KAIZEN記事
カイゼン活動が成果を出さない理由2021年6月11日
カイゼン活動が成果を出さない理由
新型コロナウィルス感染症の流行がなかなか終息を見せない中、カイゼン活動によってコストの削減をはかりたいと考える事業者の方もいらっしゃるでしょう。けれども安易なカイゼン活動は成果を出さないどころか、かえって余分なコストが発生してしまう可能性があります。
本記事ではカイゼン活動が陥りがちなパターンを考察します。
そもそもカイゼンとは何か?
カイゼンとは日本の製造業で誕生した考え方で、生産現場の作業効率を向上したり安全性を確保する活動で、誤りや欠点を是正する本来の改善と区別するためにカイゼンと表記されます。海外でも「kaizen」と呼ばれ普及しています。有名なのはトヨタ自動車グループのトヨタ式生産方式です。とはいえ、他社でも同じような改善方式はあり、それぞれ自社に適したカイゼンを行っています。
カイゼン活動の失敗パターン
一口にカイゼン活動が成果を出さないと言っても色々なパターンがあります。具体例を挙げて解説していきます。
表面だけ真似てカイゼンを導入して失敗する
成功しているカイゼンはその会社に適しているため成功しています。自社向きに最適化をせずに、トヨタや他社で成果を出している方法をそのまま表面だけ真似て導入しても失敗してしまいます。導入する前に自社の分析を行い、自社向けに最適化して導入する。もしくは導入しながら、自社向けに最適化をしていく必要があります。
暇な人の思い付きは忙しい現場には適応しない
現場が忙しく、カイゼン活動が出来ないという会社でも他の部署は余裕があるという場合があります。忙しい現場からすると、余裕がある部署から出てきた「現場に対するカイゼン」は的が外れていることが多く、また適していたとしても「忙しいのにさらに何かしろというのか」など心理的に受け入れられないということがあります。
カイゼンの旗振りをするだけでは現場はやらされ感が強く改善に対してやる気が無い
どこの企業も十分な人員がいるわけではないので、本来各セクションに分かれている仕事も数人でこなしていることが少なくありません。そのような場合、たとえカイゼンすることで業務が効率化すると言われても、日々の業務が忙しくてカイゼンどころではありません。
例えば月に最低1件のカイゼン案を提出するなどのルールを決めて運用をしたとしても、強制的にやらされたカイゼンに効果があるものが含まれているのは稀です。とりあえず何かを提出しなければという気持ちになると、たまたま目についた他部署の仕事の揚げ足取りになってしまうこともあります。
また強制することで自発的に改善を行っていた社員のやる気をそいでしまうこともあります。
生産性向上のために機械化をする
生産性向上の手段としてわかりやすいのが機械化です。機械化することでそれまで人が作業をしていた工程を自動で正確にこなすため、かなりの効果があるように錯覚します。ですが高い費用を使い機械化をしたとしても、ムダな工程を含めてそのまま機械化すると最大限の効果を得られません。
改善しやすい工程を改善しても全体最適にはならない
例えばA→B→Cの順で作業をする工程があるとします。この工程でBの作業がボトルネックになっているとしたら、AやCの作業をカイゼンして生産能力が高くなったとしても、Bの作業がボトルネックになっているため、最終的な生産能力は変わりません。カイゼンできそうな部分をカイゼンするのではなく、全体の工程を分析してカイゼンする必要があるところをカイゼンしないと全体最適になりません。
実際に効果が上がったカイゼン事例
カイゼン活動の失敗パターンばかり挙げていても、それでは実際にどうすれば良いのか?という疑問が出てくると思います。実際に効果が上がった具体的事例を見てみましょう。
商品開発チームで測定機のデータを基にして、材料の調合比率などを変更し最適な組み合わせを検討する業務がありました。
工程を紹介すると、A:材料を調合して測定機にセット。B:測定機から得られたデータの整理。C:データから新しい調合比率の検討。の順になります。測定機が古く測定結果が画像として表示されるので画像をスクリーンショットしてまとめる作業に工数がとられていました。最新の測定機を導入すれば良いのですが、数千万円の測定機を簡単に購入できるわけもなく、人海戦術でデータをまとめていました。本来はCの頭脳労働に力を発揮したいのにBの単純作業に工数を割いている状況です。Bは単純作業なのでマクロを作成し、半自動化することでCの工数を確保することが出来ました。
この事例でのポイントとしては、全体最適を図った点です。単純に最新の測定機を導入すればB工程の工数を削減できますが、営利組織なので費用対効果を考えなければいけません。費用を抑えつつ、B工程の工数を削減することで全体最適となり、最小の投資で最大限の効果を得られました。
結論
カイゼン活動の失敗パターンをいくつか挙げました。何のためにカイゼン活動を行うのかを社員に理解させ、自発的なカイゼンが出てくるように仕向けないと他部門の揚げ足取りや自己満足なカイゼンになって失敗してしまいます。
何のためにカイゼン活動を行うのか、自社にはどういう方法が適しているのかをしっかりと考えてカイゼン活動を行う必要があります。