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生産技術職に残業が多い理由。対策はある?2020年10月16日

生産技術職に残業が多い理由。対策はある?

一般に生産技術は残業が多い職業と言われます。

実際働き方改革が進むなか、長時間の時間外労働をしている生産技術者も少なくありません。 今回は生産技術職の残業が多い理由と考えられる対策についてお話しします。



残業が多くなる原因は?

残業が多いのには生産技術職特有の理由があります。

業務内容が多岐に渡る

生産技術が担当する業務は多岐に渡っています。

主な業務として、新規製品の立ち上げ・既存工程の改善・新しい生産技術の開発などがあります。そのほか生産現場のトラブル対応や、製造部門・設計部門などの関係部署との調整も行わなければなりません。このように幅広い業務を同時に行っていることが、生産技術の残業が多い原因の一つです。

新規製品の立ち上げ業務

基本的に製品は完成予定が決まっており、あらかじめ決めた日程に沿って製造されます。

その中でも新しい製品を製造する際は色々と手間がかかるものですが、発売予定が公表されているうえに在庫が無いなど、予定が遅れた場合の納期調整が難しく、残業で対応することもあります。多岐にわたる業務のなかでも優先して取り組む必要があるのです。

トラブル対応

生産現場のトラブルは緊急対応が必要になります。

すぐに対応をしないと生産が止まってしまったり作業者が手待ちの状態になってしまったりします。しかしトラブルの原因がすぐにわからないことも多く、生産ラインに何日も張り付かなければならないこともあります。

改善への取り組み

企業全体で取り組む必要性

ここまで述べてきたように生産技術の業務は多岐に渡る上、納期が動かせなかったり緊急で対応しなければならなかったりと、個人の努力では限界があることが多いのです。
時間外労働の削減のためには企業全体で取り組む必要があると言えるでしょう。

具体的な対策は?

近年導入の進む対策の例に、フレックスタイム・ノー残業デー・インターバル制度などがあります。厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」では、働き方・休み方改革を進めるための制度や支援策、企業の取り組み事例などが掲載されています。1)

上記のような働き方・休み方改革を進めるためには、顧客との調整が必要になることもあるでしょう。しかし長時間労働を続けていると仕事の質が低下し、製品品質にも影響が出るかもしれません。労働環境の改善が顧客利益にも繋がることを丁寧に説明するなど、企業は労働者にとって働きやすい環境にするために努力すべきではないでしょうか。

企業側にはメリットもある

残業時間を削減するためには企業側に一定の努力が求められますが、同時に多くのメリットも期待できます。

すぐに効果が得られるのは人件費の削減です。労働者に時間外労働をさせる場合、企業は労働者に25%以上の割増賃金を払わねばなりません。このほか、休日労働は35%以上、さらに深夜(午後10時から午前5時)に労働が及んだ場合は重複して25%の割増賃金が必要です。これらの経費は企業にとって看過できないものと言えるでしょう。

また、労働時間の短縮は生産性の向上ももたらすと考えられています。2014年から2018年のOECD加盟国のデータによると、一日当たり労働時間の長い国や地域の方が、労働生産性2)が低くなっています。反対に労働時間の短縮に取り組んだ国の多くで労働生産性が上昇しており、労働時間と生産性には関連性が見られます。3)

最後に、労働時間を短縮すれば労働者の定着率の向上も期待できます。厚生労働省が行った最新の調査では、前職の離職理由として「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」と答えた人が男女ともに上位を占めており、仕事を選ぶ上で労働時間や休日を重視する人が多いことが伺えます。また労働時間や休日等の労働条件を理由に仕事を辞めた人は若い世代ほど多くなっています。4)

社員、特に若い世代の離職率の高さに頭を悩ませている企業は多いでしょう。また採用活動においても、学生や求職者に時間外労働の少なさをアピールすることは優秀な人材の確保に大いに役立つと思われます。

労働時間の短縮という目標において企業と労働者は対立するものではなく、ともに手を取り合ってより働きやすい環境を目指すことが出来るのではないでしょうか。