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SDGsで考える温暖化防止に向けた取り組み②2020年4月30日

SDGsで考える温暖化防止に向けた取り組み②

1回目の記事では地球温暖化対策の世界的なルールや投資家の判断基準の変化などから企業はどのような取り組みを迫られているかを解説し、海外の先進的な取り組み事例をご紹介しました。

2回目の今回は引き続き先進的な取り組み事例としてエネルギーの地産地消の事例についてご紹介します。

地産地消エネルギー社会へ

日本では、2018年7月3日に「第5次エネルギー基本計画」が閣議決定されました。(1この「第5次エネルギー基本計画」では、2030年に向けて、エネルギーミックスを再生可能エネルギー(22-24%)原子力(20-22%)化石燃料(56%)の割合にすることをめざしています。

資源エネルギー庁によると、2018年度エネルギー需給実績では、化石燃料76.9%、原子力6.2%、再生可能エネルギー16.9%でした。

目標達成の為には2030年までに化石燃料の割合を76.9%から56%に、20.9%以上削減することが求められます(2。このように日本のエネルギー政策は道半ばですが、国内ではどのような取り組みが進められているのでしょうか。ここでは、自治体や企業などの取組みを紹介します。

表4 電源構成と最終電力消費の2010年と2018年の比較

1.地元資源の有効活用:下川町の取り組み

北海道にある下川町では従来、豊富な森林資源を利用して持続可能な地域づくりに取り組んできました。その代表例が木質バイオマスエネルギーの利用です。間伐材や端材を集めて専用のボイラで燃やし、生じた熱を公共施設に供給して冬の暖房経費を削減するもので、浮いたお金で子育て支援策などを実施してきました。

近年ではこの仕組みを利用して高齢化した地域をモデル地区として再生し、バイオマスボイラで熱源を供給する他に、ボイラの熱を用いてしいたけの菌床栽培を行うなど、雇用も生み出しています。2017年にはSDGsを取り入れた「2030年における下川町のありたい姿」を独自のまちづくりビジョンとして策定しました。

これらの取り組みが評価され、「平成29年度第1回ジャパンSDGsアワード」の本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しています(3

2.東日本大震災後の計画停電でも停電しなかった商業施設ビル

東日本大震災後、電力不足のため大規模な計画停電が実施されました。一方、東京都港区にある大型商業施設ではガスコージェネレーションシステムを導入していた為、計画停電の影響を受けませんでした。

このシステムは平時は都市ガスを燃料とした発電を行ない、東京電力の電力網と系統連携しつつ独立した配線網を利用している為、非常時は東京電力の電力網から切り離され、計画停電の影響を受けることがありません。逆に震災後は余剰の電力を東京電力に供給することが出来ました(4(5

自らできるエネルギー革命

これまで取り上げた事例はほんの一部です。前述の商業施設のように、災害時に電力網が寸断され停電がおきても、ガスコージェネレーションシステムや太陽光パネル、風力発電などの自前発電施設があれば、工場や事業所は仕事が続けることができます。

こういった大規模なシステムの導入には大きな設備投資が必要ですが、ほかにも導入しやすい選択肢として、自前の太陽光発電システムを導入する、グリーン電力証書を購入するなどがあります。SDGsの観点から説得力を持った社会に貢献する企業に変わることで、災害にも強く、社会から選ばれる会社に生まれ変わることができます。

異常気象が原因の経験したことのないような災害が身近で起きていることは、多くの方が感じていることと思います。一方世界的には、既に多国間で連携が取られCOPやSDGsなど世界的な目標も定まってきました。全世界が一丸となって温室効果ガスの削減に向け行動を起こし始めています。

企業もまた、大企業から小規模な企業までSDGsやESGを経営目標に取りこむ企業が増えきています。環境対策においても今後新たな取り組みを開始する企業が増えると考えられます。特にSDGsは世界が決めた共通目標です。金融機関や機関投資家の融資・投資の基準も、財務諸表だけではなく「ESGやSDGs」の要素を取り込むようになっています。

地球温暖化やCOPなどの国際的な動きを背景に、SDGsやESGは既に世界的な「標準」となっており、その中でも「環境」配慮は従来の「大企業だけの課題」から全ての企業の事業の健全性や持続性の観点で主要な評価指標になりつつあります。

特に、大企業のサプライチェーンに組み込まれている関連企業では、材料の調達、エネルギーの調達、地球温暖化対策など対応が求められるようになっています。このような背景でSDGsを宣言し始める企業が増えていますが、何から始めて良いのか分からないこともあるでしょう。

そのような場合、大変多くの事例がインターネットや書籍で公開されていますので参考にすることができます。まずはSDGsの目標7や目標13の観点からエネルギーの調達を見直し、温室効果ガスを削減することからアクションを始めてみてはどうでしょうか。

(参考文献)

1)第5次エネルギー計画
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/energykihonkeikaku.html

2)経済産業省・資源エネルギー庁News Release2019年11月15日
https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/stte_027.pdf

3)下川町のSDGs(持続可能な開発目標)の達成にむけた取組み
 https://www.town.shimokawa.hokkaido.jp/gyousei/2020/01/sdgs-1.html

4)電力システムのレジリエンス強化に向けた論点(経済産業省、22ページ)
 https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/system_kouchiku/001/pdf/001_008.pdf

5)ヒルズの電力を支える縁の下の力持ち、六本木エネルギーサービスとは
 https://www.mori.co.jp/morinow/2011/05/20110512160000002184.html