休みなく運転し続けた本体が過熱してしまうことがあります。
前述のスクリューコンプレッサ、クローコンプレッサに加え、スクロールコンプレッサにも温度センサーが付いていますので、外見では分からない内部の温度異常を報せてくれます。
オイルが漏れる、オイルの減りが早い
給油式コンプレッサのオイルの減りが早い場合、どこかでオイルが漏れていることがあります。オイル漏れの原因として考えられるのは、樹脂部品が摩耗してシールの役目を果たさなくなっていることです。
コンプレッサオイルはコンプレッサ本体の潤滑や冷却などの大切な役割を担っていますので、不足すると本体の故障や加熱の原因になります。コンプレッサオイルは気化して圧縮空気と一緒に少しずつ吐き出されて行きますので、異常がなくとも使っていれば必ず減っていきます。オイル不足を放っておくと重大な故障に繋がりますので、毎日オイルレベルをチェックするようにしましょう。
圧縮空気に水が混ざる
圧縮空気に水が混ざるようになったら、ドライヤの性能が落ちている可能性があります。また、ドレンが適切に排出されていない場合も、水が混ざる原因になります。タンクなどに水が溜まっていないか、ドレンの排出装置がある場合はドレンが適切に排出されているかを確認しましょう。
稼働状況が変わらないのに消費電力が増えた
コンプレッサの内部や継ぎ手、または配管からエア漏れしている可能性があります。配管のエア漏れは100%防ぐことは出来ませんので、ある程度の漏れが生じるのは仕方のないことですが、稼働状況が変わっていないのに消費電力が増えたら注意が必要です。
その他に、レシプロコンプレッサやシングルスクリューコンプレッサなどで、コンプレッサ本体に樹脂のピストンやローターが使われている場合、樹脂部品が摩耗するとそこから圧縮空気が漏れ、圧縮の効率が悪くなります。配管のエア漏れのように外側から検知できませんので、樹脂部品は定期的に交換することが必要です。また、樹脂部品のような消耗品ではありませんが、金属の部品も摩耗します。ツインスクリューコンプレッサなどは、摩耗して隙間が空いてしまった二つのローターの間を狭くする調整をしたりします。
それ以外の原因としては、吸い込みフィルタの目詰まりが原因で空気を吸い込めなくなり、効率が落ちていることもあります。吸い込みフィルタ全体にほこりが付いているような状態だと、吐出空気量が約4%落ちると言われています。
故障とまでは言えない不具合でも、効率の悪いまま放っておくとコンプレッサに余計な負荷がかかり、部品の寿命を縮める原因になります。
圧力が上がらない、圧力が上がるのに時間がかかる
コンプレッサの圧力がなかなか上がらない場合も、内部の部品の摩耗や吸い込みフィルタの目詰まりが起きている可能性があります。点検して清掃や交換を実施しましょう。その他に、エア漏れが原因の場合やベルトのスリップ、逆止弁などの部品が壊れている場合があります。また、圧力スイッチが壊れていると、必要圧力に到達する前に圧力スイッチが作動してしまうため、結果的に圧力が上がらなくなります(逆に圧力が上がり過ぎて安全弁が吹く事もあります)。
コラム どこからエア漏れしている?
先程は「コンプレッサの内部や配管からエア漏れしている可能性がある」とお話ししましたが、異常のある箇所がコンプレッサの内部なのかどうかを簡易的に見分ける方法があります。
コンプレッサの吐出口バルブを閉じて運転してみて、充填時間が許容範囲内であれば、異常のある箇所は空気タンクより先になります。逆に充填時間が許容範囲を超えてしまっている場合、コンプレッサに問題があります。
メンテナンスしないとどうなる?
メンテナンスをせずに放置していると、コンプレッサは本来の能力を発揮できません。パッキンなどの消耗部品を交換しないでいると、やがて摩耗し、オイルや空気を封じる役目を果たさなくなります。エア漏れや、エアを封じ込めているオイルの漏れが生じるとコンプレッサの効率が落ち、余分な電力を使ってしまいます。
また、一つの不具合を放っておくと連鎖して次の不具合が起きてしまいます。樹脂部品のパッキンやシールは空気やオイルを封じ込める役割の他、コンプレッサが摺動する箇所の部品を守る役目をしています。樹脂部品が摩耗したまま放置していると今度は金属部品同士がこすれ合って摩耗する「かじり(焼き付き)」が生じ、消耗品ではない部品までダメになってしまいます。
コンプレッサの不調の症状や原因は様々で一括りにできませんが、軽微な不具合を放置していると大きな故障の原因になりますので、様子がおかしいと思ったら早期に対応することをおすすめします。
コンプレッサを長く使うために
コンプレッサをなるべく長く使うためには、どうしたら良いでしょうか?
設置環境の確認
コンプレッサに余分な負荷をかけないためには、まずは設置環境に配慮しましょう。詳しくはお持ちの機種の取扱説明書をご確認いただくとして、下記はコンプレッサを設置する上で必須の条件です。
- 室内で湿気の無い場所
- 近くに発火性・引火性ガスや可燃物の無い場所
- 周囲温度が2℃から40℃(機種によっては45℃)
- 腐食性ガスや直射日光の当たらない場所
- ごみや埃の少ない場所
また、下記もコンプレッサの能力を発揮するために必要な条件です。
- 水平で基礎がしっかりしている場所
- 壁や周囲の機械と一定の距離が取れている
日常と定期のメンテナンス
設置場所に問題がなければ、次に行なうことは日常点検と定期点検整備を確実に実施することです。
毎日の点検項目としてあげられるのは、異常音や異常振動が無いかの確認と、ドレンの排出です。給油式の場合はオイルレベルのチェックも毎日おこないます。吸い込みフィルタも月に1度はエアブロー等で掃除し、年に1度は交換するようにします。その他にも安全弁やベルトの確認など、取扱説明書にチェックすべき項目と間隔が記載してあります。
ドライヤ付きのコンプレッサの場合はドライヤの点検項目も記載されていますので、記載に従って点検を行なうようにしましょう。
定期点検項目についてもそれぞれの説明書に定められています。指定の運転時間または期間のうち、早く到達した基準で点検を行ないます。例えば2年または5,000時間ごと、と定められている点検項目は、2年経たないうちに運転時間が5,000時間に達した時は運転時間を基準にして点検整備をおこないます。交換が必要な部品がすぐに入手できない場合もありますので、日程には調整の余裕を持っておくことをおすすめします。
コラム そのコンプレッサは使い道にあっていますか?
コンプレッサにはそれぞれの運転方式や出力に合う使い方があります。例えば運転制御方式が圧力開閉器式のコンプレッサは、80%を超えるような高負荷の状態での連続運転使い続けるのに適していませんので、無理をすると部品の消耗が早くなります。コンプレッサを増設して負荷に余裕を持たせるか、更新の機会にロード・アンロード制御式などの高負荷の連続運転に適している機種に変更するかを検討すると良いでしょう。
逆に負荷が低すぎる場合はどうでしょうか?ロード・アンロード制御式のコンプレッサのように、連続運転に適したコンプレッサを低負荷の状態で使うと、電気代の無駄が大きくなります。
また、圧力開閉器式のコンプレッサの場合でも、運転間隔が長すぎる場合には注意が必要です。給油式のレシプロコンプレッサで30分に1回しか運転しないような使い方、つまり間欠運転をしていると、冷やされた水分が結露してオイルに混ざり、オイルが白濁してしまう「乳化」が起こりやすくなります。乳化は寒冷地でも起こりやすい現象です。乳化したオイルは潤滑や密封・冷却の性能が落ちる上に、混入した水分の影響で金属部品が錆びる原因になりますので、オイルが乳化してしまった場合は全量を交換した上で洗浄し、中間水分離機を取り付けるなどの対策が必要です。
まとめ
コンプレッサが稼働し続ける中で部品は消耗していき、周囲の空気を吸って吐いてを繰り返す中で汚れも溜まっていきます。コンプレッサのメンテナンスは必須のものですので、消耗がひどくならないうちにメンテナンスが間に合うよう、定期的なサイクルを構築することが、コンプレッサを良い状態で長く使い続けるポイントです。