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コンプレッサの部分増圧で省エネを実現しよう!2022年4月15日

必要なところに、必要な分だけのエアを。

コスト削減のために、日々省エネに取り組んでいらっしゃる方も多いと思います。工場の消費電力のうち、3割を占めるとも言われるほど、大きなエネルギーを使うコンプレッサ。そのため、コンプレッサの消費電力を下げると、大きな省エネ効果が見込めます。

コンプレッサの省エネ対策はさまざまな策が講じられますが、部分増圧も有効な対策のひとつ。配管全体の圧力設定を抑え、必要なところをブースターコンプレッサで部分増圧すると、効率的で省エネになります!

コンプレッサがエネルギーを必要以上に消費する理由とは?

圧縮空気は目に見えず、もともとは大気を圧縮したものなので、コスト意識が低くなりがちです。しかし、圧縮空気を作り出すコンプレッサにはかなりのエネルギーコストがかかります。しかも、必要以上にエネルギーを消費していることが多いのが実情。なぜコンプレッサがエネルギーを過度に消費してしまうのか、その理由は大きく2つあります。

必要以上の供給圧力を設定しがち

エアコンプレッサから供給される圧力を0.1MPa下げると、約8%の省エネになると言われています。しかし、工場の中で1ヶ所でも高圧エアを必要とする作業があると、その高い圧力で設定しがちです。他の作業はそこまで高圧設定は必要ないのに、ごく一部の作業のために高く設定すると、無駄なエネルギーを消費します。

例えば、自転車の空気入れを想像してください。空気が抜けている時は楽にハンドルを押し込めますが、タイヤに空気が入っていくにつれて、押し込む力を強くしなければなりません。コンプレッサでも同じで、圧力が高くなればなるほど空気を圧縮するのに力が必要です。つまり、モーターにかかる負荷が高くなり、消費電力が高くなります。

エア漏れが生じる

工場で使われるエアのうち10〜20%は配管の継ぎ手や接続口で漏れていると言われています。配管が複雑で長くなればなるほど、エア漏れは起こりやすくなります。

また、配管の圧力が高ければ高いほど、漏れるエアの量が多くなります。前の項目と関連しますが、漏れが多くなると配管内の圧力を維持しようとコンプレッサの稼働率が上がります。圧力が高くなると漏れが多くなる、という負の連鎖が起きてしまいます。

「部分増圧」で省エネを実現!

コンプレッサの上限圧力は、メーカーからの出荷時に0.7MPa程度に設定されています。しかし、実際の製造現場で必要とされる圧力の大半は、0.4MPa程度と言われています。圧力設定が高いほど消費エネルギーが多くなりますので、制御圧力を下げたいところです。実際には高圧エアが必要な装置の圧力にコンプレッサの設定圧力を合わせたり、配管の圧力損失や漏れがあるために下げられないことが多いと思います。

全体の設定圧力を下げ、部分増圧で対応!

コンプレッサの設定圧力を0.1MPa下げると、37kWのコンプレッサなら年間約80万円も電力費用を削減できます(※1)。そこで、全体の設定圧力を下げて、高圧が必要な工場内の一部の装置には部分増圧でエアを供給すれば、効率的にエネルギーを使うことができます。

※1:年間8000時間稼働、電力単価15円/kWhとして概算

増圧装置は省エネになる?

省エネのために部分増圧を考えたとき、最初に候補に上がるのは手頃な価格の増圧装置(エア駆動ブースター、空圧駆動増圧ポンプ)かもしれません。しかし「思ったよりも省エネ効果が出ない」との話もよく聞きます。

これは当然で、省エネ視点で考えたとき、増圧装置は圧縮エアを駆動源としているので、約半分を大気に排気している(捨てている)のです。エネルギー効率は50%以下と言われ、エネルギーロスが大きい設備です。そのため、エア駆動式の増圧装置は、使えば使うほどエアの消費量が増えます。コンプレッサが低速運転していた時間帯もロード時間になってしまう場合があり、結果的に消費電力が増えてしまうこともあります。

電動式ブースターコンプレッサの設置

一方、電動ブースターコンプレッサの消費エネルギーはモーターの消費電力です。増圧装置に比べて設備投資の初期コストや電気工事の手間はかかります。しかし、エア駆動式増圧装置の駆動用エアを電力換算すると、消費電力は1/3程度で済みます。そのため大きな省エネ効果が見込めます。およその消費電力は1分間当たりの駆動回数と入気圧力、吐出し圧力で計算できます。償却期間がどの程度になるか、計算してみましょう。

 

この条件の場合、年間の電気代の差額は約80万円です。1台当たりのイニシャルコストで比較すると、2年ほどで償却できる計算になります。

電動ブースターコンプレッサの提案事例

増圧装置を使って部分増圧をしている生産現場は多いですが、電動ブースターコンプレッサに切り替えるだけで、大幅なコストダウンが見込めます。提案事例をご紹介します。

ゴム部品製造工程への提案事例

製造されているゴム部品の形状が複雑なため、成形後に金型に密着して剥がれにくいことが多々ありました。そのため、非常に高圧な圧縮空気によるエアブローで剥離しています。中には、2.0MPa前後の圧力が必要な場合もあります。

そのため、必要なエア圧力を確保するために、「1.4MPaのコンプレッサ+増圧装置」または「0.7MPaのコンプレッサ+増圧装置⇒さらに増圧装置を追加」といった方法で2.0MPaまで圧力を上げています。しかし、この方法での部分増圧は、エネルギーロスが大きいため、増圧装置を電動ブースターコンプレッサに切り替えることをおすすめしています。

この場合、「増圧装置+増圧装置」の2連増圧の場合に比べると、年間で200万円近くのコストダウンの試算となります(※2)

※2:1分あたりの原料空気代2.5円/㎥、電力単価20円/kWh、稼働時間24時間、稼働日数250日とした場合

車体塗装工程への提案事例

自動車車体の塗装は電着塗装された後、回転霧化静電塗装機で塗装されます。回転霧化静電塗装機は、大量かつ高圧の圧縮エアが必要で、一般的には0.7MPa以上の圧力が必要と言われています。しかし、省エネ推進のために工場のメインライン圧力が0.5MPa以下に低く抑えられていることが多く、その場合は増圧装置で必要な圧力を確保しています。

複数台の増圧装置が設置されている場合、電動ブースターコンプレッサに切り替えると、回転霧化静電塗装機の合計必要空気量を1050L/分とした場合、年間で50万円近くのコストダウンの試算となります(※3)

※3:年間稼働時間4000時間、電力単価20円/kWhとした場合

まとめ:電動ブースターコンプレッサで大幅コストダウン!

工場の消費電力の多くを占めるコンプレッサは、全体の圧力設定を抑え、必要なところに必要な圧力を供給することで、エネルギーを効率的に使うことができます。特に、電動ブースターコンプレッサの設置は有効で、エア駆動式の増圧装置から切り替えると、大きなコストダウンを実現できます。

コンプレッサの運用について疑問や不安があれば、コンプレッサの製造メーカーにお問い合わせください。まずは工場配管の元圧を変えてみるところから改善を始めてみましょう。