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工場の固定費を減らして利益を生み出す方法2020年7月3日

工場の固定費を減らして利益を生み出す方法

製造の現場において永年の課題であり最大の課題でもあると言われるのが「コストの削減」です。製造の現場では他社との競争力の強化などを目的に継続的にコスト削減に向けた働きかけを行っています。

コストの削減手法は様々ありますが、中でも製品の生産原価に占める割合の大きい「固定費」と呼ばれるコストを削減することは、効率的にコストを削減できる手法として大切になってきます。

固定費と変動費の違い

工場に限らず事業を行っていくうえで必要になる経費(コスト)は大きく「固定費」と「変動費」に分類することができます。

変動費

「変動費」とは、事業の規模や量が変化するに伴って金額が変化する可能性の大きいコストの総称で、代表的なものとしては「原材料費」や「重油等燃料費」などが該当します。

受注が少なければ、必要となる素材も少なくなり仕入れにかかる費用は少なくなり、反対にたくさんの製品を作るにはたくさんの素材が必要となり、コストが大きくなります。

このように生産活動の量によって変化するコストが「変動費」です。

固定費

反対に生産活動の大小にかかわらず常に概ね一定の経費として必要となるコストが「固定費」です。「固定費」の代表的なものとしては「人件費」「光熱費」「工場の貸借料」「各種リース品の支払い」などが挙げられます。

これらのコストは生産活動が変化しても必要となる金額に大きな差がなく、工場の運営に大きな負担としてのしかかってくるコストです。

固定費が大きいほど経営は安定しにくい

例えばA社は年商1憶円の会社で、年間の固定費が6000万円、変動費が3000万円と仮定します。その場合の年間利益は1000万円となります。

しかし翌年、不景気によって売り上げは5000万円に減少しました。その場合、変動費が生産活動の減少に伴って半分の1500万円になったとしても、固定費は6000万円のままですので、最終的に2500万円のマイナスになってしまいます。

次に、同じ年商1憶円のB社は固定費が3000万円・変動費が6000万円の会社だとします。初年度はA社と同じ利益1000万円ですが、翌年仕事量が激減し、売り上げが5000万円に減少し、変動費も半分の3000万に減少したと仮定した場合、B社は「売上(5000万)-固定費(3000万)―変動費(3000万)=マイナス1000万円」になります

つまり、トータルでの経費に占める固定費の割合が大きければ大きいほど、情勢の変化による経営のリスクは大きくなり、利益を出しづらい体制になってしまいます。

そのため、製造の現場では固定費の削減は大きな課題となっています。

固定費の種類と削減に向けた取り組み

では、実際にどのような固定費に対してどのような取り組みが行われているのか、いくつか例を挙げてご説明します。

人件費の抑制

固定費の中で最も大きな割合を占めているのが社員に対して支払われる給与や保険に関わる費用などの人件費(労務費)です。会社は仕事の量に関わらず一定の社員を雇用し生産体制を維持しておく必要があります。そのため固定費としての人件費はいわば(対策のしようのないコスト)として捉えられがちです。

確かに人件費は社員を解雇するなどの方法以外は簡単に抑制することはできません。しかし各社員の生産効率を向上させることで無駄な残業を抑制できるなどの効果により、削減効果を得ることができます。

例えば100万円の売り上げを出すのに100時間の労働が必要な場合で、労働者の時間単価を5千円とした場合、100時間×5千円=50万円の人件費が必要です。しかし、生産の高効率化などで必要な労働時間を80時間に抑制できた場合は、同じ労働単価5千円として計算しても、80時間×5千円=40万円となり、結果として10万円のコスト削減効果を得ることができます。

光熱費の見直し

近年、電気事業やガス事業の自由化などの流れによってインフラ供給会社を自由に選べるようになりました。そうした新しいサービスを積極的に活用することで、光熱費の抑制を図ることもできます。

特に電力に関しては、供給事業者ごとに特色のある料金プランが数多く提供されており、その会社の運用状況にマッチしたプランへの変更は非常に大きな抑制効果を得られる場合もあります。

工場内電力使用量の削減

 製造業の場合、工場での使用電力の割合が最も大きくなります。その中でもコンプレッサは工場内の消費電力の20~25%と言われており、こうした消費電力の大きな機械の稼働を最適化することも効果があると考えられます。

コンプレッサを複数使用している場合、中には稼働率の低いものもあるかもしれません。必要がなければ運転停止することで、コンプレッサの電力コストを下げることができます。

また、コンプレッサの中には、負荷率が低いにも関わらず、必要以上に電力を消費している場合があります。旧型のスクリューコンプレッサにはこのような制御方式が多いのですが、電力の無駄遣いにつながります。このような機械は電力測定を実施することで、どれだけ無駄に電気を使っているのか調べることができます。

その他の固定費削減手法

その他に次のような取り組みも固定費削減の効果の大きなものとして挙げることができます。

  • ペーパーレス化による文書保管費などの抑制
  • 電子取引・非対面商談などの積極的な採用による車両費及び交通費の削減
  • 拠点の統合による不動産支出の抑制

まだ終息の見通しが不透明ですが、新型コロナウィルス感染症と今後長期的に付き合っていく上で、事業継続の備えとして、リモートワークが多くの企業で促進されています。

半ば強制的に新しい働き方を検討する機会となりましたが、DX(デジタルトランスフォーメーション)*1への取り組みと合わせ、Web会議やクラウドを活用した新たな事業運営が急速に発展しています。

リモートワークでは以下のようなコスト削減への効果が期待され、上記で触れたような固定費の削減につながりやすいと考えられます。

  • 執務スペースの削減(賃借料の削減)
  • 交通費
  • コピー機の印刷費用
  • 光熱費

固定費削減の取り組みは継続が必須

このように、固定費を削減することは会社として利益を得やすい体制を構築する有効な取り組みです。

しかし、このような取り組みは一度行えば継続的に効果を得られるといったものではなく、会社の情勢やその時々の状況によって常にアクションを起こし続ける必要があります。

そのためにはコスト意識を持ち続け、見直しを継続していくことが重要になります。

(*1)DX=Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション):設備や社内業務、社会インフラなどにクラウドサービス、AI、IoTなどのITが活用されることで、機械の自動制御やリモートワークによる働き方改革、業務自動化により従業員の生産効率を向上されるなどの可能性を秘めたIT改革。