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電気の知識② ~ブレーカーの基礎と電圧降下~2022年6月10日

電圧が下がったのに過電流が発生するのはなぜでしょうか。

前回の記事では電流や電圧、周波数など、電気の基礎についてお話ししました。今回は電気を安全に使うために必要なブレーカーと、ブレーカーが落ちる要因にもなる電圧降下についてお話しします。

ブレーカーとは?

ブレーカーの役割

ブレーカー(遮断器)は電気回路で引き起こされた異常から電線を守るための機器です。

電気回路では配線ミスや機器の故障によるショート(短絡)、機器の使い過ぎによる過電流などの異常により、感電や火災といった事故が発生する恐れがあります。その際ブレーカーが電気を遮断することにより、事故の発生を防ぐことができます。

ブレーカーの種類

ブレーカーはその用途や作動原理によっていくつか種類があります。また、同じブレーカーでも遮断する方式が違う場合があります。

用途による分類

ブレーカーの用途には主に以下の4種類があります。

・アンペアブレーカー
電力会社との契約以上の電流が流れないようにするブレーカーです。家庭用だと分電盤の中で一番大きなブレーカーですが、地方によっては設置されていない場合もあります。

・配線用遮断器
配線用遮断器は過負荷やショートで異常な電流が流れた場合に働き、配線を守ります。サーキットブレーカーまたはノーヒューズブレーカーとも呼ばれます。

・電動機保護用遮断器
電動機保護用遮断器は電動機(モーター)を保護するためのブレーカーで、電動機ごとに設置されます。配線用と違うのは、電動機が起動したときに流れる大きな電流(起動電流)を感知しない構造になっている点です。モーターブレーカーとも呼ばれます。

・漏電ブレーカー
漏電時に作動するブレーカーであり、感電事故や漏電火災の発生を防ぎます。漏電保護機能の他、配線用遮断器と同じく短絡・過負荷による遮断機能をもった製品が主流です。

作動原理による分類

ブレーカーの内部で電流を感知して配線を遮断する装置を引きはずし装置といいます。装置の作動原理は下記の通り3つあり、これらを組み合わせた方式も普及しています。

・バイメタル方式(熱動式)
「バイメタル」の名前の通り、2種類の金属を貼り合わせて作られています。金属は種類によって熱膨張率(熱を加えると膨らむ率)が異なります。バイメタルの中を電流が流れると熱が発生し、暖められた金属はそれぞれ膨らみますが、この時2枚の金属を貼り合わせたバイメタルは熱膨張の少ない側に曲がります。

このようにバイメタルが曲がる性質を利用して、一定以上の電流が流れた時に配線を遮断する仕組みです。図は考え方のみ示した簡単なものですが、実際の装置はバネやかけ金などを使ってもう少し複雑になっています。仕組みが単純なため、安価で小形のブレーカーに使われています。

・電磁式
電磁石を使って電流を遮断する仕組みです。図のようにコイルの中に鉄の棒(鉄心)が入っていて、電流を流すとこの鉄心が磁石になります。そうすると図では上にある可動鉄片が鉄心に引き寄せられ、鉄片につながったトリップバーが持ち上げられ、配線が遮断されます。

・電子式
ブレーカーに内蔵されたコンピューター(CPU)が電流を測定する仕組みです。

二つの遮断方式

ブレーカーの多くは流れる電流の大きさによって2通りの動作をします。

・事故遮断
短絡など、異常に大きい電流が流れた場合に瞬間的に配線を遮断します。動作時間は0.1秒以下になります。

・過負荷遮断
電流が定格を超えて流れると電線が熱くなり、そのままだと火災の原因になります。危険な温度になる前にブレーカーが作動しますが、動作時間は過電流の大きさによって異なり、電流が大きい程早く動作します。

例えば電磁式のブレーカーの場合、過電流が流れて磁力が大きくなってくると、コイルの中の鉄心がだんだんと鉄片側に動き、最後には鉄片が引き寄せられます。これが過負荷遮断です。一方、ショートなどで大電流が流れた場合、可動鉄片は鉄心が上がってくるのを待たずに瞬時に鉄心に引き寄せられます。これが事故遮断です。

ブレーカーが落ちる原因

ブレーカーが落ちるということは、ブレーカーの電源が切れて電気が使えなくなる状態のことを指します。ブレーカーは回路で引き起こされた異常を察知し、電気を遮断することで電線を守る装置です。ブレーカーが落ちる原因は、回路で発生した何らかの異常にあります。

契約アンペア数を超えたときも、電気の使い過ぎを察知してブレーカーが落ちます。そのため工場の電気契約でもアンペアを適切に設定しなければなりません。特に設備増設時は今の契約アンペア数で足りるかの確認も必要になります。

電圧降下とは?

原因と対策

電圧降下とは、電線やケーブルの抵抗により電源から機器側に電気が流れるにつれ電圧が小さくなっていくことです。電流が抵抗に触れることで熱を発し、エネルギーが失われることで電圧降下が生じます。

電圧降下の原因として考えられるのは下記です。

  • 機器へ繋いでいる電線が細い
  • 機器までの電線の距離が長い
  • 使用電流が多い

電圧降下が生じると電圧が不足してしまうため、本来必要な電圧を供給することができません。そうすると負荷が正常に稼働しなくなり、本来の性能を発揮できず使用する機器に不具合が生じることがあります。電圧降下は電線の太さや長さ、機器の使用電流を適正化することで回避できます。

電圧降下による過電流

製造現場でコンプレッサが止まってしまった、ブレーカーが急に落ちたというような経験はありませんか。その際は電圧降下による過電流が要因の可能性があります。

オームの法則によれば電圧が下がれば電流も小さくなりますが、この通りの働きをしない機器は意外と多いのです。例えば白熱電球は電流が大きくなると発熱して抵抗が上がり、電圧はそれほど上がりません。

数学や物理では二つの数字が比例してグラフが直線になっていることを線形、そうではないことを非線形と言います。白熱電球のように電流と電圧が比例の関係にない抵抗は非線形抵抗、非オーム抵抗などと呼ばれます。

コンプレッサなどに使われている誘導電動機の仕組みは非常に複雑なため、ここではご説明しませんが、非線形の特性を持っていて電流と電圧が比例の関係にないことは覚えておくと良いでしょう。

誘導電動機の出力をP 、電圧をV 、電流をI 、力率をcosθ、効率をηとすると、出力Pは下記の式で表されます。

P=√3VIcosθ・η

この式から、出力が一定であれば電圧が下がると電流が大きくなることが分かります。そのため電圧降下によって過電流が発生し、サーマルトリップが発生したりブレーカーが落ちたりする事態へとつながります。

まとめ

いかがでしょうか。電気機器を購入される際には設備に合わせた適切なブレーカーを選定し、電源から設置場所の距離で発生する電圧降下についても留意する必要があります。

なお、ブレーカーなどの電気用品は電気用品安全法によって技術基準が定められています。また、屋内の配線については内線規程を確認する必要があります。ブレーカーの交換には電気工事士の資格が必要になりますので、詳しくは資格を持った方にご確認ください。

次回は配線についてお話しする予定です。