KAIZEN記事

エア配管を見直してみよう!② 〜圧力損失を減らす配管設計〜 2023年12月15日

少しずつ改善することで大きな効果が得られます。

前回の記事では配管内の圧力損失とその原因についてお話ししました。

第2回の今回は、省エネにつながる配管設計について取り上げます。配管の見直しは費用がかかり、手を付けにくいものですが、出来るだけ費用をかけずに圧力損失を軽減するポイントをご紹介します。

エア配管の重要性

圧力損失の原因は、配管の汚れやドレンなどが堆積し発生する場合と、配管の長さや内径、曲がりなど配管の設計そのものに原因がある場合があります。 コンプレッサの吐き出し空気量に合わないサイズの配管を選んだり、必要に応じて配管を継ぎ足したり延ばしたりしていると、いつの間にか大きなエネルギーをロスしているかもしれません。

コンプレッサは工場の中でも大きな電気を消費する設備です。圧縮空気を効率的に使うことで、コンプレッサの運転時間の短縮や吐出圧力の低減が可能になり、電気代を節約できます。また、安定して圧縮空気が供給されることで、パフォーマンスの向上にもつながります。

圧力損失の対策

圧力損失の計算

第1回ではご説明を省略しましたが、圧力損失における配管長さや内径の影響は下記の式で簡易的に考えることができます。

式1

△P:圧力損失 kg/cm2
f:摩擦係数(例:亜鉛引き鋼管時は1.6×108
Q:流量 m3/h
L:管の長さ m(相当配管長含む)
d:配管内径 mm
P:元圧(ゲージ圧)

相当配管長とは配管の曲がりや狭窄などを直管の長さに換算して合計したものです。第1回で圧力損失は配管の長さに比例するとお話ししましたが、上記の式でも△PはLに比例しています。また、配管内径については影響が非常に大きく、△Pはdの5乗に反比例しています。つまり配管の内径を2倍にすれば、圧力損失を1/32に低減できることになります。実際に倍にまでするケースは少ないにしても、1つ上のサイズの配管にするだけで、大きな効果が得られます。

配管のサイズ、素材の見直し

配管の口径はコンプレッサの吐き出し空気量や配管の長さ、設備に必要な圧力から適正なサイズを割り出すことができます。コンプレッサの吐き出し口の口径そのままに配管サイズを設定するケースも多いのですが、場合によっては小さすぎる可能性があります。設備更新の機会に見直しをおすすめします。素材についても、配管の内壁面がなめらかで摩擦を生じない材質のほうが、摩擦も少なくてすみます。

配管配置の見直し

配管が長いほど、また配管の曲がりや狭窄が多いほど圧力損失が大きくなります。配管を設計する際にはできる限り短く、直線的なルートにする必要があります。継ぎ手をできるだけ少なくしたり、圧縮空気の流れを妨げないようなバルブを採用したりすることも効果的です。また、次章で解説しますが、配管のループ化も圧力損失を軽減し、エネルギーを効率的に使うことができます。

ループ配管

ループ配管とは

「ループ配管」とは、メインのエア配管を一周させてリング状に結合した配置です。リング状になっていない配管は「片道配管」と呼ばれます。片道配管だと末端に行くにつれて空気圧が低下し、配管の末端と供給元では大きな差が出てしまいます。これに対して、ループ配管では末端で配管が繋がって圧縮空気が回り込み、配管内全体の圧力が均等になります。ループ配管はエア配管を設計する時の基本になります。

図1

ループ配管による圧力損失低減

圧力損失には配管の内径が大きく影響しています。配管全体を太い管に交換するには大きな費用がかかりますが、太さを変えないまま末端で配管を繋ぎ、ループ化することで、配管を太くするのと似た効果を得ることができ、圧力損失も低減することができます。

例として配管を2つに分ければ、流れる空気の量も1/2になります。渋滞している道路にバイパスをつくり、車の流れを2つに分けた状態を想像していただけると分かりやすいと思います。

図2

式1の流速、Q1.85が二手に分かれて半分になります。片道配管とくらべ、圧力損失を約1/4に抑えることができます。

また、配管のループ化は全体でなく、一部を繋いでバイパスを作るだけでも効果が得られる場合があります。

図3

図2の赤い線のように末端を繋いでループ化するのが難しい場合、青い線のように一部の配管にバイパスを設け、ループ化することで圧縮空気の通り道が増え、圧力損失を抑えることができます。

ループ配管によるメリット

圧力損失の低減以外にループ配管のメリットもあります。

均一な圧力供給ができ、吐出圧力の低減につながる

配管をループ化すると圧縮空気が配管内へ均一に供給されるとお話ししました。配管が末端でリング状に繋がっているので、上流の設備で圧縮空気を消費してしまい末端まで届かないといった事態が避けられます。圧力の急激な低下を防ぎ、設備を安定して稼働させることができるため、エア漏れ対策などをすればコンプレッサの吐出圧力を適正に下げることもでき、大きな省エネにつながります。

配管の総延長を長くできる

片道配管に比べて圧力損失を抑えることができるので、配管の総延長を長くすることができます。

まとめ

配管内の圧力損失が大きいと、その結果としてコンプレッサの吐出圧力を高く設定し、圧力が高くなったことでエア漏れの影響も大きくなるなど、エネルギーを無駄遣いする悪循環が起きてしまいます。最近は電気代が値上がりしていますが、世界情勢を考えても電気代高騰の流れは続くと思われます。

配管の見直しは費用がかかり、すぐに出来る事ではありませんが、一気にすべてを見直す必要はありません。設備を更新する機会にできるだけロスの少ないエア配管を採用し、少しずつ改善を重ねることで、最終的には大きな省エネ効果を得ることができます。