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粘度のはなし ~「さらさら」と「どろどろ」の違い~2021年1月15日

粘度のはなし ~「さらさら」と「どろどろ」の違い~

液体の「さらさら」や「どろどろ」はどうやって測るのでしょうか。今回は液体の性質の1つである「粘度」についてお話しします。

粘度とはなにか

流体には水、油、塗料、空気など様々な種類があります。これらは「流体」という文字の通り流れる物質で、一定の形がありません。形を自由に変えながらあらゆる形状に変化します。そしてこれらの流体はそれぞれ粘り気をもっています。気体の粘り気と言われても想像しにくいと思いますので、液体だとイメージしやすいと思います。私達は液体の粘り気のことを「さらさら」や「どろどろ」と表現します。

さて、ここで問題です。
サラダオイルとオリーブオイルでは、どちらがさらさらでしょうか?

正解発表の前に、「さらさら」と「どろどろ」の違いについて説明します。例えば水は容器から移しやすく、移動させた先の容器の形にすぐ変化しますし、液面が一定になるのにさほど時間はかかりません。それに対してマヨネーズはなかなか容器から流れ出ませんし、移し替えたとしても容器の隅々に行き渡り液面が一定になるには長い時間が必要です。この違いを水はさらさら、マヨネーズはどろどろと表現します。

これらの「さらさら」や「どろどろ」という感覚的な値を概念化した数値が「粘度=viscosity」です。SI単位では Pa·s で表します。この数値が大きいほど粘度が高い、つまり「流れにくい流体」であることを示します。

では先ほどの問題の正解を発表します。サラダオイルの粘度<オリーブオイルの粘度、なので、サラダオイルのほうがさらさらです。これでは感覚的な話なので、数字で表すとこうなります。


見分けにくいと思いますが、数値で表すと違いがわかると思います。すぐに正解できた方は料理が得意か、日ごろから液体の粘性に興味のあるかたではないでしょうか。 参考に、身の回りにある液体の粘度は下記の通りです。



Pa·sの頭についている「m」は「ミリ」と読み、元の単位の1/1000を表します。
余談ですが、「M」と大文字になると「メガ」と読み、元の単位の100万倍を表します。圧縮空気の圧力表示で使われる MPa でお馴染みではないでしょうか。

ちなみに、粘度が低いことを塗装業界では「シャブい」と言います。カレーを食べに行って、ここのカレーはシャブいとか固いとか言っている方がいらっしゃったら、塗装関係の方かもしれません。

粘度と動粘度

粘度の表示方法には2種類あります。1つは上記で説明した粘度(=絶対粘度)で、流体の粘り気を表します。もう1つを動粘度と言い、粘度を密度で割ったもので、流体そのものの動きにくさを表します。SI単位では固有の名称が定められていませんが、 m2/S St が用いられます。

例えばピンポン玉と同じ大きさの鉄の玉を準備し、それぞれの表面にワセリンを塗ったとします。これはワセリンの中にピンポン玉と鉄球が混ざっている液体の一部を取り出したのと同じ状況です。この時の液体の粘度はワセリンと同じだと言えますので、双方の液体の粘度は同じになります。けれどもワセリンを塗ったピンポン玉と鉄球をそれぞれ板の上に乗せて傾けると、ピンポン玉は動きませんが鉄球は転がるはずです。つまり粘度が高くても重ければ動く(逆に粘度が低くても軽ければ動かない)ことになります。

なぜこの動粘度という指標が必要かというと、粘度が同じでも動粘度が違うと性質が大きく変わるからです。粘度(絶対粘度)は流体の中での物体の動きにくさを表す指標です。例えば歯磨き粉をチューブから絞り出す時の出にくさ、抵抗力を表します。一方、動粘度は流体そのものの動きにくさを表します。例えば歯磨き粉が歯ブラシから流れ落ちやすいか、流れ落ちにくいかの差です。工業的な話をすると、潤滑油をポンプで圧送するときに流動への抵抗を表すのが粘度、潤滑油が塗布されたギヤからの油の流れ落ちにくさを表すのが動粘度です。

いかがでしょうか?粘度について知ってみると、身近な液体・気体がこれまでとは違って見えて来るのではないでしょうか。身近な液体の粘度を覚えておくと、誰かにイメージを伝えるときに役に立つことがあるかもしれません。粘度(絶対粘度)と動粘度は、流体の性質を知るうえでとても大事な指標なのです。