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知って安心コンプレッサの安全知識 ~日常管理編~2021年3月5日

知って安心コンプレッサの安全知識 ~日常管理編~

工場ユーティリティの一つであるコンプレッサは、工場が稼働している限りは停止することのない設備です。工場の消費電力の約30%がコンプレッサの運転によって消費されるとも言われています。そのため、コンプレッサの稼働環境を適正に整えれば、工場の固定費削減に大きな効果も期待できます。

今回はコンプレッサの日常の管理についてお話しします。

コンプレッサに必要な点検

日常点検

毎日の運転開始前や運転終了後に行う簡易的な基礎点検です。 ドレンの排出、潤滑油量の確認、運転後に不要になった圧縮空気の放出などがこれに当たります。また運転音や振動に関しての確認も毎日行う必要のある点検です。 毎日の点検がメンテナンスの基本になりますので、必ず実施する必要があります。

定期点検

運転環境などによってその頻度は変化しますが、一定の運転時間や年月経過などを基に行う点検です。点検の頻度などは、対象となる部位や部品によって異なります。また点検項目はコンプレッサの機種や圧縮方式によっても異なります。定期点検は取扱説明書に記載してある手順にしたがって実施してください。

代表的な点検項目

 潤滑油の補給・点検・交換(給油式コンプレッサの場合)  
 エアフィルタの清掃および交換  
 セパレータエレメントの定期交換(スクリューコンプレッサの場合)  
 クーラ・ファンの清掃  
 駆動ベルトの張力確認・調整・交換  
 配線のゆるみ確認  
 モータの点検(グリースの補給、絶縁抵抗等など)  
 運転制御の確認  
 エアの充填時間の確認、等

なお、普段と明らかに違う症状(異音、振動、熱、臭い、油の消費量、電流値が高い、サーマルリレー(保護装置)により頻繁に停止する等が発生した場合は、メーカーにメンテナンスを依頼しましょう。

点検を行うことで防げるトラブル

コンプレッサは工場の中で最も過酷な運転状況におかれる設備の一つです。一般的に工場でのコンプレッサの年間稼働時間は約4000時間にもなると言われます。年間4000時間の稼働とは、車に置き換えると年間に約16万キロ走行する車と同じ程度ということになります。(普通乗用車の場合、一般的には走行距離10万キロが買い替えの目安と言われます)

このように過酷な条件下であっても、きちんとした点検と整備を行うことで、安全にそして経済的に運転を継続することができます。反対に日常の点検や整備を怠ってしまえば思わぬ事故や故障、さらにはエネルギー効率の悪化を招いてしまう可能性があります。

潤滑油関連のトラブル

コンプレッサのトラブルの中でもっとも多いといっても過言ではないのが潤滑油由来のトラブルです。

圧縮室内部では、潤滑油がミスト化された状態で高温・高圧にさらされます。これにより潤滑油の酸化分解が起こり炭化物を生成する原因になります。この炭化物はオイルセパレータエレメントや配管内部に堆積します。堆積した炭化物に圧縮空気中の油分が浸み込んで化学反応を起こし、さらにその反応熱が炭化物内に蓄積されていきます。最悪の場合、蓄積された熱によって圧縮室内の気化・微粒化した油分が発火することもあります。

潤滑油の不足や劣化はコンプレッサの性能を著しく低下させるばかりか、場合によっては異常発熱などの原因にもなります。

フィルター関連のトラブル

吸込口などのフィルターの目詰まりはコンプレッサの圧縮効率を低下させる要因になります。吸い込みフィルターは空気中のホコリが圧縮室内に入るのを防いでいます。いわば紙パック式の掃除機のようなものなので、中にホコリが蓄積するのです。

空気の入り口が詰まると圧縮機本体に流入する空気が減り、エネルギー効率が下がってしまいます。(空気の薄い状態で圧力を高めようとしても無駄なエネルギーを使います)

定期的にエアブローで清掃し、汚れがひどい場合には交換する必要があります。また給油式コンプレッサの場合は、オイル上がりの原因にもなります。

タンク関係のトラブル

ドレン抜きなどを怠ると、タンク内部や配管の中に錆による減肉、ピンホールなどによるエア漏れ、破損、破裂等の重大事故の危険があります。また、タンク内部で発生した錆が二次側に流れることで、設備やエア工具が故障する原因になります。

駆動系のトラブル

駆動ベルトなどの駆動系機関部品の損傷はコンプレッサの性能の低下や停止の原因になります。駆動ベルトが延びて撓んでいると、運転開始時や運転中に滑ってしまいます。またベルトにひび割れがあると、運転中に突然破断するなどの危険を伴います。

電気系のトラブル

電気の端子部分にはホコリが溜まりやすく、端子のねじが緩んでいると漏電や火災の危険姓があります。接点不良などによる機械の停止や、絶縁不良などによる火災にも注意する必要があります。電源ボックス内やマグネットスイッチの内部など、ホコリの溜まりやすい箇所とねじのゆるみを合わせて確認しましょう。

コンプレッサの点検にまつわる法規

コンプレッサをはじめとする圧縮機には、その安全性を確保するため様々な規約や義務が定められています。一般的なコンプレッサに関連する規約等には次のようなものがあります。

ボイラー及び圧力容器安全規則(第二種圧力容器)

対象となる圧力容器  
最高使用圧力0.2MPa 以上で内容量40L 以上の容器。  
最高使用圧力0.2MPa 以上で胴内径200mm 以上、かつ胴長1000mm 以上の容器。  
具体的には、圧力容器を改造せず、年1 回以上の定期検査を行い、もし事故を起こした場合は所轄の労働基準監督署に報告する必要があります。

騒音規制法・振動規制法

法律では7.5kW 以上の空気圧縮機が対象となっていますが、都道府県により規制の内容が異なりますのでご注意ください。具体的には、工場または事業場の敷地境界線上での騒音・振動をその地域の規制値以下に抑制する必要があります。

フロン排出抑制法

冷凍式ドライヤ及び冷凍式ドライヤ搭載機はこの法律で第一種特定製品として指定されています。  使用時は3ケ月に1 度の簡易点検等が必要です。廃棄時は各自治体から認可を受けた業者にフロン類の回収を依頼する必要があります。

高圧ガス保安法

すべての高圧ガス製造者には、「施設を技術上の基準に適合するように維持する」ように義務づけられています。〔第一種製造者 : 高圧ガス保安法十一条、第二種製造者 : 高圧ガス保安法十二条〕

安全、エネルギー効率維持のために点検を行いましょう

コンプレッサを使用する場合は取扱説明書をよく読んで適切な条件で使用し、各種点検は取扱説明書の内容に沿って行うようにしてください。また、メンテナンスはメーカー指定のサービス工場に依頼してください。自社で部品を交換する際は、安全のため必ずメーカ純正品を使用するようにしてください。

きちんと管理すればコンプレッサは安全に、効率的に使うことができ、工場の稼働を支えてくれるはずです。

(参考文献)
一般社団法人日本産業機械工業会「メンテナンスのすすめ~空気圧縮機“安全と省エネ”のために」