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脱プラについて考える③ ~リサイクルからリデュースへ~2022年8月26日

使う量そのものを減らすことが大切です。

さまざまな環境問題に影響を与えているプラスチック。このプラスチックの発生をできるだけ抑制する社会に変えていく「脱プラスチック」について、これまで2回にわたって基本的な考え方や海外の動向について解説してきました。日本でも2019年に「プラスチック資源循環戦略」が策定され、基本原則を「3R+Renewable(再生可能資源への代替)」として具体的な取り組みを進めています。

循環型社会の実現を目指すキーワードである「3R」は日本でも進められていますが、近年ではよく知られた「リサイクル」よりも「リデュース」が重要視され始めています。そこで今回は、日本の「3R」の取り組みの現状や課題について解説します。

前回の記事 : 脱プラについて考える② ~日本と世界の取り組み~

前々回の記事: 脱プラについて考える① ~なぜ脱プラが必要なのか?~

3つのプラスチックリサイクルとは?

日本ではプラスチックの分別回収が進んでおり、回収されたプラスチックはリサイクルされています。リサイクル方法には3種類あります。

マテリアルリサイクル

「リサイクル」と聞いて、多くの人がイメージするのは「マテリアルリサイクル」です。使い終わったものが別のものに生まれ変わるリサイクル方法で、例えば使用済みペットボトルが椅子や文房具などに生まれ変わることを指します。

基本的には、粉砕して洗浄したもの(フレーク)、フレークを溶融して粒状にしたもの(ペレット)を原料にして製品にしています。しかし、日本でマテリアルリサイクルされて生まれ変わっている廃プラスチックは、わずか数%です。

ケミカルリサイクル

廃プラスチックを化学反応によって分子レベルまで分解し、組成そのものを変更して別のものにするリサイクル方法です。例えばプラスチックを水素やガスにして、化学工業の原料にすることを指します。

マテリアルリサイクルを繰り返すと、プラスチック分子が劣化してどんどん品質が悪くなってしまいますが、ケミカルリサイクルなら分子レベルまで分解するので、何度でも再生できます。しかし、高い技術や設備が必要となるので、資金や必要エネルギー量が高くなりがちなことが欠点です。

サーマルリサイクル

廃プラスチックを焼却処分する際に発生する熱エネルギーを回収して利用するリサイクル方法です。例えば、ペットボトルを焼却するときに発生するエネルギーを、周辺施設の暖房や温水プールに利用したり、発電に利用したりすることを指します。日本のリサイクルは、このサーマルリサイクルが大きな割合を占めます。

日本のリサイクルの問題点とは?

日本でゴミの分別化は一般的になり、レジ袋は有料化され、廃プラスチックの有効利用率も86%(※1)と高い水準にあるため、日本でも脱プラスチックが進んでいると感じる方も多いかも知れません。しかしそのリサイクル方法は、前述したようにサーマルリサイクルが大きな割合を占めます。つまり、“燃やしている”のです。

プラスチックはもともと原油が燃料なので、よく燃えて高熱になり、効率の良いエネルギー源と言われることもありますが、燃焼するときに二酸化炭素が発生します。そのため、海外ではマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが主流で、「サーマルリサイクル」という言葉はありません。サーマルリサイクルは「エネルギー回収」「熱回収」などと呼ばれ、そもそもリサイクルと認められていないのが現実です。

脱プラスチックへの道のり

世界はリサイクルからリデュースへ

プラスチックのリサイクルは進んでいますが、サーマルリサイクルはもちろん、マテリアルリサイクルもケミカルリサイクルもプラスチックを生まれ変わらせる際にはエネルギーを消費します。そのため、世界的には「3R」のリサイクルから、リデュース(発生抑制)を重視する方向に変わっています。

プラスチックをできるだけ使わず、他のもので代替していく。わかりやすい例では、スターバックスやマクドナルドなどが食器をプラスチック製から紙製へ切り替えを進めています(※2)(※3)。世界的家具メーカーのIKEAは、2020年1月にはホームファニッシング製品から使い捨てプラスチック製品を全面廃止し、さらに2030年までに包装でのプラスチックの使用を段階的に廃止します(※4)。また、ペットボトルの軽量化や薄肉化もそのひとつです。

企業活動の中でもリデュースが進む

スターバックスなどの飲食店や、レジ袋有料化など小売店での取り組みはわかりやすいですが、私たちの目には直接触れにくい産業用プラスチックのリデュースも取り組みが進んでいます。

先ほどIKEAが包装でのプラスチックの使用を廃止すると述べましたが、包装資材まで含めて考えると、物流業界は特にプラスチック製品の使用量が多い業界です。そのため、パレットやコンテナなどの物流アイテムを循環利用したり、包装資材を自然へと還るバイオプラスチックに切り替えたり、さまざまな脱プラスチックへの取り組みが進められています。

また、従来はプラスチックが使われてきた輸送用の消耗品も、結束用リサイクル紙バンドや紙製の緩衝材など、代替商品が出てきました。一例をあげると工場や物流倉庫で荷物を積んで搬送・保管する際には、荷崩れ防止用に「ストレッチフィルム」と呼ばれる透明のプラスチックシートを何重にも巻いて固定する方法が普及しています。しかしこの方法は大量のプラスチックを消費する上、梱包や荷解きに手間がかかるため、他の方法へ切り替える企業が増えてきています。

ストレッチフィルムの代替としては、荷崩れ防止用ベルトやホットメルトを使う方法の他、水溶性接着剤(パレタイズグルー)を塗布する方法があります。パレタイズグルー塗布システムによる荷崩れ防止は、わずかな塗布量で高い固定効果を発揮し、荷解きも簡単です。のりの種類や接着強度に関するお問い合わせ、設置に関するご相談は糊メーカーや装置メーカーに問い合せるとよいでしょう。アネスト岩田でご紹介可能です(※5)

パレタイズグルーを使った荷崩れ防止策は、プラスチックの廃棄量が大幅に削減されます。脱プラスチックへの動きが加速する今後は、さらに利用が広がっていくと考えられます。

まとめ:脱プラスチックの動向に常に注目しよう!

SDGsの推進など環境への意識が高まる中、これまでのようにエネルギーを使ってプラスチックをリサイクルする考え方ではなく、プラスチックを他のもので代替するリデュースの考え方が重要になってきました。

価格や重量などプラスチックのメリットは多々ありますが、代替製品を探したり、使い捨ての考え方を改めたり、脱プラスチックを進めていくことは、今後の企業活動において欠かせない視点となります。当初はコスト的にも供給的にも使い勝手が悪かった代替製品も、低価格で手に入りやすく、使いやすいものが次々と開発されています。また、今後さらに脱プラスチックを推進するための法規が整備される可能性も十分に考えられます。今後の脱プラスチックの動向に注目し、できることから取り入れていきましょう。