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ISO14001の運用でコストも削減できるか2020年7月31日

ISO14001の運用でコストも削減できるか

ISOとは「International Organization for Standardization」の略で、私たちの身近にある様々なものを国際的な統一規格として定義したものの総称です。
その中でISO14001と呼ばれる規格は、事業活動などによって発生する環境負荷をできるだけ軽減する目的で定められた、いわば環境全般についての国際的なマネジメント規格です。 日本では1990年代から品質マネジメント規格であるISO9000番台とともに、様々な業種で採用されています1)

出典:環境省 「環境にやさしい企業行動調査」平成30年度調査結果概要より(回答にはエコアクション21等の他の環境マネジメントシステムも含む)

出典:環境省 「環境にやさしい企業行動調査」平成30年度調査結果概要より

ISOと聞くと「杓子定規な規定集」といったイメージを持たれがちですが、実際には運用する会社ごとに、その会社の実態に合った規約を設け、それをきちんと運用していくことを目的としています。 そのため、ISOでは詳細な数値目標や遵守義務的な項目のほとんどは、自社で定めた内容を如何に遵守させることができるかという点に限られています。

目次

ISO14001の運用に関するメリットとデメリット

ISO14001の認証を取得し、運用していく上では様々なメリットとデメリットが存在します。特に
ISO14001の場合、ISO9001のように直接的に製品の品質を向上させるといった効果は望めません。 そのためISO14001はどうしても会社としてはデメリットのほうが大きいというイメージを持たれがちです。

ISO14001を運用する上でのデメリット

まず、最大のデメリットは認証取得やその更新にかかる費用です。ISO14001の認証に必要な費用は認証会社によっても変動しますが、おおむね50万円から150万円ほどの初期費用が必要となります。 また認証後は定期的に継続審査を受ける必要があり、その審査にも費用が発生します2)。また、管理のわずらわしさなどもデメリットと言えるかもしれません。
こういったデメリットは各種の助成金制度・支援制度を利用することで、ある程度軽減することができます。多くの自治体・公社・商工会議所が取得にかかる費用の助成や、専門家の窓口相談などの取得支援事業を実施しています3)4)

ISO14001を運用するメリット

それでは次にISO14001を運用するメリットについてお話します。 まず、ISO14001を取得することは、企業イメージの向上につながります。ISO14001の取得=環境に気を使っている会社という世間からの良いイメージを抱いてもらうきっかけになります。会社にとっては宣伝効果が見込めますので、このような効果を重要視してISO14001を取得した会社も少なくないと思います。
しかし、ISO14001の本格的な運用によって得られるメリットはそうしたブランディングイメージだけではありません。

ISO14001を運用することで削減できる様々なコスト

ISO14001では、事業活動が環境に与える負荷を如何に小さくするかという目的の下運用されるマネジメントシステムです。 そうした環境負荷低減の取り組みには、工場での様々なコストを抑制する効果が見込まれるものがあります。

ISO14001の運用で削減が期待できるコスト

削減が見込まれる工場コストには次のようなものが挙げられます。

  • 工場の電気代
    必要な電力をきちんと把握し、電力契約の見直しやクリーン電力へ切り替えるなどの方法で電気代を低減させる
  • 各種消耗品の購入費用
    余剰な消耗品の購入は結果として環境負荷を助長するとの考え方から、適切な購入量を把握し無駄な購入を抑制できる
  • 燃料費など
    社用車などで使用する燃料を管理したり、電気自動車に切り替えたりするなどの手法で燃料費の抑制が期待できる
  • ごみの処理費用
    購入時から廃棄する際の環境負荷などを勘案し、様々な物品の購入を行うため廃棄する頻度やその量を抑制できる効果がある
    事業によって排出される廃棄物は「産業廃棄物」として扱われるものも多く、その処分には多額の費用が伴う

ISO14001は見直してこそ意味がある

今回はISO14001の運用によって得られるメリットとデメリットについてご紹介しました。
ISO14001の真の目的は環境負荷の低減です。この真の目的を達成し、運用によって会社がメリットを得るためには定期的な社内規約の見直しが必須条件です。 会社の業態や社内の環境は日々変化します。その変化に柔軟に対応し規約を見直していくことでISO14001の目指す真の目的が達成され、それによって様々なメリットも享受できるようになります。

規約は一度作って終わりではなく、定期的に見直し社内に周知することが重要です。

(参考文献)

1) 環境省「令和元年度 環境にやさしい企業行動調査」
http://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/kigyo/R1/100.All.pdf

2) 日本品質保証機構 ISO14001認証取得・維持の流れ
https://www.jqa.jp/service_list/management/service/iso14001/flow.html

3) 品川区中小企業支援サイト ISO認証取得支援
https://www.mics.city.shinagawa.tokyo.jp/joseikin/shingijutu_2/814.html

4) 東京都中小企業振興公社 ISO取得支援事業
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/iso/index.html