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工場の騒音と振動② ~工場の騒音とコンプレッサ~ 2024年12月6日

工場の騒音苦情

工場を稼働させている側として気になるのは近隣からの苦情と言われます。では、工場にはどのくらいの苦情が寄せられているのでしょうか?また、工場の中でも特に苦情が多い設備はどれでしょうか?環境省が全国の地方自治体に寄せられた騒音と振動の苦情を毎年集計していますので、詳しく見てみましょう。

工場にはどのくらいの騒音苦情が寄せられている?

最新の調査では、令和4年度中に全国の地方自治体に寄せられた20,436件の騒音苦情のうち、建設作業が全体の37.9%を占め、最多になっています。次いで工場・事業場が25.6%で2位になっており、建設作業と工場等で全体の63.5%を占めています。その他の36.5%の内訳は家庭生活・自動車、航空機、鉄道、深夜営業などですが、いずれも全体の10%に満たない件数です。

図1 騒音苦情の内訳

実は、過去には工場・事業場騒音は建設作業騒音を抜いて長年の間1位でした。1968年に施行された騒音規制法の主な規制対象は、当時騒音苦情の6割を占めていた工場からの騒音でした。当時は建設作業より工場からの騒音の方がずっと大きな問題だったのです。

騒音規制法制定直後の1970年代前半には工場・事業場の騒音苦情は全体の60%を占めていましたが、その後1980年頃には工場騒音は全体の40%程度にまで減少し、現在では30%程度にまで抑えられています。とは言え、全体の1/4強が工場・事業場に対する苦情であり、依然として主要な騒音苦情の対象です。

工場騒音の発生源はどの設備?

工場の中には多種多様な装置が置かれ、日々稼働していますが、大きな騒音を発生させているのはどの機械でしょうか?こちらも環境省が調査を実施しています。すべての工場・事業場ではなく、特定施設を持った特定工場についての調査ですが、およその設備の内訳がわかります。特定施設や特定工場については後程詳しくご説明します。

令和4年に全国の自治体に寄せられた特定施設の騒音苦情605件のうち、空気圧縮機等が38.8%を占め、1位になっています。2位は金属加工機械等で、こちらは37.2%です。その次には木材加工機や土石用破砕機等が続きますが、いずれも10%以下で、空気圧縮機と金属加工機械で全体の76.0%を占めています。

図2 工場・事業場騒音の施設別内訳

特定施設とは?

前回の記事でも少し触れましたが、「特定施設」と「特定工場・事業場」について、あらためてご説明します。

騒音規制法の「特定施設」とは金属加工機械やモーターの出力数が7.5kW以上のコンプレッサなど、特に大きな騒音を発生させる機械のことです。騒音規制法では下記の11種類が「特定施設」として指定されています。

図3 騒音規制法の定める特定設備

そして、「特定施設」を設置している工場や事業場が「特定工場・事業場」になります。「特定工場・事業場」はまとめて「特定工場等」と呼ばれます。騒音規制法では、都道府県知事等が指定した地域内にある「特定工場等」が規制の対象になります。指定地域内にある特定工場は、敷地の境界での騒音を定められた基準値内に抑えなければなりません。

図4 特定工場等の規制の枠組み

上記は騒音規制法の例になります。振動規制法では「特定施設」が10種類になるなど、少し違いがありますが、規制の仕組みはほぼ同じです。

振動に関する苦情

振動に関する苦情は騒音に比べるとずっと少ないのですが、環境省が同じように毎年調査を実施していますので、ここでご紹介しておきます。

令和4年度の全国の自治体に寄せられた振動苦情は4,449件、そのうち建設作業で全体の71.4%を占めて1位、工場・事業場騒音はそれに次いで14.7%を占め、ここでも2位になっています。住民が体に響くような振動を感じるケースを想定すると、建設作業が苦情の圧倒的多数を占めるのも分かりますね。

図5 振動苦情の発生状況

コンプレッサはどんどん静かになっている!

工場騒音の中でも1位を占めてしまっているコンプレッサですが、近年はどんどん静かになっています。

レシプロコンプレッサ

昔からあるコンプレッサはレシプロ式が主流でした。手軽に高い圧力を得られるため、現在でも広く使用されていますが、ピストンが往復し、弁が開閉するため、「ドドドド」と表現されるような大きな音がするのが欠点です。コンプレッサ本体を箱型に納めたパッケージ式のコンプレッサは比較的静かになります。

スクリューコンプレッサ

スクリュー式やスクロール式などの回転式のコンプレッサは、レシプロコンプレッサのような断続音がしないため、運転音を不快に感じにくい特徴があります。スクリュー式のコンプレッサは大容量の圧縮空気を得られるため、現在は工場設備の主流です。

近年ではスクリューコンプレッサの一部を特定施設の規制対象から外す見直しが行われています。令和4年施行の騒音規制法施行令と振動規制法施行令の改正で、環境大臣が指定する施設を規制の対象外とする例外規定が設けられました。静かなコンプレッサとして型式指定を受けたものは、7.5kW以上のコンプレッサであっても騒音規制法と振動規制法の規制対象外になっています。

スクロールコンプレッサ

スクロールコンプレッサはスクリューコンプレッサに比べると大容量向きではありませんが、さらに静かなことが特徴です。静音性に特化した機種では2.2kWで44dB、静かなエアコンくらいの水準です(例:アネスト岩田 SLP-22EFPD)。

また、一つのパッケージの中に複数台の圧縮機本体とモーターを搭載し、吐出空気量の面でスクリューコンプレッサに劣る点をカバーしたモデルもあります。

コラム 世界一静かなコンプレッサ

先程ご紹介した「静かなエアコンと同じ騒音レベルのコンプレッサ」は、実はこのクラスでは世界一静かなコンプレッサで、オフィススペースや研究室内の使用にも適しています。

もともとスクロールコンプレッサはピストンのように摩擦を発生させる部品が少なく、非常に静かなコンプレッサですが、さらなる静かさを追い求めた結果、騒音値を従来の1.5kW機から-4dB、2.2kW機では-5dB低減でき、さらに振動も20%低減することに成功しました。開発担当者は1日中コンプレッサの横でデスクワークする試験を実施して、そばで作業しても気にならないことを確認したそうです。

※オイルフリータイプの2.2kWクラスとして(2020年8月時点 アネスト岩田調べ)

規制対象にならないから大丈夫?

実は特定工場以外の苦情の方が多い

さて、騒音規制法や振動規制法に定められた「特定工場等」と言われても、あまり身近に感じない方もいらしたのではないでしょうか?その通り、「特定工場等」は一定以上の設備を備えた大きな工場で、多くの工場はこの規制に当てはまりません。

とは言え、規制対象ではないからと言って騒音・振動対策をしなくて良いわけではありません。騒音規制法や振動規制法の規制対象ではない工場にも苦情は寄せられています。むしろこちらの方がずっと多いのです。

1970年代以降、騒音苦情全体に占める工場・事業場騒音の割合は劇的に減少しましたが、主に「特定工場等」に対する苦情が減ったのが原因です。特定工場等にあてはまらない小規模の工場・事業場に対する苦情件数は、実はそれほど減っていません。令和4年の数字では特定工場等の苦情件数は全国で605件でしたが、特定工場以外の工場・事業場に寄せられた苦情は実にその7.6倍。4,631件の苦情が発生しています。

特定施設以外に騒音を発生させる設備

当然ながら、特定施設に該当しない機械も、それなりの騒音を発生させます。特定施設の条件に当てはまらない小さなコンプレッサや、コンプレッサ以外の設備も苦情の原因になる事があります。

コンプレッサ以外の空圧機器、例えば空気駆動式の増圧機器は排気音がしますし、塗装ブースのファンの音も、排気量が大きくなるほど大きくなります。塗装工程のスプレー音も大きく、無視できません。

特定工場以外の工場や事業場は住宅に近いところに存在することが多く、敷地もさほど広く取れないため、騒音を発生する設備を敷地の境界から離すといった対策が取りにくいことも苦情が増える原因になっていると考えられます。

すぐ近くに住宅があって、コンプレッサや加工機の設置場所を敷地の境界から離すにしても限界がある…。なんだかずっと身近なイメージになったのではないでしょうか。また、人によって感じ方が違うという点も、騒音・振動問題の難しい点になっています。

まとめ

今回は騒音と振動に関する苦情と、コンプレッサの騒音についてお話ししました。騒音を発生させる機械の改良が進み、静かになってきた一方で、特定工場以外の工場への苦情はなかなか減らないという現状が見えてきました。

次回は塗装工程の騒音と工場の騒音振動対策、そして人によって感じ方の違う高い音や低い音についてお話しします。