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TPMとは何か?~全員参加の生産保全~2020年9月18日

TPMとは何か?~全員参加の生産保全~

製造業にかかわる方は「TPM」という単語を聞いたことがあるのではないでしょうか。

今回はTPMの歴史と基本的な理念など、TPMの基礎についてご紹介いたします。
※TPMは日本プラントメンテナンス協会の登録商標です。

目次

TPMとは

TPMとは「Total Productive Maintenance」の頭文字をとったもので、「全員参加の生産保全」と呼ばれています。50年ほど前に日本で生まれ、高度成長期以降の日本の工場生産に大きな影響を与えた理念として、製造の現場では今でも頻繁に用いられています。また、製造業の企業運営を「設備・人・企業」といったトータルで考え、それぞれの課題をしっかりと解決していくことこそが大切であるとし、近年製造業でも導入のすすむIoTにも影響を与えている理念です。

TPMは時代に合わせて変化し続ける

TPMの歴史は1950年代にまで遡ります。当時の日本は戦後復興期からの脱却を果し急激に経済が発展していく、いわゆる「高度成長期」に差し掛かっていました。戦後復興期には製造業に使用できる機器類も限られ、その限られた生産資源をフル活用して生産活動が行われていました。しかし、限られた設備ではたびたびトラブルが発生し、その度に生産がストップしてしまう事態を招いていました。

それまでは機器類の故障が発生してから修理するいわば受動的対応が一般的でしたが、事前に故障を予知したり予測したりして修繕計画を準備しておく「予防的保全(PM)」の手法が米国から導入され、更に日本独自の全員参加型の活動(TPM)へと発展を遂げました。こうした考えかたは現代にも受け継がれ、発展を続けています。

TPMの基本理念

TPMの基本理念としては5つの要素があげられます。
ひとつめは「儲ける企業体質づくり」で、この理念がTPMの根源であり、その実現のために他の4つの要素(予防哲学全員参加現場現物主義常識の新陳代謝)があるといっても過言ではありません。

TPMにおける「儲ける企業」とは、工場や人員など生産に関わる全ての物が理想通りに成り立ち、その企業の持てる最大限の生産能力を発揮できるよう「常にその目標に向かって活動し続けることのできる企業」と言い換えることができます。

そうした理想の状態とのギャップ(理想どおりになっていない点)をTPMでは「ロス」と呼び、そのロスを様々な観点から解析・分析し対応することが重要だと謳っています。

どれか一つが欠けても理想は実現しない

TPMの掲げる5つの理念はどれか一つが欠けてしまっても、理想の企業を作り上げることはできません。理念の筆頭にある「儲ける企業体質」とは、多角的な検証や解析によって導き出された「ロス」を、その後に挙げられている4つの理念に基づき適正に継続的に対応することでしか、達成することはできません。

近年では当たり前に導入されている「QC」や「BCP」などの考え方も、それ単独では企業全体を健全な状態に導くことは困難です。それらの考え方を基本とし、もっと大局的に会社全体をとらえ対処していくことが重要であるというのがTPMの基本です。

改善はマンネリ化する

また、どんなに素晴らしい考え方であっても積極性が失われてしまうことでマンネリ化してしまうリスクを孕んでいます。

そのため基本理念の5番目には「常識の新陳代謝」という形で、常に新しいものへの探求や挑戦、情報の更新が重要であると謳っています。例えば加工を行う機械はどんどんと新しくなり、高性能に進化しているにもかかわらず、段取りや加工方法を見直さずそのままにしてしまうことは、これまでになかったロスを発生させている可能性があります。

やり方は変わっていなくても、周辺環境が変化しこれまで以上に最適な加工が行えるのに、それに着手しないというのは、機会損失的な意味合いではロスとなってしまいます。

時代に合わせて進化するTPM理論

TPM理論は現在も時代背景や生産現場の実情に合わせて進化を続けています。TPM理論の根底は、生産現場にある様々な不安要素を如何にして取り除くか、そのためにはどのような手法が効果的であるかを追求することです。

そのため、時代に合わせてTPM理論の求める具体策は変化を続けていますが、基本的な考え方そのものは大きくは変わっていません。設備保全にIoT(Internet of Things:モノのインターネット化)やAI(人工知能)を導入する際にも同じことが言えます。

参考

株式会社日本能率協会コンサルティング「すぐわかるTPM入門」
https://www.jmac.co.jp/tpm/