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コンプレッサの省エネでまず着目すべき5つのポイント2020年6月12日

コンプレッサの省エネでまず着目すべき5つのポイント

省エネ大国といわれる日本。更なる省エネを目指し、省エネ法も改正を繰り返してきました。今や工場にとってエネルギー管理や省エネの実施は重要な義務になっています。省エネの対象になるエネルギーは燃料・熱・電力であり、工場の主要な動力源であるコンプレッサは省エネ効果の高い設備です。

本記事ではコンプレッサの省エネのポイントについて説明します。

省エネの目標設定

コンプレッサの省エネの1つの指標に、原単位を把握した上で目標設定をすることが挙げられます。 コンプレッサの原単位は「1m3の空気を圧縮するのに必要なコスト」を指し、この原単位を下げることがコンプレッサの省エネに繋がります。

原単位(円/m3)=(所用動力[kWh]×電力コスト[円/kWh])÷(吐出空気量[ m3/min]×60[min]

一般的な工場においてコンプレッサが占める消費電力は20~25%と言われています。コンプレッサの生涯運用コストはイニシャルコスト+ランニングコストに分けることができます。さらにランニングコストはメンテナンス費用と運用コスト(主に電力コスト)に分けられます。生涯運用コストの実に80%ほどが電力コストとされていますので、この部分を削減することは大きな効果を生みます。

生産技術者は、原単位の改善を前提として省エネ策を練り、継続的に目標値に対しての省エネ達成状況を把握しなければいけません。

コンプレッサの省エネポイント5選

コンプレッサの原単位を改善するには、所要動力や電力コストを下げながら吐出空気量を増やすことが理想であることが先の計算式からわかります。ここでは、既存の設備で行うべきコンプレッサの省エネ対策について紹介します。

ポイント1:コンプレッサの使用箇所の適正化

コンプレッサを複数使用している場合、中には稼働率が低いものもあるかもしれません。使用の必要がなければ運転停止することで、コンプレッサの電力コストを下げることができます。

複数台を同時に運転しているコンプレッサの中には、圧縮空気を少ししか作ってないのに多くの電力を使っている機械があります。旧型のスクリューコンプレッサにはこのような制御方式が多いのですが、電力の無駄遣いです。このような機械は電力測定を実施することで、どれだけ無駄に電気を使っているのか調べることができます。

また、コンプレッサの圧縮エア分配先の設備の中で、使用頻度が低い設備も停止できないか確認を行いましょう。

ポイント2:設定圧力の適正化

コンプレッサを動力源とする設備の圧力設定が高過ぎれば、その分エネルギーの無駄遣いになります。適正な圧力設定で使用されているか否かをチェックし、設定の見直しを検討しましょう。

例えば、動作圧力が0.6MPa必要な機械が1台あり、その他の機械は0.3MPaで十分稼働できる工場があるとします。この時、高圧が必要な1台の機械に合わせて配管全体を高圧にすることは電力の無駄遣いです。工場の配管は0.3MPaで動く機械に合わせて圧力を下げ、高圧が必要な機械にだけ高圧な圧縮空気を供給することで、コンプレッサの電気代は大きく変わるでしょう。

設定圧力の点検の際には、高い圧力を必要とする機械(機器)の使用頻度を調べる事から順に行います。こうすることで工場全体で必要な圧力を分類することができ、効率的にコンプレッサの省エネ対策を進められます。

ポイント3:既存設備のメンテナンス

コンプレッサは、部品などの経年劣化によって導入当初と比べて圧縮効率が低下し、消費電力が増えます。コンプレッサの定期点検とメンテナンスを行いましょう。

給油式のスクリューコンプレッサの場合、スクリューローターの摩耗や潤滑油の劣化などで圧縮効率が低下します。定期的に圧縮機本体や潤滑油などの点検を行うのはもちろん、故障してないように見える場合でも、メーカー推奨期間での部品交換などの検討も必要です。

また、コンプレッサ以外にも、エア配管のチェックも重要です。配管継ぎ手やパッキン部などからのエア漏れは、そのまま損失コストになります。昼休みの時などに、工場の設備が停止しているのにコンプレッサが動き出した経験はないでしょうか?これはいろいろな部分からのエア漏れによって配管の圧力が下がったため、コンプレッサが配管圧力を維持しようとして運転開始したためです。エア漏れ箇所の点検と修理を実施し、定期的なメンテナンスや異常検知手法の導入を行いましょう。

エア漏れの点検では、まず「漏れ音」に注意し、懸念箇所にリークチェックスプレーなどの発泡剤を噴射して泡の動きで確認しましょう。超音波式の空気圧漏れ検知器などの使用も有効です。

コンプレッサを動力源とする工具やエアシリンダなども、経年劣化によって空気使用量が増大することがあります。エア分配先の機器の定期点検とメンテナンスも欠かさないようにしましょう。

ポイント4:エネルギーの回収と再利用

コンプレッサの原単位を改善する以外にも、工場全体としての省エネにつながる方法があります。それが、コンプレッサから発生する熱の再利用です。

コンプレッサの排熱を動力源とする設備としては、加工製品の乾燥炉などがあります。コンプレッサのように恒常的に使用する設備の排熱を回収して、空調や他の乾燥炉の昇温補助として再利用すれば、工場全体としての電力コストを低減することができ、結果的にコンプレッサに関連する省エネにつながるのです。

コンプレッサの排熱を空調に利用するアイデアは、すでに欧米のメーカーの一部が取り入れているようです。

ポイント5:定期的な設備停止などによる省エネ

省エネは、エネルギーの無駄使いをいかに減らすかが重要です。工場の定期停止以外にも、休憩時間にコンプレッサを停止するなど、設備自体の停止によって省エネを図ることもできます。

ただし、コンプレッサの再立ち上げにかかる電力消費の方が、機械停止による省エネ効果よりも大きければ意味がありません。太く長いエアー配管を使っている場合には、配管の圧力が生産に必要な圧力に戻るのに時間がかかってしまうかもしれません。効果検証を行った上で実行すべき省エネ対策です。

省エネ効果が期待できないならコンプレッサの交換も検討してみましょう

コンプレッサや関連設備のメンテナンスや、定期的な機械停止でできる省エネには限界もあります。その場合は、省エネ式のコンプレッサへの交換も検討が必要です。コンプレッサの電動機効率の向上に伴う電力コストの低減について簡単に算出すると、以下のようになります




この電力コスト試算では、負荷率を100%として電動機効率の変化のみに着目しています。IE1モーターとIE3モーターでは、7.5kWの比較的小さな出力だと約5ポイント、37kWでは約2ポイントのモーター効率に差があります。この差が消費電力に影響を与えます。

上記の表では計算しやすくするため、1日8時間稼働、負荷率100%、年間稼働日数300日、電力単価=15円/kWhで計算しています。

7.5kWのモーターを搭載したコンプレッサの場合は年間15,000円、37kWのモーターを搭載したコンプレッサの場合は30,000円の差が生まれます。

実際には、モーターの力率、コンプレッサの稼働率や制御方式による消費電力の違いなどを考慮しなければいけませんが、コンプレッサの原単位改善には、最新型の省エネマシンへの変更も一つの手段となるのです。

ただ、コンプレッサの交換には機械停止が伴います。動作確認なども含めると、生産できない時間=ロスが発生します。生産への影響が大きい場合には、工場関係者や技術開発部門だけでなく販売に関わる部門などにも生産停止の必要性を説明した上で、導入を検討しましょう。

まとめ

工場の動力源となるコンプレッサはランニングコストの80%が電気代と言われており、省エネ効果を出しやすい設備です。まずは、現状の原単位を把握して省エネの目標を定め、既存設備での省エネ対策の効果検証を行いながら、コンプレッサの見直しも視野に入れた省エネ活動を行いましょう。