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クリーンエアを作り出すポイントは? 2023年2月10日

クリーンエアはどのように作られているのでしょうか。

クリーンエアについて解説する第2回は、圧縮空気の清浄度についてお話しします。製造現場で欠かせない圧縮空気は直接製品に触れることも多く、製品の品質に大きな影響を与えます。圧縮空気をクリーンにするポイントや必要な機器などについて解説します。

前回の記事はこちら

圧縮空気をクリーンにするためには?

コンプレッサは周囲の空気を吸い込み、圧縮しています。このとき、空気の体積は圧縮しますが、空気に含まれていたホコリや油分、水分などは圧縮されません。そのため、体積あたりに含まれるホコリなどの含有量は大きく増えるので、製品や工程に大きな影響を与えてしまいます。

JIS8392-1(ISO8573-1)では汚染物質をオイル・水・ダスト(固体粒子)の3つとして、圧縮空気の清浄度の等級(クラス)を分けています(前回記事参照)。高品質なクリーンエアが求められる場では、まずはこの3つができるだけ含まれない空気を用意し、コンプレッサに吸わせないことも大切です。

水が圧縮空気に与える影響

露点とは?

空気中に存在する水蒸気は、空気が圧縮されると水滴になりやすくなります。水蒸気として空気中に含まれていた水分が、空気の体積が圧縮されたために空気内に水蒸気として抱えきれなくなって、水滴となるからです。

空気中の水蒸気が水滴になり始める温度のことを「露点」と言います。空気の温度、つまり気温が高ければ高いほどたくさんの水蒸気を含むことができます。1㎥の空気中に含むことができる最大の水蒸気量が、「飽和水蒸気量」です。

<温度と飽和水蒸気量の関係>

図1

図1は、1㎥の空気が含むことの出来る水蒸気量(飽和水蒸気量)を温度ごとに示したグラフです。気温30℃の時の飽和水蒸気量は30g程度、10℃の時は9g程度になります。

例えば、夏に冷たい飲み物を入れたコップの周りには水滴が付きます。これは室内の気温ならば水蒸気として空気中に存在できていた水分が、コップの周囲の気温が低いので抱えきれなくなって水滴になっているのです。寒い冬に窓まわりに水滴(結露)が出ることがありますが、窓付近は室内の気温よりも温度が低いために起こります。

水滴による悪影響

コンプレッサから吐き出された圧縮空気は、配管を通ると冷やされるので、さらに水滴が生じる危険性が高まります。余分な水分は、直接製品に影響を与えるだけでなく、配管や機器の腐食を招き、サビなどが生じる原因になります。圧縮空気に紛れて吐き出される不純物は、製品の品質低下につながるうえに、配管や機器の破損の原因にもなります。そのため、空気を乾燥させて水分の管理、除去を行うことが重要です。

クリーンな圧縮空気を作るために必要な機器

圧縮空気の汚染物質「オイル」「水」「ダスト(固体粒子)」の3つを除去するためには、それぞれオイルフリーコンプレッサ、エアドライヤ、フィルタが有効です。すべての除去対策は、高い清浄度を求めれば求めるほど、イニシャルコストもランニングコストもかかります。圧縮空気の用途や目的によって適度な選定をすることが大切です。

オイルの除去「オイルフリーコンプレッサ」

給油式コンプレッサは、金属接触部分の潤滑のためにオイルで油膜を作る構造になっています。他にも、オイルには圧縮空気が戻ってこようとするのを油膜によって防ぐシールの役割、圧縮熱、摩擦熱の冷却をする役割があります。そのため、吐き出された圧縮空気にはオイルが含まれることになります。

オイルを含まないクリーンな圧縮空気を作るためには、オイルを使わないオイルフリーコンプレッサが適しています。オイルフリーコンプレッサから排出されるドレンもオイルを含まないので、ドレン処理のコストを削減することができます。

※ドレン排水の基準は自治体ごとに異なっており、確認が必要です。
※コンプレッサの周辺に油煙などが舞っている場合、オイルフリーコンプレッサの吐出し空気にオイルが混ざることがあります。

給油式コンプレッサの場合、圧縮空気に含まれるオイルを削減することができるフィルタもありますが、オイルは非常に除去しにくい物質です。そのため、食品関係など高品質な圧縮空気が求められる場ではオイルフリーコンプレッサの使用をおすすめします。

水分の除去「エアドライヤ」

水分を削減するには、エアドライヤ(除湿機)を使います。 圧縮空気用として一般的な「冷凍式ドライヤ」は、冷媒を利用して圧縮空気が結露するまで冷却し、ドレンを除去して除湿を行います。仕組みはエアコンの除湿と同様です。そうして除湿した空気を常温に近い状態に戻すことで乾燥度を高めます。

「吸着式ドライヤ」は、圧縮空気中の水分を吸湿材(吸着材)で吸着し、除湿を行います。冷凍式エアドライヤに比べて高い乾燥度を得られる特長がありますが、価格は高くなりがちです。

ダストやオイルミストの除去「フィルタ」

エアコンプレッサの吸い込み口には吸気フィルタが取り付けられ、コンプレッサが周囲の空気中のさまざまな不純物を吸い込むのを防いでいます。ただし、吸気フィルタだけでは吐き出すエアに不純物が含まれるのを防げないため、通常は吐き出し口側にもフィルタを取り付けます。ラインフィルタやサブミクロンフィルタ、オイルミストフィルタなど、除去すべき不純物によって用途に合ったフィルタがあるので、適切なものを選ぶようにしましょう。また、1種類だけ設置すればよいわけではなく、粗い不純物の除去から徐々に細かくする必要があります。目の細かいフィルタだけを付けてしまうと目詰まりが早く、想定した効果を得られないことがあります。

また、フィルタは定期的にメンテナンスすることも大切です。フィルタのつまりがあると、不純物対策の効果が落ちるだけでなく、圧力損失につながり、エネルギーや電気代の無駄使いになります。

<オイルフリーコンプレッサのエアの流れ>

図2

圧縮空気の測定

測定のポイント

圧縮空気の汚れは目に見えないので、品質をキープするためには定期的に清浄度を測定する必要があります。

測定する箇所は、フィルタを通した後のライン全体に供給される直前のポイント、製品に直接接触するポイントです。フィルタを通した後に測定しても、配管内の汚染や劣化などで品質が低下している恐れもあるので、測定箇所は多くなってしまいますが製品に直接接触するユースポイントでの測定も行うようにしましょう。

<測定ポイント>

図3

必要な機器

測定に必要な機器は、求められる清浄度によって異なります。厳密な測定をしようとすればするほど、時間もコストもかかります。

ダストの測定は、一般的にはパーティクルカウンターを使用します。評価しなければならない粒径範囲によりさまざまなタイプがあるので、適切なものを選定しましょう。水分は露点温度計で狙った露点がキープされているかを判断します。オイルの測定はさまざまな方法があります。簡易的には油分検知管を使うことで測定できます。細かいオイルミストは、圧縮空気内の油分をろ紙などで捕集し、溶剤に溶解させ赤外線分光分析法から濃度を求める方法があります。

まとめ

製造現場に欠かせない圧縮空気が汚れていると、製品に悪影響を与える恐れがあるだけでなく、生産設備の稼働率を下げたり、メンテナンスやエネルギーコストの増大につながったりします。クリーンな圧縮空気を作り、キープするにはコストがかかりますが、その分、製品品質の向上、生産性の向上、環境貢献など、多くのメリットがあるので、できることから改善に向けての取り組みを進めることが大切です。

次回は、圧縮空気を多く使う塗装工程でのクリーンエアの必要性や気をつけたいポイントなどについて解説します。