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工場のIoT化に向けたステップ2020年12月11日

工場のIoT化に向けたステップ

日本の人口は少子化の影響もあって年々減少をつづけています。それに伴って労働力人口も減少の一途をたどっています。 工場でも人手不足に陥る現場が多く、近年では対策としてIoTの導入が検討されることも多くなりました。IoTはうまく活用すれば非常に有効な仕組みですが、導入前にきちんと準備をすることが大切です。 今回はIoTの導入に向けた準備についてご説明します。

IoTってどんなもの

最近はテレビや新聞でもよく目や耳にする「IoT」という言葉ですが、その意味をはっきりと説明できる人は意外に少ないのではないでしょうか。

「IoT」とはInternet of Thingsの頭文字をとった言葉で、直訳すると「もののインターネット」となります。インターネットとはパソコンやスマートフォン・タブレットなどを使って接続する、いわば大きなコミュニティーのようなもので、そうした相互接続のできる環境を総称して「インターネット」と呼んでいます。

IoTはインターネットを活用し、様々なものの流れや動き、位置や数量などの情報を一括で管理、共有することで私たちの生活に役立てようという技術です。

工場でのIoTの活用法とは

工場においては、IoT導入の最大のメリットは情報の共有と属人化の排除です。

従来の工場の課題

従来の工場の仕組みを見てみましょう。

例えば、

  • 製品の加工に使う素材は注文を受けた資材部の担当者がFaxで鋼材メーカーに発注する。
  • 加工者は入荷した材料をメジャーで計って大きさを確認して加工に取り掛かる。
  • 完成した製品は検査担当者に回され、検査する段階で資材部にミルシートを要求する。
  • 出荷担当者は出荷を終えた報告を営業担当と経理部門にメールで報告する。

上記は工場ではよく見かける仕組みですが、実際はこんな悩みを抱えている工場も多いのではないでしょうか。

  • 素材がいつ入ってくるか担当者にいちいち確認しなくては分からない。
  • 検査の準備のために加工の進捗を知りたいが、現場に確認に行くと時間がとられる。
  • 顧客に提出する書類と素材とが紐付いておらず、間違った書類が発送される。
  • 出荷連絡を忘れてしまい、検収漏れが発生した。

IoT導入後の姿

こうした問題を、インターネット技術を利用して解決に導いてくれるのがIoTです。では実際に工場にIoTを導入することでどう変わるのでしょうか。先ほどの例を参考にご説明します。

  • まず、製品ごとのデータベースを共有のパソコンやサーバーに設置します。
  • 注文を受けて素材を発注した担当者がデータベースに履歴を書き込むと、加工担当者に素材の入荷予定日が形状や大きさの情報とともに届きます。
  • 加工担当者は加工を開始したことを同じくデータベースに書き込みます。検査担当者には加工完了予定が連絡され、使用する検査器具のデータも一緒に確認できるようになります。
  • 検査担当者は素材メーカーから届いたミルシートなどの必要書類をデータベースからダウンロードして検査を行い、その結果をまたデータベースに登録します。
  • 最終的に出荷担当者はそれらの書類をデータとして製品に添付して出荷し、その後データベースに出荷済みであることを登録します。営業部門や経理部門は出荷データをリアルタイムで確認することができます。

IoT導入前の準備

IoTはあくまでも道具ですので、何をしたいのかがはっきりしなければ鉋(カンナ)で釘を打つような間違った使い方をしてしまい、導入しても工場の問題は解決するどころか大きくなってしまいます。

ファーストステップは問題点の洗い出し

IoT導入を検討する上で最初にするべきことは、どのような問題が工場にあり、その問題がどのような原因で起こっているかをできるだけ正確に詳しく洗い出すことです。

例えば先ほどの「出荷連絡が漏れる」という問題について、その原因は

  • 単純に電話をすることを忘れる
  • ルールがあいまいでどのタイミングで連絡するべきかわからない
  • そもそも営業担当者がデスクにいないことが多い

など、たくさん考えられます。そうした原因の中で何が最も重要なのかをしっかりと洗い出しましょう。

どのように解決したいのか?

何が問題となっているかがみえてきたら、次はその問題をどのように解決したいかを考える必要があります。最終的にどのように解決したいのかまでを具体的にイメージすることが2つ目の準備段階です。

どんな道具を使うのか?

IoTと一言で言っても実際にはその技術は多種多様に存在します。

そのため、先ほど検討した課題解決方法にもっとも適した製品や技術を選んで導入する必要があります。いくら操作画面がスマートで格好の良いシステムでも、会社や工場の現状にマッチしていなければ宝の持ち腐れです。導入の際にはその点をしっかりと考慮することが大切です。

工場でのIoT導入はこれから加速する

こうしたIoTなどの先端技術の工場への導入はこれからますます加速していくと予想されています。少子高齢化によって工場の技術伝承が遅れ、技術が失われる危険性が叫ばれて久しくなりますが、職人技を数値化する技術なども盛んに開発されています。そうした技術を工場に取り入れていく上での、いわば基幹システムとしてのIoTの役割は今後大きくなっていくと考えられます。

また、AIなどの人口知能とIoTを組み合わせた技術の開発も加速し、今後の工場運営を考える上で重要な技術でもあります。 導入を検討する際には、しっかりとした準備期間をとって導入することが成功のカギと言えます。