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PQCDSMEとは何か2020年9月4日

PQCDSMEとは何か

製造の現場でしばしば聞かれる単語に「PQCDSME」という言葉があるのをご存じでしょうか?

「PQCDSME」とは、製造の現場において管理されるべき7つの要素のアルファベットの頭文字をとった言葉で、これらの要素をしっかりと管理することで、円滑な工場運営を目指そうという考え方を表しています。
また、単に管理するという漠然としたものではなく、各要素を数値などを用いて可視化し管理を行うことから、「目で見る管理」の基本としても用いられる単語です。

今回はこの「現場における7つの管理要素」について詳しくご説明していきます。

目次

工場で管理されるべき要素は大きく7つある

工場では様々な要因によって不適合の発生や納期の遅延など、マイナスの要素となってしまう事象が発生しています。
そうしたマイナス要素の発生を可能な限り抑制するために、常時監視していく必要があると言われているのが「PQCDSME」によってあらわされる7つの要素です。

それぞれ、PはProductivity(生産性), QはQuality(品質)、 CはCost(製造コスト)、 DはDelivery(納期)、 SはSafety(労働安全衛生)、 MはMorale(意欲)、EはEnvironment(環境)を表しています。

Productivity(生産性

工場において、適正な生産活動が行われているかをしめす指標が「生産性」です。

生産性は大きく「資本生産性」と「労働生産性」に分けることができます。
資本生産性は投入した設備に対しての成果を、労働生産性は投入した労力に対する成果を数値化したもので、いずれの場合も投入した資本や労力にたいして、適正な対価(売上と言い換えることもできる)を得られているかを表しています。

この数値の増減を監視することで、毎年や毎月の生産性が適正であったのかを確認し、問題があれば必要な対処を行うといった対策を講じます。

Quality(品質

製造の現場でもっとも関心の高い項目といっても過言ではない品質ですが、実際に品質に関するデータを適切に収集し、解析するなどした結果を現場へとフィードバックできている会社は少ないのが現実です。

単に「不適合を減らしましょう」と言った漠然としたものではなく、「5W1H」などの手法を応用し、発生した不適合をしっかりと詳細に把握、それらを数値に置き換えるなどして不適合発生の要因分析を行う。そうして得られたデータを基に適切な処置を行い、さらにその結果までも把握し持続的な改善を行っていくことが重要です。

Cost(製造コスト

いくら高品質な製品を作っていても、過剰なコストによって赤字になってしまっては本末転倒です。

会社内で製造される製品の製造原価を把握することはもちろん、外的要因によって変化する可能性のある外注費や素材費などのコストについても常に目を配る必要があります。
また、同時に加工者に対し自身の加工した製品がどの程度の利益を生み出しているか、もしくは生み出せていないかといった、コスト意識を持った作業ができるよう教育を行うことも重要です。

Delivery(納期

納期遵守率や遅延率を把握し、その要因を解析します。

どのような原因で納期遅延が起こっているのかが把握できれば、それに対して適切な対応を行います。また、製品を加工するのに必要なリードタイムの把握は工場の生産計画の立案には欠かすことのできない要素です。

こうしたデータは機械や人の入れ替えなどによっても変化する可能性があるため、継続的なデータの蓄積が必要です。

Safety(労働安全衛生

職場の衛生環境の整備も工場運営の大切なファクターの一つです。主に労災の発生件数や安全パトロールの実施件数を評価します。

現場では作業環境に関わる様々な要素(明るさや気温など)と生産性の関係性などを把握し、適切な労働環境を維持することが必要です。

Morale(意欲

近年、重要視される機会の多くなった項目として、労働者の意欲管理というものがあります。 各工場や従業員個々の意欲をある程度数値によって把握し、適切な対処を行う必要があります。製造業の主役はあくまでも人です。
数値化しにくい指標ではありますが、アンケートなどで満足度を調査することができます。

Environment(環境

最後の環境については近年、企業の社会的責任を問う声の高まりによってその必要性が高まっている項目です。

自社の儲けのために環境を破壊し続けることは、長い目で見れば自分で自分の首を絞めているに等しい行為です。生産活動では少なからず環境に負荷を与えます。その負荷をできるだけ小さくする取り組みは、現代においては避けることのできない大切な要素です。
たとえば社内で使用する揮発性物質の抑制などを目的としたVOC対策なども、環境に対するアプローチの一つです。

PQCDSMEは全員で取り組んでこそ意味がある

>PQCDSMEは製造業において監視すべき要素であるとお話ししました。しかし、PQCDSMEはそれだけではその役割を半分も果たすことはできません。
7つの要素を可視化する最大の目的は、詳細や状況の把握を行い解析することはもちろんですが、可視化した情報を社員全員に周知することが目的でもあります。

会社は一人の力で運営できるものではありません。現場をはじめとした様々な作業に関わる人全員が同じ目標に向かって努力することでしか、理想の形を維持することはできません。
そのために、様々な情報をわかりやすく可視化し周知する。周知された内容を個々人が理解し次の行動に活かしていくといった循環的なサイクルが重要なのです。