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工場で防爆が必要な場所とは?危険場所について基礎から解説! 2022年12月16日

防爆機器が必要な場所はどこでしょうか。

前回の記事では防爆とは何かと、代表的な防爆構造について解説いたしました。2回目の今回は、危険場所の考え方と分類基準についてご説明いたします。また、デジタル化の進展に伴い、危険場所の考え方に変化が出てきています。最近の動向についてもご紹介いたします。

「危険場所」とは?

可燃性ガスや可燃性液体の蒸気(以下、可燃性ガス蒸気と言います。)を扱う工場や作業場で、爆発や火災が起こる可能性がある場所を「危険場所」と言います。例えば、可燃性ガス蒸気を製造する場所・取扱所、塗装などの作業を行い、可燃性ガス蒸気を発生させる場所、さらに可燃性ガス蒸気を貯蔵・保管する施設が該当します。

可燃性ガス蒸気が発生し、周囲の空気と混合して爆発のおそれがある状態を「爆発性雰囲気」が存在すると言い、爆発性雰囲気が生成された場所で電気機器などが点火源になり、爆発が起こります。そのため危険場所とは、爆発性雰囲気が生成されるか否か、またどのくらいの頻度で爆発性雰囲気が生成される可能性があるのか、を基準にして決められます。

危険場所で電気機器を使用する際は、防爆仕様のものを使用することが法令によって定められています。(労働安全衛生規則第280条)

危険場所の分類基準

危険場所は爆発の可能性が高いほど、厳しい基準の防爆対応をする必要があります。危険場所の分類基準は、主に「可燃性物質(ガスまたは蒸気)の爆発性雰囲気が発生する頻度と可能性」と「可燃性物質の滞留のしやすさ」です。

「可燃性物質の爆発性雰囲気が発生する頻度と可能性」は、どの程度連続的に可燃性物質が放出されるか、その頻度や可能性によって3等級に分類されます。また、「可燃性物質の滞留のしやすさ」は、換気度や換気の有効度によって分類されます。爆発性雰囲気が発生する可能性が高く、換気が悪い(滞留しやすい)ほど、危険度は高くなります。

危険場所の設定や使用する防爆機器の選定は、所轄の消防と相談の上、事業者自身が判断する必要があります。

危険場所の種類

「可燃性物質の爆発性雰囲気が発生する頻度と可能性」と「可燃性物質の滞留のしやすさ」によって、ガス蒸気危険場所は以下の3つの区域に分けられます。 (電気機械器具防爆構造規格第一条15号~17号)

特別危険箇所

通常の状態で爆発性雰囲気が連続して存在する場所です。連続して常時存在するほどではなかったとしても、長時間にわたって、または頻繁に存在する場所も特別危険箇所となります。

例:可燃性ガスや引火性液体を保管している容器内部、または液面上の空間

特別危険箇所(ゾーン0)

図1
概念図です。実際の設定に際しては所轄の消防署へご相談ください。

第一種危険箇所

通常の状態で爆発性雰囲気を生成するおそれがある場所です。蓋の開閉や安全弁の動作などで、通常の使用状態でも可燃性ガス蒸気が排出することがある場所は、第一種危険箇所になります。

例:蓋の開閉によって可燃性ガス蒸気を放出する開口部付近、点検や保守の際にガス蒸気を放出する開口部付近

第一種危険箇所(ゾーン1)

図2
概念図です。実際の設定に際しては所轄の消防署へご相談ください。

第二種危険箇所

通常の状態では爆発性雰囲気を生成するおそれが少ない場所です。容器や設備の劣化、換気装置の故障など異常状態になると、爆発性雰囲気が生成される可能性がありますが、もし生成した場合でも短時間しか持続しない場所が、第二種危険箇所となります。

例:第一種危険箇所の周辺や隣接する室内で可燃性ガス蒸気が侵入するおそれのある場所、パッキンの劣化や配管の腐食でガス蒸気が漏洩する可能性のある場所

第二種危険箇所(ゾーン2)

図3
概念図です。実際の設定に際しては所轄の消防署へご相談ください。

使用可能な防爆構造

区分された危険場所によって、それぞれ使用可能な防爆構造が決まっています。防爆構造については 前回の記事をご参考ください。

安全増防爆構造は、以前は第一種危険箇所で使用できませんでしたが、2008年に定められた「工場電気設備防爆指針」(通称:防爆指針)では第一種危険箇所でも使用可能となっています。

危険場所と防爆構造

図4
指針上利用可能であっても、消防の判断等により、より高い性能の防爆構造を求められる場合があります。

デジタル化に対応した防爆ガイドライン

工場のデジタル化は必須!

これまでご説明したように、爆発や火災を避けるため、危険場所においては厳しい基準をクリアした防爆機器を使う必要があります。その一方で、近年は工場のデジタル化の動きが進んでいます。

防爆機器は高価で種類も限られるため、デジタル機器の多くは危険場所で使うことができず、危険場所のデジタル化は工場の中でも特に遅れていました。しかし、製造業は高齢化が進み、これまで熟練した作業者が担ってきた保守や安全管理の人材が不足しています。また、海外との厳しい価格競争にもさらされており、コストが高い作業者に変わって自動化が必要になってきました。

生産性向上のためにも、工場全体のデジタル化推進は避けられない状況になっています。

防爆ガイドラインの制定

これまでは工場の区画全体を危険場所として設定することが多かったのですが、それでは防爆仕様以外の電気機器を持ち込むことができず、デジタル化は進みません。しかし、危険場所を詳細に設定して工場区画全体ではなく一部のみの設定とすれば、電気機器を持ち込みやすくすることができます。そこで、製造、保守、安全管理などのデジタル化を進め、生産性を向上させるための取組みが進んでいます。

2020年には、経済産業省・厚生労働省・総務省消防庁が「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」(防爆ガイドライン)を策定しました(1。工場区画内で非危険場所を制定し、そこでは非防爆機器、つまり防爆仕様ではないデジタル機器を利用できるとしています。

さらに2021年には防爆ガイドラインに基づきリスク評価のフローをわかりやすく図示したり、危険場所の見直しの事例をまとめたりした解説書が作られるなど、さらに工場のデジタル化を推進するための取組みが行われています(2

非危険場所の設定

非危険場所として設定するためには、可燃性ガスなどの密度、放出率、換気度などの条件を満たすことが必要となります。例えば塗装ブースは、これらの条件を満たすための仕様のものを選べば、フード外は非危険場所となり電気機器を使うことができるようになります。

詳しくは次回で解説いたしますが、ここでも危険場所の設定を行うのは事業者であり、所轄の消防に相談して判断する必要があることに注意が必要です。

まとめ

可燃性ガスなど爆発や火災の原因となりうる危険物を取り扱う工場では、厳密に危険場所を設定し、防爆仕様の機器を使うなどリスク管理を徹底しなくてはなりません。しかし、作業員の高齢化やデジタル化が進む昨今では、電気機器を排除することは安全性と生産性を共に低下させることにつながります。そのため工場区画全域を危険場所に設定するのではなく、細かく危険場所を区分して非危険場所を拡げ、電子機器を使えるようにする動きが進んでいます。

次回は塗装と防爆の関係について解説します。