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電気の知識③ ~配線の基礎知識とケーブルの選び方~2022年6月24日

配線は用途に合ったものを選びましょう。

前回前々回に続いて電気のお話です。今回は家庭でも身近な配線についてお話します。 配線にはさまざまな種類があり、用途もそれぞれ異なります。こちらの記事では配線の種類や選び方、選定の際の注意点などについて解説します。

配線の基礎知識

配線とは

配線と呼ばれるものは様々ありますが、ここでは私たちの身近にある、電気を通す電線やケーブル、コードについて解説いたします。集積回路の導線や電気以外を通す線も配線と呼ばれますが、ここでは触れません。

電力は送電線を通って変電所に送られ、電圧を下げてそれぞれの建物に送られてきます。屋内で配線工事をするときには形状に合わせた施工が必要になります。

配線の単位、スケアとは

スケアとはsquare mm(スクエアミリメートル)を略したものであり、配線コードの断面積を表す単位です。

単相・三相の違い

電力会社から送られてくる電気は交流ですが、交流のなかにも単相と三相があります。単相は電気を受ける電線と電気を送る電線で構成され、交互に電気が行き来するという構造です。 一方、三相は単相交流を等間隔に3つ重ね合わせたものであり、単相と比べて少ない電流で同じ電力を得られるため電気損失が少ないという特徴があります。

単相は主に一般家庭で使用され、三相はより多くの電気を使う工場などで利用されることが多いのです。

電気の配線方式

電柱から電気を引き込む際の配線方法は主に以下の4つに分かれます。

  • 単相2線式
  • 単相3線式
  • 三相3線式
  • 三相4線式

現在ほとんどの住宅や店舗などで使われているのは単相3線式で、単相2線式は小規模な住宅の電灯やコンセント用電源として使われています。

三相3線式は工場やビル等の動力用電源として用いられることが多く、三相4線式はさらに大容量のビルや工場などで用いられています。

逆相とは

逆相とは時計回りに回転するように設計された電動機が反時計回りに回転する状態のことで、正しい状態は正相といいます。

三相交流回路の相回転が逆になったとき、三相誘導電動機は逆回転します。電動機を逆方向に回転することを想定していない設計の場合、逆相になると加熱や焼き付きの原因になります。逆相の状態になっている場合、3本の配線のうち2本を入れ替えると回転方向が反転します。ちなみに、電動機の配線は色分けされており、通常どことどこを入れ替えるかも決まっています。

配線の選び方や注意点

電線といってもその種類はさまざまで、屋内の絶縁電線をはじめとして屋外の架空配電線、ケーブルなどがあります。 それぞれの太さや長さはどのように定められているのか、配線の選び方や注意点について説明します。

配線の選び方

電線の太さによって電線内を通過する電流の量が決まっており、太さと比例して流せる電流量も増えます。また電線の太さは負荷電流によって決まるだけでなく、屋内、屋外、地中などそれぞれの状況下においても異なります。

配線する際の注意点

配線の太さによって流せる電流の量が変わります。これを許容電流と呼びます。配線の太さが足りないと許容電流を超えてしまい、被覆が溶けて火災の原因になることもあります。機器までの配線の距離が長すぎると電圧降下が生じ生産機器に影響を与えることがあり注意が必要です。

電線の長さと電流量は反比例しており、電線が長くなるほど供給できる電圧が下がります。 つまり長い電線ほど電圧降下を起こしてしまいます。どれくらいの電圧降下が生じるかについては、以下の計算式を参考にしてください。

(簡略法)
三相3線式配線の電圧降下 e=30.8×電線長m×電流/1,000×断面積〔sq〕

【2.2kWコンプレッサでシミュレーション】
※コンプレッサの許容電圧降下範囲は±2%(生産機器への到達電圧が196~204V)

(理想の状態):ブレーカーから生産機器までの距離10m、配線サイズ3.5sq
e=30.8×10×40/1000×3.5=12320/3500=3.52  約3.52Vの電圧降下

(配線が長過ぎる場合):ブレーカーから生産機器までの距離30m
e=30.8×30×40/1000×3.5=36960/3500=10.56  約10.56Vの電圧降下

(配線が細過ぎる場合):配線サイズ2sq
e=30.8×10×40/1000×2=12320/2000=6.16  約6.16Vの電圧降下

上記は簡易な計算式です。電線の距離が長い場合や、扱う電流が大きい場合は誤差が大きくなりますので、下記の式で計算する必要があります。

e=K1×I(Rcosθr+Xsinθr)×L =K1×I×Z×L

e:電圧降下(V)
K1:配線方式による係数
I:電流値(A)
Z:インピーダンス(Ω/km)
L:電線のこう長(km)
R:電線1kmあたりの交流導体抵抗(Ω/km)
X:電線1kmあたりのリアクタンス(Ω/km)
cosθr:負荷端力率

ケーブルの種類

ケーブルとは導体に絶縁を施し外皮で保護したものであり、電圧や許容電流などの性能によって多種類の製品があります。 それぞれの特徴を把握して適切なケーブルを選ばなければ故障や事故の原因になります。

まとめ

配線、ケーブルはそれぞれの違いを理解して、適切に使い分ける必要があります。誤った配線を選んでしまうと火事や感電など、重大事故の原因になります。選定や工事など電気に関わる作業が必要なときは、専門の資格を持った方が施工してください。素人が手出しすると重大事故につながる可能性があることを理解しましょう。