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歩留まりと直行率の違いを説明できますか2020年10月2日

歩留まりと直行率の違いを説明できますか

製造業において、不良品の発生や原材料の廃棄を減らすことは永遠の課題と言っても過言ではありません。

今回はそうした取り組みの中でしばしば耳にする「歩留まり」と「直行率」という言葉について、その意味や活用方法などをご紹介します。

目次

歩留まりと直行率とは

製品の品質管理目線における「歩留まり」と「直行率」とは、製品の製造過程から客先への納品までの間にどれだけ問題なく完成に至ったか、もしくはどの程度の割合でトラブルが発生したかを計る数値です。

この他に不適合に関する数値と言えば、不適合の発生件数や不適合の発生割合などがあります。これらは不適合発生の概略を可視化する意味では有用ですが、品質向上や生産活動の効率化といった視点では、あまり活用できる数値ではありません。

そうした点を考慮し、製品品質の安定やそれに伴う生産効率の向上を目指す際に指標的に用いられる数値が「歩留まり」と「直行率」です。

歩留まりとは?

歩留まりとは一言でいえば素材の総量に対して完成した製品の総量を表したものです。歩留まりに関しては素材の重量を基本とした考え方や素材の数量を基本とした考え方など、様々な計算方式があります。しかし共通しているのは素材に対して最終的に出荷に至った製品の量を表した数値であることです。

例として2つの歩留まりの計算をご紹介します。

・工程に投入した素材の数100個に対して完成した製品の数が90個とする場合の歩留まり
この場合、素材の段階では100個あったのに対し完成品として出荷できたのは90個ですので、歩留まりは90%ということになります。

・工程に投入した素材の重量100kgに対して完成した製品の重量が10kgとする場合の歩留まり
この場合、完成した製品がいくつあったかではなく製品として利用した素材の重量が10kgであったことに着目するため、仮に完成した製品が90個であっても歩留まりは10%ということになります。

直行率とは?

では直行率とはどのような数値なのでしょうか。

品質的目線で用いられる「直行率」とは、製品の受注から完成までトラブルや不適合の発生がなく、生産計画どおりに生産された製品の割合を示した数値です。つまり、この数値が100%であればその工場での生産活動は何のトラブルもなく、計画通りに遂行されている理想の工場ということになります。

直行率の算出方法にも生産体制などによって様々な方式がありますが、もっとも一般的なものは全製品数に占めるトラブル(不適合など)の発生した製品を差し引いた製品の割合を計算したものです。

例えば、月に10,000個の製品を製造する会社において、9,000個の製品がトラブルなく出荷にまで至る場合には、直行率は90%ということになります。

ここで重要なのは直行率というのは「真に何の問題も発生しなかった製品」であるという点です。手直しや修正を行い最終的には出荷できる品質を確保できた製品であっても、直行率の計算の場合にはその製品は総量に含めて計算することはできません。

この点が歩留まりとの最大の違いです。

歩留まりと直行率の関係性

例えばある製品を10,000個生産するために10,000個の素材を準備し加工を行った場合の歩留まりと直行率について考えてみます。

・10,000個中8,500個はトラブルなく生産を終え出荷に至った
・10,000個中1,000個は途中工程でトラブルが発生したが、最終的には出荷できる状態になった
・10,000個中500個は不適合により廃棄した

まずは歩留まりの計算です。10,000個の素材を投入し、途中トラブルがあっても最終的に出荷できた製品の数量は9,500個ですので、歩留まりは95%になります。

次に直行率の計算です。10,000個の素材を投入し、トラブルなく完成したのは8,500個ですので、直行率は85%と歩留まりより低くなります。




目指すのは歩留まりの向上ではなく直行率の向上

一昔前の生産の現場では「歩留まり」は非常に重視される数値として様々な場面で登場していました。しかし、前述の通り歩留まりというのはあくまでも「完成した製品」に重きを置いた数値で、完成までに必要とした労力などの観点が欠如しています。

そのため近年では生産効率の改善や計画的な生産設計の確保を目的として「直行率」の向上を目指す取り組みが盛んに行われています。

100個の素材から100個の製品を製造する時、不適合やトラブルにより必要となった手直しや追加加工にかかる経費は、直行率が100%であった場合には必要のない、言わば負の経費です。その負の部分を少しでも少なくし、生産効率を上げる活動の指針となるのが「直行率の向上」です。

社内で起こっている様々なトラブルをしっかりと解析し、直行率の向上を目指すことが生産現場には求められています。