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「防爆」とは?改めて知っておきたい基礎知識を解説! 2022年12月02日

火災や爆発を防ぐための大切な制度です。

製造工場の多くでは、可燃性ガスや蒸気、可燃性の粉末などを扱っています。そのため、爆発や火災を防ぐ「防爆」を行うことが必須ですが、「防爆仕様」「防爆構造」などについて、理解があいまいな方も多いのではないでしょうか。

そこで今回から3回にわたって「防爆」について解説します。第1回となる今回は、防爆の基礎知識についてご紹介します!

「防爆」とは?

防爆とは、その名の通り爆発や火災を防ぐことです。 可燃性物質としては、可燃性ガスや蒸気、小麦粉やでんぷんなどの可燃性粉じんが挙げられます。これらの可燃性物質が空気と混ざり合い、十分な酸素が存在している環境下で点火源が存在すると、爆発が起こる危険性があります。さまざまな点火源がありますが、その中でも注意が必要なのは火花が生じる電気機器です。

そのため、可燃性物質が存在する場所(危険場所)で電気機器を使用する場合は、可燃性ガスや可燃性蒸気と点火源を共存させない仕様、つまり防爆構造が施されている機器を使うことが義務付けられています。

また、一言で防爆と言っても、爆発性雰囲気の危険度により、危険場所がカテゴリー分けされています。0種、1種、2種の各危険場所カテゴリーに応じて、使用可能な防爆機器(防爆構造)も異なります。危険場所については次回で解説いたします。

爆発や火災が起こる条件

図1

防爆関連法規

爆発火災が起こると、甚大な被害が発生します。そのため、防爆に関してはさまざまな規制が定められています。日本国内では防爆に関係する主な法律は「労働安全衛生法(厚生労働省所管)」「電気事業法(経済産業省所管)」「消防法(総務省、各自治体消防署所管)です。

労働安全法

労働者に危険が生じないように、事業者に対して国が定めた規格を満たさない防爆構造電気機械器具(防爆機器)は設置できないと定めています(第42条)。また、防爆機器を使用するにあたっては、労働安全衛生法に基づく登録を受けた検定機関(登録型式検定機関)による型式検定に合格することが必要です(第44条の2)。

違反すると、業務停止などの行政処分が科される可能性があります。その他にも民事責任や刑事責任が問われ、罰金や懲役の対象となります。また違反が原因で労働災害を起こした場合、刑法・労働安全衛生法の違反だけでなく、民事責任として損害賠償などの社会的責任を問われます。

電気事業法

電気事業法に基づく電気設備に関する技術基準を定める省令により、防爆構造が必要となる範囲、危険場所の範囲、防爆機器の選定基準、電気工事方法などが定められています。危険場所で使用する電気機器は、国内の防爆認定品でなければならず、認定は厚生労働大臣に認定された機関で行います。これらに違反した場合は、電気事業法違反となり、罰金の対象となります。

消防法

可燃性物質など危険物の貯蔵や取扱について、法令が定められています(第3章)。危険物を取り扱う設備を作る場合は、事前に設置許可申請が必要です。また、実際に使用する前に申請どおりに完成しているかの検査が行われます。この検査に合格しないと、操業を開始することができません。

防爆構造の種類

爆発や燃焼は可燃性物質、点火源(着火源)、酸素の3つが揃ったときに起きます。そのため、防爆構造としては点火源をなくす、酸素濃度を下げる、自然発火温度に達しないようにするなどの対策が取られています。また、爆発が起こることを前提として、爆発に耐えうる容器で覆う考え方もあります。

日本国内において制定された「電気機械器具防爆構造規格」では、ガス蒸気防爆構造8種類と粉じん防爆構造2種類が定められています。代表的な構造を紹介します。

耐圧防爆構造

容器内部で爆発したとしても、その圧力に耐えうるほどに容器が強固で、外部に火炎を漏らさない構造です。点火源をそのまま容器で覆う構造のため、防爆化が比較的容易で小型、中型の電気機器に適しています。

しかし、容器自体の強度が必要なので、大きくて重くなりがちです。また、外部に影響を与えない構造ではありますが、内部で爆発すること自体を防ぐわけではないので、爆発の際に内部機器が破損することがあります。

耐圧防爆構造

図2

安全増防爆構造

正常な運転中は点火源にならない電気機器で、異常時に電気火花が発生したり、高熱になったりすることを防ぐための考慮をすることで、安全度を増している構造です。具体的には、絶縁性能の強化、温度上昇を低減させる材質の採用、外部からの異物を防ぐ保護構造などがあります。

メリットは軽量であること、また水素やアセチレンなどに適合する爆発等級3(グループⅡC)の防爆電気機器にも対応ができることです。しかし、正常に運転されている際は点火源にならない電気機器にだけ適用できる構造なので、防爆化できる機器が限定されます。また、安全増防爆は日本国内のみの規格になります。

※爆発等級…危険物の発火しやすさ、機器外部への火炎の出やすさ(火炎逸走といいます)を等級や種類でわけたもの。

安全増防爆構造

図3

内圧防爆構造

機器内へ空気などの保護ガスを送風したり封入したりすることにより容器内の圧力を上げて、機器内部へ爆発性ガスが侵入しないようにした構造です。制御盤などの大型電気機器の防爆化に適しています。

ただし、保護ガスの供給源が必要だったり、内圧低下を検知する保護装置が必要だったり、必要要件が多くコストが高くなりがちです。通風式、希釈式、封入式、密封式があります。

内圧防爆構造(通風式)

図4

その他の防爆構造

油入防爆構造は点火源となる電気火花や高熱になる部分を油中に収め、油面上に存在する可燃性物質に引火するおそれがないように考慮した防爆構造です。安全増防爆構造と同様に正常な運転中は点火源にならない電気機器に適用することができます。

本質安全防爆構造は正常運転時にはもちろんのこと、事故発生時にも電気火花や高温部が点火源にならないように回路設計され、実際に点火する恐れがないことが公的機関の試験などにより確認された構造です。非常に防爆性が高い構造ですが、大きな電力を消費する電気機器には向いておらず防爆化できる機器が限定されています。

コラム

内圧防爆構造に類似した簡易的な方式として、「エアーパージ方式」と呼ばれる構造があります。

機器内部に空気などを圧入して可燃性ガスの侵入を防ぐようにしたもので、一見安全に思えますが、内圧防爆構造のように保護装置や警報が設置されていないものは規格に適合していないため注意が必要です。万一内部圧力が低下してガスが侵入すると爆発事故を起こす恐れがあります。

まとめ

可燃性ガスや蒸気、可燃性の粉じんなどを扱う場所で電気機器を使う際は、防爆構造のものを使うことが法令によって定められています。防爆構造の種類はさまざまで、可燃性物質の種類や危険度によって必要な防爆構造は異なってきます。

次回は工場の危険場所の考え方や区分について紹介し、必要とされる防爆構造や今後の動向などについて解説します。