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電気の知識① ~周波数が違う機械を使うとどうなる?~2022年5月27日

電流は、水の流れにたとえられます。

私たちの身の回りは電気で動くものであふれています。工場設備も例外ではありませんが、家庭用の機器とは電圧も消費電力も異なっています。電気工事には専門の資格が必要になりますし、装置の選定や普段の取り扱いでも電気の知識は必要です。

この記事では電気の基礎や安全知識について、シリーズで解説する予定です。第一回目の今回は、電流や電圧・周波数など、電気製品を扱う上で必須の基礎知識についてご説明します。

電気の流れ方

電気は水に例えるとわかりやすい

電気は目に見えず、イメージがつかみにくいものですが、電気回路を水の流れる水路に例えると分かりやすいと言われます。

 

電流

電流(A:アンペア)は電気の流れる量、水路を流れる水の量に相当します。

電圧

電圧(V:ボルト)は電気を押し流す力、水圧に相当します。水を高いところから落とすと勢いが強くなるように、電圧の高さは水位の高さに例えられます。

抵抗

抵抗(Ω:オーム)は電気の流れにくさ、水流の邪魔をする水の中の岩や水車に相当します。

電力

電力(W:ワット)は水車を動かす力に相当します。

直流と交流

電気の流れ方には直流と交流の二種類があります。直流は電流の向きと電圧が一定の流れ方です。乾電池などが電源の回路は直流回路です。

交流は、電流の向きと電圧が一定の周期で変化し、プラスとマイナスが入れ替わる流れ方です。発電所で作られて電線を通って運ばれてくる電流は交流電流で、家庭用のコンセントも交流電源です。

 

導体と絶縁体、半導体

物質には電気を通しやすいものと通しにくいものがあります。導体は電気を通しやすい、つまり抵抗値が低い物質で、鉄や銅などの金属は導体です。絶縁体は電気を通しにくい、つまり抵抗値が高い物質のことで、ガラスやゴムなどは絶縁体です。

電気の通しやすさは物質の中を自由に動き回る電子の多さで決まります。導体は自由電子が多く、絶縁体は自由電子が少ない物質です。

導体と絶縁体双方の性質を持つのが半導体で、代表的なものはシリコンです。シリコンはもともとあまり電気を通しませんが、熱を加えたり不純物を添加したりすることで電気を流しやすくなります。この性質を利用して産業の様々な分野で利用されています。

さまざまな電圧

家庭の電圧と工場の電圧

電力会社から供給される電力の契約は、下記のように電圧によって分かれています。

  • 特別高圧:直流・交流ともに7,000Vを超える電圧。大規模な工場、ビルなどで使われる。
  • 高圧:直流で750~7,000V以下、交流で600~7,000V以下の電圧。
  • 低圧:直流で750V以下、交流で600V以下の電圧。一般家庭や事務所向け。

なぜ電圧が異なるのでしょうか。それには、発電所で作った電気が電線を通る間に発生する電力損失、すなわち送電ロスが関係しています。電力損失は高校物理のジュールの法則から求めることが出来ます。電圧が一定の場合、抵抗のある電線に電流を流して発生する発熱量(J:ジュール)は下記のようになります。

  • 発熱量(J)=電流(A)2×抵抗(Ω)×時間(s)

上記の式から、発熱量は電流の2乗に比例することが分かります。そしてこの発熱量が電力損失になります。使ったあとの電気機器が熱くなっていたことがありませんか?あれは電気機器の抵抗によって熱が生み出され、その分の電力が失われてしまっているのです。

さて、流れる電流が大きくなるほど電力損失が生じてしまうことが分かりましたが、小さな電流でも同じ電力を得られる方法があります。中学校で習う電力の公式を思い出してみましょう。

  • 電力(W)=電流(A)×電圧(V)

電流が小さくとも、電流を流す力(電圧)を大きくすれば同じ電力が得られます。5,000Wの電力を電源から使う場所まで送り届ける場合、50A×100Vではなく、5A×1,000Vで送電した方が、はるかに電力損失が少なくなりますね。電力損失すなわち送電ロスを減らす為に、発電所から送られる電気は非常に高い電圧で送り出され、途中の変電所などで届け先の電力使用量にあった電圧に下げられます。

一般家庭では電気使用量が少ないため低圧電力が使われますが、工場などでは一般家庭と比べて電気を使った仕事量(W)が格段に多くなります。そのため、高電圧で多くの電流を流しやすくしているのです。これらの設備は感電の危険性が高く、その敷地内に電気主任技術者を置くことが義務付けられています。

電圧は国によっても違う

電圧は国によっても異なります。一般家庭の場合日本では100V、アメリカは120V、ヨーロッパや中国は220~240Vと様々です。

日本が家庭用電源に採用している100Vは、世界でも珍しい低い電圧になります。100Vを採用した理由は、当時普及していた照明機器が100Vだったことなど、歴史的な経緯があるようですが、現代も低いまま維持しているのは、主に安全面を重視しているからと言われています。湿度の高い日本では感電事故が起こりやすい環境にありますが、万一感電した際にも電圧が低い方が衝撃が小さくてすむからです。また木造家屋が多く電気火災が発生しやすいことも、低電圧を採用し続けている理由になるようです。

東と西で異なる周波数

東日本と西日本で周波数が違うのは何故?

交流回路では、電圧や電流の向きが周期的に変化しているとご説明しました。周波数(Hz)とは、電気の流れる方向が1秒間のうちに変化する回数を表しています。日本の周波数には50Hzと60Hzの2種類があります。

 

周波数は基本的に一つの国のなかで統一されていますが、日本は東日本と西日本で異なる周波数が用いられています。これは日本に発電機が導入されたときの経緯が関係しています。

日本では1890年代の明治時代に発電機が導入されました。当時、東日本では東京電灯会社、西日本では大阪電灯会社がそれぞれ別の国から発電機を購入しました。そのためドイツから発電機を購入した東京電灯会社の発電機にはドイツの周波数に合わせた50Hzが用いられ、アメリカから購入した大阪電灯会社ではアメリカに合わせて60Hzが用いられたのです。そのため日本では同一の県でも地域によっては周波数が異なることがあります。

50Hz地域で60Hzの機器は使える?

周波数が違うと、使用する電化製品によっては正常に動作しなかったり故障したりする場合があります。使用できるかどうかは、モーターを利用するかどうかで見分けられます。

50Hzの洗濯機やステレオなどでモーターを利用する製品は60Hz地域で基本的に使用できません。また掃除機・ミキサー・扇風機・冷蔵庫などは使用できる場合もありますが、消費電力などに違いがでます。

コンプレッサや塗装ブースを周波数の違う地域に持ち込んだ場合はどうなるでしょうか?

  • 50Hz機を60Hz地域に持ち込んだ場合・・・使用不可
  • 60Hz機を50Hz地域に持ち込んだ場合・・・使用可能(但し約80%の性能になる)

以上のように使用する電化製品によっては周波数の違いによって不都合が生じます。工場間移設などで西日本から東日本へ移設する際などには注意が必要でしょう。

ちなみに、コンプレッサの場合はモータープーリーとVベルトを変更して周波数の違いに対応することが出来ます。

まとめ

いかがでしょうか。製造業の現場では多くの電気機器が使われています。あらたに設備を導入したり、移設したりする際には周波数なども確認しておきましょう。次回は電線を守る安全装置、ブレーカーについてお話する予定です。