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エア配管を見直してみよう!③ 〜配管の結露と腐食の対策〜 2024年1月12日
配管には「勾配」が必要なことをご存知ですか
エア配管について解説するシリーズの第3回、最終回の今回は、配管の結露や腐食について解説します。配管内で結露が発生したり、結露が原因で腐食が起こったりすると、圧縮空気の品質の低下や設備の劣化など、さまざまな悪影響が生じます。記事では配管内で結露や腐食が起こる原因と対策についてもご紹介します。
配管の結露や腐食が与える影響
コンプレッサは周囲の空気を吸い込んで圧縮し、圧縮空気を作っています。その際、周囲の空気と一緒に空気中に含まれる水蒸気も取り込んでいます。空気は圧縮されても水は圧縮されないため、圧縮空気の中には大量の水分が含まれ、少し冷やされただけで結露が起きやすい状態になっています。この結露が配管の腐食の主な原因になります。
エア配管内の結露、配管の腐食は、生産工程や設備にさまざまな悪影響を与えます。
圧縮空気への影響
圧縮空気の品質は、圧縮空気中に含まれる不純物(オイル、水、ダスト)の量で決まります。配管内で結露が発生していると、圧縮空気が動いた時に水分を巻き込んでしまいます。また、腐食による錆などの不純物が圧縮空気に含まれる原因にもなります。
配管への影響
結露が原因で腐食が進行すると、配管の強度が低下して破損のリスクが高まります。配管が劣化してエア漏れが発生すれば、大きなエネルギーロスになります。また、配管の交換や修理が必要になるなど、メンテナンスコストも増加します。
設備への影響
結露による水滴や錆などの不純物が圧縮空気を使う設備に入り込むと、故障や不具合を引き起こしたり、設備の寿命が短くなったりします。フィルタを設置している場合でも、フィルタの目詰まりが早くなり、場合によってはフィルタで除去しきれない不純物が設備側に流れ込むこともあります。設備の故障による生産スケジュールへの影響やメンテナンス費用の増大はコストの上昇を招きます。
配管の結露や腐食が起こるメカニズム
結露の原因
結露は、空気中に含まれる水分が飽和水蒸気量を超えると起こります。空気は気温が高いほどたくさんの水蒸気を含むことができますが、気温が下がると飽和水蒸気量も小さくなるため、空気中に含みきれなくなった水分が結露して水滴になって出てきます。
空気は圧縮されると温度が上がりますが、配管を通過する間に冷却されてまた温度が下がります。そのため、圧縮直後の温度では空気中に水蒸気として含まれていた水分が、配管内を通過中に冷やされて結露が発生するのです。
また、夜間や冬など気温が下がりやすい時期は、配管の中まで冷えて結露が発生しやすくなります。
温度と飽和水蒸気量のグラフ
図1
腐食の原因
配管の腐食の原因は、水と酸素の存在です。配管の主な材料は炭素鋼やステンレスなど、鉄と炭素やクロムとの合金です。ただの鉄に比べて高い耐食性を持ちますが、全く錆びないわけではありません。
鉄や鉄の合金の表面に水が付着すると、水や水の中の酸素と鉄が反応して酸化鉄(錆)が作られます。圧縮空気が通過するエア配管内は、常に空気に含まれた酸素が供給されている状態のため、そこに水があると腐食の条件が揃ってしまいます。
結露した水分が溜まったものがドレンですが、常に結露が発生していたり、ドレンが溜まったままになっていたりすると、水や酸素と配管の鉄が反応し、腐食が起こりやすくなります。
コラム 酸化鉄
地球の中心核(コア)の主成分は鉄であると考えられています。人類が利用している鉄は、地球にある鉄のうち、地表近くに存在するほんのわずかな量だけです。地表にある鉄の多くは酸素と結合した酸化鉄として安定した状態で存在しています。オーストラリアのウルル(エアーズロック)やアメリカのグランドキャニオンの大地が赤いのは、土壌や岩石に多くの鉄分が含まれ、それが酸化して赤い色をしているからです。
世界中で流通している鉄鉱石の多くも赤い赤鉄鉱で、鉄を精練する際にはこれを還元して酸素と切り離し、純度の高い鉄として使えるようにしています。そのため、鉄を放っておくとまた水や水の中の酸素と反応し、元の安定した酸化鉄(錆)に戻ってしまうのです。
ちなみに日本古来のたたら製鉄には黒い砂鉄(磁鉄鉱)が使われていましたが、赤鉄鉱と化学式は違うものの、こちらも鉄と酸素が結びついて安定した酸化鉄です。鎌倉海岸や九十九里海岸など、黒い砂浜には大量の磁鉄鉱が含まれています。
エア配管の結露対策
空気タンク・エアドライヤの設置
圧縮直後の空気は高温になっているため、すぐに配管に流してしまうと配管内で冷えて結露が発生します。圧縮空気を一度、空気タンクに溜めて冷却を促せば、圧縮空気から水分を分離することができます。空気タンクは容量が小さすぎると十分な役割を果たすことが出来ません。コンプレッサ内蔵の空気タンクと別置きの空気タンクを合わせて吐出空気量の25%の容量を確保するようにしましょう。また、空気タンクに溜まったドレンは毎日排出するようにしましょう。
エアドライヤを設置すれば、更に乾燥した圧縮空気を得られます。塗装などの水分混入の影響が大きい用途ではドライヤの設置は必須ですが、エアドライヤには圧縮空気の品質を保つ他にも、配管内で発生する結露を減らし、設備や配管のトラブルを低減する役割もあります。
配管内の温度の安定
配管内の温度を安定させることも大切です。エア配管は建物の天井に取り付けられることが多く、天井付近は温度が高くなっています。一方で配管が建物の外に出ていたりすると、その部分は外気温の影響を受けて結露が発生しやすくなります。配管が外に出ている部分は保温材などで覆って温度を安定させると、結露対策になります。
エア配管の腐食対策
配管内部にドレンが溜まっていると、そこから酸化して腐食が進む原因になります。メインの配管には勾配をつけ、ドレンが溜まらないようにします。配管の勾配は1%(1mにつき1cm)以上必要です。
また、メインの配管から各設備へエアを供給する枝管はメイン配管の上側から立ち上げて取り出すようにすることでドレンの持ち出しを軽減できます。配管の末端にはドレン抜きを設置します。
ドレン抜き用の枝管はメイン配管からそのまま立ち下げることで、メイン配管にドレンが溜まることを防止できます。この枝管はエア供給の配管としての利用はしません。
勾配配管と立ち上げ配管
図2
まとめ
エア配管内で結露が発生したりドレンとして溜まったりすると、配管材の金属と酸素や水分が反応して腐食が起こります。配管内の水や腐食は、圧縮空気の品質を下げて生産工程に悪影響を与えるだけでなく、配管や設備の劣化とそれに伴うコストの増加にもつながります。
対策としてはドライヤなどを設置して圧縮空気の水分を除去するほか、温度管理を適切におこない、なるべく結露を発生させないことが大切です。結露が発生して溜まったドレンは配管内に滞留させないよう、配管の勾配や立ち上げ、ドレン抜きの設置をおこなってすみやかに排出するようにしましょう。寒い時期、こまめなドレン抜きは凍結対策にもなります。