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産業廃棄物処理にかかるコストはどのくらい?2020年8月20日
産業廃棄物処理にかかるコストはどのくらい?
循環型社会の形成に向けて、我が国では産業廃棄物の処理についてさまざまな法規制が整備され、現在に至るまで改正を重ねています。1)
半面、こうした法規制の強化は同時に産業廃棄物の処理価格の高騰も招く結果となっています。 一般家庭向けに有料のごみ袋などを導入する自治体も増えていますが、事業者が負担する処理コストに比べれば安価と言えます。そのため、家庭ではごみを捨てることにコスト意識を持つ機会は少ないと言えるのが現状です。ごみ捨てにかかるお金がもったいなくて仕方ない、という意識をもっているご家庭は少ないでしょう。
しかし、会社などの事業所では一般家庭とは比べ物にならないコストを払ってごみを処理しています。特に産業廃棄物に関しては、普段あまり気に留めないものでありながら、かなり高額な費用を投じて処理されている場合が多くあります。
今回は、そんな産業廃棄物の処理にかかる費用についてご紹介していきます。
目次
産業廃棄物の処理に必要な費用の内訳
産業廃棄物とはどのようなものかご存じでしょうか?
下の図のように、廃棄物は、法令で定める「産業廃棄物」とそれ以外の「一般廃棄物」の2つに分類されます。その中で、産業廃棄物はさらに2つに分類されます。汚泥や木片、廃プラスチック・コンクリートガラなどの「一般的な産業廃棄物」と、劇薬やアスベストなど一般的な廃棄物とは区別される「特別管理産業廃棄物」です2)。
特別管理産業廃棄物については処理方法そのものが法律によって決められているなど、一般的な産業廃棄物とは区別されることが多いためここでは説明を省略します。
今回の記事では一般的な産業廃棄物の処理についてお話します。
産業廃棄物そのものの処分費用
一般的に産業廃棄物は一般ごみとは区別され、処分が行われます。
そのため、発生した産業廃棄物の種類や量によっては非常に高額な処分費用が発生することがあります。例えば東京都の場合、1kgの事業系一般廃棄物を処理するのに必要な費用は「40円」となっています3)。
ここで間違えてはいけないのが、これは産業廃棄物の処理費用ではない、ということです。前に述べたとおり、廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分けられます。事業系一般廃棄物とは、事業活動から生じた廃棄物の中で産業廃棄物以外の廃棄物です。例えば、飲食店などで客が食べ残した残飯などは一般廃棄物になります。
産業廃棄物は処分にあたり専門の業者を利用する場合がほとんどですので、費用は前述の価格よりもずっと高額になります。
大半の処分業者は処分する産業廃棄物の種類によって1㎥当たりの単価を設定しており、処分を必要としている産業廃棄物の種類と総量に単価を掛けた金額が「処分費用」として請求されます。
適正に処理された証、マニフェスト代金
一般家庭から排出される一般ごみとは違い、事業所から排出される産業廃棄物には処理方法の決まりが存在します。そうした決まりにきちんと準拠し、適正に処分が行われたことを証明する書類が「マニフェスト」です。現在では一部の事業系廃棄物を除き、ほとんどの産業廃棄物の処理にマニフェストの添付が義務付けられています。
このマニフェストは家電製品で言えば保証書のようなものです。そのため処分業者に発行を依頼した場合には、発行にかかる直接的な経費金額以上に補償料としての金額も加算され、処分を依頼した会社に請求されます。マニフェストの金額には特に法的な決まりがあるわけではなく、10,000円程度で発行を請け負う業者から50,000円程度の費用が掛かる業者など様々です。
リサイクルのための分別費用
「お金さえ払えば何でも捨てられる」わけではありません。アルミ缶やその他の金属、古紙や木材など、リサイクルによって再利用が可能なものについては、きちんと分別してリサイクルに回すよう、国が指針を定めています。
そのため、様々なものが混ざり合った状態の産業廃棄物の処理では、リサイクルのための分別費用も別途必要になる場合があります。
まとめ
産業廃棄物と聞くと「価値のない無駄なもの」といったイメージを描いてしまいがちです。しかしそのほとんどは、製品を製造するために材料として使用されたモノです。例えば、塗装工程では塗装ブースに向かって塗料を噴霧しますが、塗料ミストを捕集するために水を使います。有機溶剤と樹脂顔料の混ざった水は、排水処理はもちろん一般ごみとして処分することはできませんので、産業廃棄物として処理する必要があります。
他にも、圧縮空気を作り出すコンプレッサの中にはコンプレッサオイルが入っています。オイルは運転時間とともに劣化しますので交換しますが、このオイルも産業廃棄物として処理する必要があります。さらに、給油式のコンプレッサから排出されるドレン(空気中の水分が結露した液体)には油分が含まれます。これも産業廃棄物として適切に処理する必要があります。
製造の現場では生産活動に伴い排出される産業廃棄物を「0」にすることはできません。しかし、リサイクルに活用できるものをきちんと分別したり、購入の段階から廃棄する際の方法について検討してから物品を購入したりすることで、処分に係る費用を抑制することは可能です。
普段はなかなかコスト意識の生まれにくい部分ですが、会社全体として取り組むことで費用の削減を実現することが可能です。
(参考資料)
1)「経済産業省 日本の廃棄物処理の歴史と現状」
http://www.env.go.jp/guide/pamph_list/list_ja01.html
2)東京都環境局HPより
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/resource/industrial_waste/about_industrial/about_01.html#cmshaikibutu
3)「東京23区 事業系一般ごみ処分費用」
https://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/gomi/jigyoukeikaraderugomi/tesuryokaitei.files/tesuryokaitei.pdf