KAIZEN記事

脱プラについて考える② ~日本と世界の取り組み~2022年8月5日

日本の取り組みは、これから。

プラスチックが地球温暖化や海洋汚染に影響を与えることが明確になり、「脱プラスチック」が注目されるようになりました。SDGsに代表されるように、世界中が環境に配慮した循環型社会を目指していく動きの中、「脱プラスチック」はますます加速していくと考えられます。

脱プラスチックについて解説する第2回は、世界の動向や日本の現状、法規制などについて解説します。

前回の記事: 脱プラについて考える① ~なぜ脱プラが必要なのか?~

「脱プラスチック」に関する世界の動きは?

フランス、EUの動向

もともとヨーロッパは環境意識の高い地域です。その中でもフランスは世界に先駆けてプラスチックの規制に取り組んできた「脱プラ先進国」です。フランスで使い捨てのレジ袋が禁止されたのは2016年。課税や有料化ではなく「禁止」としたところに、強い意志を感じます。さらに,2020年1月から使い捨てプラスチック容器(コップ、皿、タンブラー)の使用が禁止され、2021年にはストロー、カップ用ふた、カトラリー、プラスチックのフィルムが付いた皿など、禁止範囲が拡大されました。

このような強制力を伴う強い措置は、フランスからEU全体へと広がり、2018年に「EUプラスチック戦略」が制定されました。2023年までにEU市場すべてのプラスチック包装をリサイクル可能なものとする、海洋ごみ削減のために使い捨てプラスチック10品目と漁具を対象とした規制を検討する、などの内容が盛り込まれています。また、EU全体としても2021年からストローや食器など使い捨てプラスチックの使用を禁止する法案を可決しています。

他地域の動向

ヨーロッパの流れを受けて、世界の他の地域も脱プラスチックに向けて動き始めました。 プラスチック生産量1位のアメリカでは、ニューヨーク市が2019年より使い捨て発泡スチロール製容器の使用を禁止しました。また、飲食店でプラスチックストローとマドラーを使用禁止にする法案が提出されました。シアトル市でも市内の飲食店でプラスチック製ストローやカトラリーの提供を禁止し、シアトル市に本社があるスターバックスはプラスチックストローを全廃しています。

レジ袋に関しては、アジアでは中国、インド、スリランカなど、オセアニアではパプアニューギニアなど、中南米ではハイチ、コロンビアなどが禁止しています。アフリカではルワンダ、チュニジアなど20カ国以上が禁止で、課税・有料化の国の数を大きく上回っています。 現在は日本と同様に課税・有料化でも、今後は禁止を見据えている国が多く、例えば台湾は2018年からプラスチックストローとレジ袋など使い捨て容器を段階的に禁止し、2030年には完全に使用禁止する計画になっています。

「脱プラスチック」に関する日本の動きは?

日本の脱プラは遅れている?

日本は一人あたりの使い捨てプラスチック使用量がアメリカに次いで第2位です。生産量も世界3位と、有数のプラスチック生産&消費国です。しかし、日本の脱プラスチックは諸外国に比べて遅れている、と言われています。その理由のひとつは、2018年6月に開かれたG7サミットで、具体的なプラスチックリサイクルの数値目標などを定めた「海洋プラスチック憲章」への署名を拒否したこと。産業界との調整が追いついていないことなどが理由でしたが、国際的な非難を浴びました。

他国がレジ袋などの使用を「禁止」と強く打ち出しているのに比べ、日本はまだ有料化にとどまっているので、国民に与えるインパクトは強いとは言えません。また、日本の取組みはリサイクル中心で、プラスチック製品の使用そのものを止める取組みが少ないことも批判されています。

日本の脱プラスチックに向けた法規制

遅れていると言われる日本の脱プラスチックへの取組みですが、2019年5月31日に「プラスチック資源循環戦略」が策定されました。基本原則を「3R+Renewable(再生可能資源への代替)」として、リデュース、リサイクルなどについて2035年までのマイルストーンを定め、達成を目指しています。

マイルストーン

  • リデュース
    ①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制
  • リユース・リサイクル
    ②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
    ③2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
    ④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により、有効利用
  • 再生利用・バイオマスプラスチック
    ⑤2030年までに再生利用を倍増
    ⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入

さらに、この戦略に基づく「プラスチック資源循環促進法」が2021年6月に公布され、2022年4月1日から施行されました。プラスチック資源循環促進法の主な措置内容は、以下になります。

  • ①プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計
  • ②ワンウェイプラスチック(一度だけ使用した後に廃棄することが想定されるプラスチック製品)使用の合理化
  • ③プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化

この法規により、コンビニやスーパーなどの小売店、飲食店、ホテルなどはプラスチック使用製品廃棄物の排出抑制のため、さまざまな取組みを行うようになりました。

スターバックスジャパンはFSC認証紙ストローに切り替え、セブンイレブンはバイオマス30%配合のスプーンとフォークを導入しました。JR東日本ホテルズはワンウェイプラスチック製品(ヘアブラシ、かみそり、シャワーキャップ、マドラー)をバイオマスプラスチックに切り替えるなど、多くの企業が具体的な脱プラスチックへの取組みを進めています。

今後、「脱プラスチック」はどうなる?

実は、日本はリサイクルコストを削減するため、中国や東南アジアなど人件費の安い国々に廃棄プラスチックを輸出していました。日本だけではなく、ヨーロッパやアメリカも同じです。

しかし、2017年12月末から中国は「廃プラスチック輸入禁止措置」を実施し、それまで中国に年間約150トンもの廃プラスチックを資源として輸出していた日本は大きな打撃を受けました。さらに、2018年6月にタイでも廃プラスチックの輸入制限を強化する方針が示されました。ごみを受け入れる国が減っていくのは当然の流れと言えます。

そのため、今後は今まで以上に廃プラスチックを削減する必要があります。そして、廃プラスチックを減らすには、プラスチックの発生を抑制する脱プラスチックがさらに求められる方向に進むことは間違いありません。

まとめ:法整備など日本の脱プラスチックも進んでいる!

脱プラスチックの動きは、フランスなどヨーロッパから加速し、プラスチックの最大消費国であるアメリカでも進んでいます。日本はこれまで遅れていると言われていましたが、法規が整備され、国としても企業としても取組みが進み始めています。

また、今後はさらに廃棄プラスチックを削減するために、プラスチックをできるだけ使わない社会に変えていくことが必要とされています。次回はさらに詳しく日本での廃プラスチック処理の現状や、脱プラスチックに向けた企業の取組みについて解説します。