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コンプレッサと共に使われる周辺機器 ~空気圧の基礎③~ 2023年9月29日

コンプレッサと共に使われる周辺機器をご紹介します。

圧縮空気について解説するシリーズの第1回では空気圧の基礎や法則について、第2回ではコンプレッサの基礎についてご説明しました。第3回の今回は、コンプレッサの周辺機器の役割や種類、選ぶときのポイントについてご紹介します。

前回の記事:コンプレッサの選定に役立つ基礎知識 ~空気圧の基礎②~
前々回の記事:暮らしにも、生産現場にも欠かせない「空気圧」とは?

コンプレッサの周辺機器

一般に気体は圧縮されると温度が上がります。また、コンプレッサは空気とともに空気中の水分や周囲のチリやホコリなどの不純物も吸い込みますが、空気は圧縮されても不純物は圧縮されません。そのため、圧縮空気を使う前に冷却したり、水分や不純物を除去したりする周辺機器が必要になってきます。周辺機器はその他にもさまざまな役割を担っています。

コンプレッサの周辺機器として使われるのは、空気タンク、エアドライヤ、フィルタ類、減圧弁、ドレン処理装置、そして台数制御盤などです。図1はコンプレッサと周辺機器の配置の例ですが、圧縮空気の用途やコンプレッサの性能によって使われる機器や配置が違ってきます。たとえばエアドライヤはコンプレッサと一体の機種も普及しています。

図1

以下、ひとつずつ解説します。

空気タンク

エアータンク、レシーバータンク、バッファタンクなどとも呼ばれます。空気タンクはコンプレッサから供給される圧縮空気を一時的に溜めておくためのもので、圧縮空気を安定して供給するために重要な役割を果たしています。

空気タンクの役割

空気タンクには主に以下の役割があります。

圧縮空気の脈動の低減

コンプレッサは空気を吸い込んでから圧縮して吐き出す動きを繰り返しているため、圧力が脈のように変動します。特に往復式(レシプロコンプレッサ)は脈動が大きくなります。圧縮空気を空気タンクに一時的に保管しておくことで、圧力の変動を吸収し、ある程度一定の圧力を維持することができます。

圧力低下の緩和

圧縮空気を一気に使うと、配管では一時的な圧力低下が起きます。空気タンクに圧縮空気を溜めておけば、圧力低下の幅を緩和するバッファになります。

圧縮空気の冷却

コンプレッサから吐き出されたばかりの圧縮空気は高温です。空気タンクに一時的に溜めておけば、その間にある程度冷却されます。

水分・油分の分離

コンプレッサから吐き出されたばかりの圧縮空気には、水蒸気や気化したコンプレッサオイルが含まれます。「圧縮空気の冷却」の役割により、圧縮空気に含まれていた水分や油分が結露し、液体として分離されます。溜まった水分や油分は定期的に排出する必要があります。

コンプレッサの負荷軽減

一定量の圧縮空気を連続して使っている場合、空気タンクがない、あるいは空気タンクの容量が小さいとコンプレッサはそのたびに発停を繰り返さなければなりません。すると電子部品の接触回数が多くなり、故障しやすくなったり寿命が短くなったりします。空気タンクに圧縮空気を溜めておけば、コンプレッサの発停回数を減少させることができます。

空気タンクの選定

小形のコンプレッサには空気タンクを内蔵している機種もありますが、必要に応じて別置きのタンクを追加します。空気タンクの容量は、コンプレッサの吐出し空気量と使用する空気量から計算し、1分間の発停回数が2回以下になることを目安に選定します。およそ30秒間運転し、30秒間止まるような頻度です。これは電装品の接点の消耗を考慮した運転の間隔です。

詳細な計算は必要ですが、概算では吐き出し空気量の25%が必要で、足りない分を別置きタンクで補います。

例:吐き出し空気量400リットル/min、内蔵空気タンク40リットルのコンプレッサに必要な別置きタンクの容量

400×25%(0.25)=100
100-40=60

上記のように、容量60リットル以上の空気タンクを別置きで設置することを推奨しています。

豆知識①

圧縮空気が不足している場合、空気タンクを追加してもエア不足の解決にはなりません。空気タンクは圧縮空気を貯蔵するための装置で、空気タンク自体はエアを作ることができません。一時的に大量のエアが必要な場合はバッファとして使用できますが、空気タンクに圧縮空気を充填する余裕がなければ時間が経つにつれ不足してしまいます。

イメージとしては支出が収入を上回ってしまい、貯金を切り崩しているような形です。大きな買い物で一時的に支出が上回っても、再度貯金ができれば問題ありません。しかし毎月少しずつでも支出が上回るといずれ貯金が底を尽きてしまいます。

エア不足の原因は、圧縮空気を作り出すコンプレッサ自体の容量や性能が足りないこと、またはエア漏れによるロスが大きいことなど、圧縮空気の供給システム自体に問題があります。エア不足を解決するためには、不足している理由を明確にして、解決手段を探す必要があります。

ドライヤ

ドライヤの役割

圧縮直後の空気は多くの水蒸気を含み、少しでも冷却されると結露してドレン(水滴)になります。圧縮空気中の水分は、配管のサビや、二次側で使う機器が故障する原因になります。

そのため、必要に応じて圧縮空気から水分を除く必要があり、その役割を果たす機械がドライヤです。ドライヤにはコンプレッサに内蔵されているタイプと別置きのタイプがあります。

ドライヤの種類

冷凍式

圧縮空気を冷媒と熱交換して冷やし、圧縮空気中の水分を結露させて除去します。その後、ドライヤの出口付近で、処理前の温かい圧縮空気と熱交換をして温度を上げることで、乾燥した空気を作ります。もっとも一般的に使われているドライヤです。

吸着式

圧縮空気中の水分を吸着剤によって除去することで、乾燥した空気を作ります。冷凍式よりもさらに乾燥した空気を作り出せるため、ドライエアの必要な用途で使われます。 また、吸着式ドライヤは吸着剤の再生方法の違いで、ヒートレスドライヤと加熱再生式ドライヤがあります。

ヒートレスドライヤ
吸着剤を除湿する際に加熱しないものはヒートレスドライヤと呼ばれます。ヒートレスドライヤにもいくつか方式がありますが、代表的なものは、作り出した乾燥空気を使って吸着剤の水分を除去する方式です。吸着剤の水分を含んだ空気は大気中に放出され、圧縮空気のロスが大きいという特長があります。

膜式

メンブレンドライヤとも呼ばれます。水分を通しやすく、酸素や窒素などの気体を通しにくい膜(中空糸膜)を使って、水分と空気を分離します。分離した水分は、作り出した乾燥空気の一部(パージエア)を利用して、大気へ放出します。電源や冷媒が不要なので、省スペースで設置が簡単です。比較的少ない流量の用途に向いていて、部分的にドライエアが必要な場合に使われています。

豆知識②

日本国内で販売されているコンプレッサには、空気タンク・エアドライヤが一体になっている機械があります。11kW以下の比較的小さいコンプレッサで採用される方式です。空気タンクは吐出し空気量の25%を目安に選定すると前述しました。11kWのコンプレッサの場合、250L以上の容量が必要ですが、搭載されているタンクは75Lとずいぶん小さいように思います。これは問題ないのでしょうか。

結論から言うと、問題ありません。ただし、コンプレッサの動作に問題の無い最低限度の空気タンクを搭載している、ということです。日本国内ではコンプレッサの設置スペースを広くとることができない場合が多くあり、スペースを重視して一体型が販売されているのです。

エアドライヤも同じで、一体型のドライヤよりも別置きの製品のほうが能力に余裕があり、お客様の用途に合わせた機械を選定できます。能力に余裕をもって運用すれば機械が長持ちしやすくなります。コンプレッサを選定する時には、空気タンク・ドライヤを別置きにすることをご検討ください。

フィルタ

圧縮空気中の固形異物や油分、臭気を取り除く役割をしています。臭気の除去には活性炭などが使われます。処理する空気量や対応する空気圧、ろ過度によってたくさんの種類があります。

複数のフィルタを設置する場合は、コンプレッサ側から設備側へ、徐々にろ過度を上げるように設置します。コンプレッサ側に最も細かいフィルタを付けてしまうと、大小のゴミを捕集してしまうので、すぐに目詰まりしてしまいます。またフィルタが目詰まりを起こすと圧力損失を生じたり、ろ過しきれない不純物が二次側に流れだしたりする恐れがあるため、定期的なメンテナンスが大切です。

減圧弁

レギュレータと呼ばれ、圧力を調整して安定させる役割をしています。多くのエア機器には入気圧力が決められていて、それを超える圧縮空気を入れると壊れてしまいます。また、スプレーガンの吹付空気圧力はおおむね0.1~0.2MPa程度ですが、減圧弁を使わないと圧力が強すぎて塗装できません。このように、コンプレッサで作った圧縮空気を適切な圧力に下げる用途で使います。

フィルタと一体になったタイプや、エアトランホーマと呼ばれる流路の分岐ができる種類もあります。

ドレン処理装置

これまで述べてきたように、たくさんの水蒸気を含んだ圧縮空気が冷却されると、含み切れなくなった水分がドレンになって出てきます。このドレンはコンプレッサからも空気タンクからも出てくるため、タンクや配管内にたまらないように毎日排出する必要があります。

手動でも排出できますが、空気タンクには自動で排出してくれるオートドレンを設置すると便利です。一定時間ごとに排出するタイマー式や一定量のドレンが溜まるとフロートが浮いて排出するフロート式があります。

配管にはオートドレンを付けずにドレンバルブを設置することが一般的です。配管の末端や最も下になる場所、エアの滞留しやすい場所(減圧弁や制御盤の手前など)はドレンの溜まりやすい箇所なので、定期的に手動で排出してください。

台数制御盤

コンプレッサを複数台設置している場合、稼働時間の平均化や空気使用量の変動に伴って運転させるコンプレッサの台数を制御し、ムダな運転を抑えます。制御機能や運転管理機能の集約により、煩雑な操作を総括的に行うことができます。コンプレッサを個々に確認する労力を軽減し、運転管理が容易に操作できます。

まとめ

周辺機器は圧縮空気に含まれる不純物を除去して空気の品質を保持する他にも、コンプレッサの運転を最適化して省エネ性を実現するなど、大切な役割を担っています。

コンプレッサを選定する際には、使用用途や作動環境に合った周辺機器も一緒に選ぶと良いでしょう。