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「溶接ヒューム」が特化則に追加。必要な措置を確認しよう!2021年11月12日
完全義務化前に対応を確認しておきましょう。
金属アーク溶接などの作業で発生する「溶接ヒューム」が、特定化学物質障害予防規則において新たに指定をうけました。これにより、溶接ヒュームが発生する作業場では、新たな対策が必要になります。
溶接ヒュームの特化則追加は、2021年(令和3年)4月1日より施行・運用がスタートしましたが、2022年(令和4年)3月31日まで経過措置が取られています。この期間中に、定められた措置を実施できるように、準備を進めておきましょう。
溶接ヒュームの特化則追加の概要や見落としがちなポイントなどについて解説します。
溶接ヒュームが特化則に追加された理由とは?
溶接ヒュームとは、金属をアーク溶接する作業などの加熱により発生する金属の粒子状物質です。熱によって溶けた金属が蒸気となり、空気中で個体(金属酸化物)の細かい粒子になったもので、煙のように見えます。
溶接ヒュームは、労働者に神経障害などの健康障害を及ぼすことが明らかになったため、特化則の特定化学物質(第2類物質)に追加されました。発がん性、神経機能障害、呼吸器系障害などの有害性があるとされています。
特化則追加により必要になる措置とスケジュール
必要な措置は、屋外作業場と屋内作業場で異なります。もちろん、密閉した空間で溶接ヒュームの濃度が濃くなりやすい屋内作業場のほうが厳しい措置が必要になります。
厚生労働省の資料によると、「(金属アーク溶接などの作業を)継続して行う屋内作業場」とは、以下のいずれかに該当する作業場をいいます。
- 作業場の建屋の側面の半分以上にわたって壁、羽目板その他のしゃへい物が設けられている場所
- ガス、蒸気または粉じんがその内部に滞留するおそれがある場所
なお、「継続して行う屋内作業場」には、建築中の建物内部等で金属アーク溶接等作業を同じ場所で繰り返し行わないものは含まれません。
必要になる措置一覧
詳細については厚生労働省より業種ごとのリーフレットが公開されています1)。
特定化学物質としての規則
1.全体換気装置による換気等(特化則第38条の21第1項)
金属アーク溶接等作業に関する溶接ヒュームを減少させるため、全体換気装置による換気の実施 またはこれと同等以上の措置を講じる必要があります。 ※「同等以上の措置」には、プッシュプル型換気装置、局所排気装置が含まれます。
「全体換気装置」とは、動力により全体換気を行う装置をいいます。なお、全体換気装置は、特定 化学物質作業主任者が、1月を超えない期間ごとに、その損傷、異常の有無などに ついて点検する必要があります。
2.溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用及びフィットテストの実施等(特化則第38条の21第2項~第8項)
「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場」の場合当該作業の方法を新たに採用し、または変更しようとするとき※1は、下表記載の措置を講じることが必要です。 ※1「変更しようとするとき」には、以下の場合が含まれます。
- 溶接方法が変更された場合
- 溶接材料、母材や溶接作業場所の変更が溶接ヒュームの濃度に大きな影響を与える場合
必要な措置の流れ
出典:厚生労働省 報道発表資料1)
塗装工程も同時にチェック!
塗装工程がある場合にはさらに注意が必要です。溶接ヒュームの特化則の立入検査が行われる際、塗装ブース(局所排気装置)のチェックが同時に行われることがあり、そこで検査に引っかかるケースがあります。特に「局所排気装置の自主検査の実施」の有無に関して指摘されるケースが多くみられます。
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上の記事にも記載しましたが、自主検査の実施と検査記録の保管は、違反件数の3番目に入ります。継続的に実施する必要のある項目です。『自主』検査と言っても、作業者を保護するために決められた規則です。
おろそかにしてはなりませんが、おろそかにしがちな項目なので違反件数も増える結果になります。溶接ヒュームへの対策と同時に、塗装工程の局所排気装置についても対応を進めておきましょう。
まとめ:期日までに必要な対策を!
金属アーク溶接などの作業で発生する「溶接ヒューム」が特化則に追加されたのは、人の身体に悪影響を及ぼすことが明確になったことが理由です。多くの新たな措置が必要となり、負担は決して軽くありませんが、安全な職場環境を構築し、従業員の健康を守るためにも必要なことです。
2021年(令和3年)4月1日から施行され、経過措置の期限は一年間です。定められた規則を再度確認し、違反になる項目が無いか、もしあれば必要な対策を講じておきましょう。