KAIZEN記事

知って安心コンプレッサの安全知識 ~設置場所編~2021年2月19日

知って安心コンプレッサの安全知識 ~設置場所編~

コンプレッサ、空気圧縮機は工場の稼働を支えるなくてはならない設備です。普段あまり注目される事の無い「縁の下の力持ち」であるコンプレッサですが、工場の中のどこに置かれているでしょうか。ひょっとして軒先で雨にあたっていたりしませんか?

今回はコンプレッサの設置に必要な環境についてお話しします。

設置環境がコンプレッサに与える影響

工場のユーティリティの一つであるコンプレッサは、長時間の稼働に耐えられるような設置場所を確保することが大切です。設置環境がコンプレッサに与える影響は想像以上に大きなものなのです。

設置の基本は水平な土台

コンプレッサを設置する際に最初に注意すべきことは、設置場所の水平度です。

コンプレッサが運転するとき、内部では部品が高速で動いています。圧縮方式での違いは多少ありますが、高速で動いている事は同じです。傾いた場所に設置すると使用している間に部品に異常摩耗が生じ、最悪の場合は破損してしまいます。特にコンプレッサの心臓部である圧縮室内は高温・高速・高圧力で運転している部分です。傾きの影響を受けやすく、故障するとコンプレッサそのものが稼働しなくなる可能性があります。

そのため、コンプレッサを据え付ける場所は水平な場所であることが求められます。また、コンプレッサの振動で設置場所が陥没し、傾くなどのトラブルも考えられます。据え付けをする際は、しっかりとしたコンクリートの土間の上に設置するのが理想的です。

コンプレッサの熱と換気

次に重要な要素になってくるのが「熱」です。

コンプレッサは工場の稼働中は運転し続ける機械です。大きな金属音を発生させますので、運転音を遮るために遮音壁で囲まれたコンプレッサ室の中に設置されることがあります。そうした場合、部屋の内部はコンプレッサの発熱などにより、雰囲気の温度が高くなります。この温められた空気を吸い込み、圧縮を繰り返すことで、コンプレッサの本体温度がどんどん高くなります。その結果、オイルの持ち出しや短期間で劣化するなどの不具合が生じます。最悪の場合はコンプレッサ本体の焼き付きを引き起こすことがあります。

そのためコンプレッサを密閉された空間に設置する場合には、必ず吸気口と排気口を設ける必要があります。吸気は建屋の下部から、排気は吸気と反対側の壁の上部からすることにより、喚起の効果が高まります。また排気ダクトを使う、局所排気も有効です。集合ダクトによる集合排気は一部の機械に負荷がかかる可能性がありますので、排気ダクトはコンプレッサごとに取り付ける必要があります。

しっかり換気をおこない雰囲気温度をできるだけ一定に保つことは、コンプレッサの運転条件として重要な意味を持ちます。目安としては下記のような計算式があります。

・空冷式の場合:換気量(m³/hr)=700×圧縮機出力(kW)
・水冷式の場合:換気量(m³/hr)=110×圧縮機出力(kW)

※上記は全体換気で温度上昇5℃の場合です。
※換気扇の容量は、建屋の静圧(50Paなど)を考慮して選定ください。
※換気方式、換気量およびコンプレッサの想定雰囲気温度はメーカーの取扱説明書をご確認ください。

粉塵の影響

水平性・換気と共に重要なの要素が周辺の空気の質です。特に粉塵や塵埃の多い場所に設置するとコンプレッサの部品の消耗を早くしてしまうだけでなく、重大な損傷の原因にもなります。

コンプレッサに悪影響を与える粉塵として代表的なものは「鉄粉・木屑・土埃」などで、どれも工場では身近に存在するものです。このような異物を吸い込むと圧縮室内部の部品が傷つき、圧縮効率の悪化・オイル上がりなどの不具合が起こります。深刻な場合には圧縮機本体の故障につながりますので、粉塵の影響が少ない環境を選んで設置することも重要です。

腐食性ガス・有毒ガスの存在

それ以外にコンプレッサの設置環境において注意が必要なのが、空気以外のガスの存在です。

コンプレッサには金属部品が使われています。アンモニアや酸・塩素などの腐食性ガスが存在する環境で運転すると、腐食性ガスの影響でコンプレッサ自体が損傷してしまいます。空気以外のガスが建屋内に充満する可能性がある場合は十分な換気をする必要があります。

人体に影響のある有毒ガスが発生する場所での運転については、メーカーが使用を禁止している場合がほとんどです。このような環境に設置する場合は、事前にメーカーに問い合わせすることをお勧めします。

予備機とメンテナンススペースの確保

これは設置環境とは少し違った観点になりますが、コンプレッサの設置を考える際には予備機の準備も検討するべき要素です。

現在の工場においてコンプレッサはなくてはならない機器です。BCPの観点からも、予期しないトラブルでコンプレッサが停止してしまった時に備え、予備の設備を持っておくことは大切です。

また、コンプレッサを長年安全に使用するためにはメンテナンスが不可欠になります。設置する際はメーカーの推奨するメンテナンススペースを確保する必要があります。そして将来増設の可能性がある場合は、増設機のメンテナンススペースもあらかじめ考慮しておくと良いでしょう。メンテナンスの時に、コンプレッサを別の場所に動かす手間がかかることがあります。余分や時間や日数がかかり、場合によっては重機が必要になることもあります。このような想定外の費用を防ぐこともできるかもしれません。

まとめ

コンプレッサが最適な環境で運転することは生産工場の安定稼働に繋がります。また効率的な運転は生産工場の省エネにも直結します。これらのことを考慮した上でコンプレッサの設置をすることは生産工場にとってとても大切なことなのです。

 

(参考文献)
一般社団法人 日本産業機械工業会「空気圧縮機を安全に設置するために」
https://www.jsim.or.jp/pdf/publication/a-1-55-00-00-00-p13.pdf