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SDGsで考える温暖化防止に向けた取り組み➀2020年4月15日

SDGsで考える温暖化防止に向けた取り組み➀

昨年からのオーストラリアの大規模火災、ケニアでのイナゴの大量発生、カリフォルニアでの史上最悪の山火事、北米の異常寒波、西日本豪雨など、世界的に見ても未曾有の災害が頻発しています。

特に昨年2019年の台風19号被害では、「想定外の災害」を身近に感じた方も多かったのではないでしょうか? これらの災害は地球温暖化が要因になっている可能性があると分析されており、世界的な異常気象は全世界共通の緊急の課題として認識されているのはご存知かと思います。

このような背景のもと、様々な国際会議やイニシアティブで取り組みがされており、地球温暖化対策は昨今、単に環境団体や国連が対策検討を提唱するだけではなく、世界的なルールとしての取り決めが進みつつあります。

またこのようなルール以外にも、企業においては、投資家の判断基準として、企業の環境対策への取り組みが求められるようになっています。

本記事では、世界のルールを定める国際会議であるCOPをひも解き、金融機関や投資家が注目するESG、SDGsについて昨今の事例や大きな傾向を説明します。

「国連気象変動枠組条約(UNFCCC)」から始まった地球温暖化対策

1992年に国連で「国連気象変動枠組条約(UNFCCC)」が採択され、この条約の下に1995年から毎年気候変動枠組条約締結国会議(COP)が開かれています。昨年2019年で25回目の会議がスペインのマドリードで開催されましたが、これまでにこの会議で何が話され、何が決まったのかについて、歴史を紐解いてみたいと思います。

1.COP3で「京都議定書」採択、先進国のCO2削減義務化へ

1995年3月28日から4月7日まで第1回締結国会議(COP1)がドイツ・ベルリンで開催され、2000年以降の温室効果ガス削減に関する排出量と条約の基本的なルール作りが行われました。

1997年に開かれた3回目のCOP3では、「京都議定書」が採択され、先進国にのみ2008年から2012年までのCO2削減目標に基づく削減義務が課せられました。日本は、2012年度の温室効果ガスの総排出量が基準年より増えたものの、森林吸収源や京都メカニズムクレジットを加味すると基準年より8.4%削減となり、目標を達成しました1)2)

しかしながら、削減義務を課せなかった中国やインドなど新興国を中心に温室効果ガス排出量が急増し、「京都議定書」は世界全体の温室効果ガス削減の有効な手段とはなりませんでした3)

2.196カ国が温室効果ガス削減を約束したCOP21「パリ協定」

このようにCOP3で採択された京都議定書の枠組みでは、地球規模でのCO2削減ができませんでした。そこで、公平かつ実効的な気候変動対策のために、先進国・開発途上国の区別なく気候変動対策の行動をとることを義務づけた協定として、2015年12月のCOP21で「パリ協定」が採択されました4)

この協定は、歴史上初めて、196カ国・地域が地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減に取り組むことを約束した枠組みとして、世界の注目を集めました。

パリ協定」では、長期目標として、「世界の平均気温上昇を工業化以前から2度以内に抑える」を規定しています。 日本は、国内の排出削減・吸収量の確保により、「2030年度に2013年度比26.0%削減(2005年度比25.4%削減)」という目標を定めました。そのほかの主要国の削減目標は、表1のとおりです。

表1.パリ協定の削減目標

3.MDGs(ミレニアム開発目標)とは

2000年9月、国連では21世紀の国際社会の目標として,より安全で豊かな世界づくりへの協力を約束する「国連ミレニアム宣言」を189カ国の賛成で採択しました。

この宣言では、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッドガバナンス(良い統治)、アフリカの特別なニーズなどを課題として掲げ、2015年までに達成すべき目標、MDGs(ミレニアム開発目標)が設定されました。

この取り組みが功を奏し、2015年までに極度の貧困人口は半減し、疾病対策も進みました。しかしこの間に世界では、環境問題、気候変動問題など、国際環境が著しく変化しました。

4.MDGsからSDGsへ

MDGsが終了する2015年に、新たな世界問題を組み込んだ「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連総会で採択されました。国連加盟国全会一致での採択でした。

SDGsでは貧困、健康福祉、教育、人権、環境、エネルギー、技術革新、格差社会、気候変動、平和など17の目標(なりたい姿)と169のターゲット(具体的な達成基準)が設定されています。

SDGsでは、エネルギーや温暖化対策として、SDGs7とSDGs13が設定されました。これらを抜粋して、表2、表3にまとめます。 この目標には、「国連気象変動枠組条約(UNFCCC)」のコミットメントの実施がうたわれています。 この目標の達成に向けて世界が動き出しました。

表2 SDGs7の目標とターゲット

表3 SDGs13の目標とターゲット

海外のエネルギー事情

2015年、前述の「パリ協定」と「SDGs」が世界を駆け巡り、世界のエネルギー革命が加速しました。ここではその革命の最中にある海外のエネルギー事情を紹介します。

1.投資マネーが、化石燃料からグリーンエネルギーへ

「パリ協定」後、国際会議に参加している世界の主要国では、低炭素社会にかじを切りました。米国のCOP離脱や一部発展途上国の不参加などがありましたが、世界の脱炭素エネルギーの方向性は大きく変わっていません5)

特に企業においては、これまでのキャッシュフローや利益率など定量的な財務情報に加え、非財務情報である「環境」「社会」「ガバナンス」のESG要素を考慮した投資、「ESG投資」を積極的に取り入れるようになりました6)

また、大企業がSDGsを経営戦略に取り込むようになるなか、「持続可能な開発目標」の考え方では石油関連に未来はないと判断した世界銀行は、石油関連投資を2019年で打ち切ることを決定しました7)

世界最大の投資機関であるGPIFもESG投資にかじを切りました7)。このように、脱炭素エネルギー社会を目指すESG投資が金融の世界に押し寄せています。

2.デンマークでの風力発電事例

脱炭素エネルギー社会を目指し、SDGs 13 (気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る)を国レベルで実施している例としてデンマークを紹介します。

デンマークは、総面積4万3千㎢(九州とほぼ同じ)の国土に560万人の国民が住む国で、環境エネルギーの先進国です。大西洋から吹く安定した偏西風を利用して、風力発電所を多数建設しています。

2017年には国内の電力に占める風力発電の比率が43.4%に達しました。デンマーク政府は2030年までに再生可能エネルギーの比率を50%以上とする目標を掲げていましたが、その目標が達成できると発表しています。9)10)11)12)

SDGsで考える温暖化防止に向けた取り組み②へつづきます。

(参考文献)

1) 京都議定書達成目標と達成状況
http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/data/2013/kp_commitment_130605_graph.pdf

2) 21012年度の温室効果ガス排出量(確定値)<概要>(国立顕教研究所)
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140415/20140415001.pdf

3) 環境省 2050年を見据えた温室効果ガスの大幅削減に向けて  15ページ
https://www.env.go.jp/policy/kikouhendou/kondankai01/02_siryou1-1.pdf

4) 外務省 わかる!国際情勢vol.150 (2017年1月25日)パリ協定 - 歴史的合意に至るまでの道のり
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol150/index.html

5) 経済産業省 資源・燃料政策の今後の重点(資源エネルギー庁)31/3/7(9ページ)
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shigen_nenryo/pdf/026_03_00.pdf

6) GPIF SDGsとESG投資の関係
https://www.gpif.go.jp/investment/esg/#c

7) 日経新聞 世界銀行が、石油関連投資を2019年で打ち切りを決定
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24570230T11C17A2MM0000/

8) GPIF 平成29年度ESG活動報告
https://www.gpif.go.jp/investment/esg/pdf/0813_esg_katudohoukoku.pdf

9) 外務省 わかる!国際情勢vol.16
日本のエネルギー外交 -グローバル・ビジョンと低炭素化への取り組み
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol165/index.html

10) 外務省 わかる!国際情勢 デンマークという国 - 日デンマーク外交関係樹立150周年
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/wakaru/topics/vol157/index.html

11) デンマーク国エネルギー電力気候省 プレスリリース
https://en.kefm.dk/news/news-archive/2018/jan/new-danish-wind-power-record/

12) 外務省 世界の風力発電動向と日本における課題
https://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/saisei_dounyu/pdf/003_03_00.pdf