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SDGsに関連した温室効果ガス排出抑制で生産技術部門ができることは?2020年3月13日

SDGsに関連した温室効果ガス排出抑制で生産技術部門ができることは?

日本は京都議定書やSDGs・パリ協定など気候変動における排出量削減の目標を達成できておらず、今後も「目標13:気候変動」の項目では目標達成が難しい状況にあることが示されています。

また、日本は「CO2の排出量が多い国」であるとSDGsの報告書(レポート)により指摘されています1)2)。持続可能な社会を目指して企業が取り組みを強化する中、とりわけ効果が大きく温室効果ガスを抑制できるのが製造業の生産技術部門です。

日本では自動車産業や航空産業、そのほかの製造業において高い技術を持っており、多くの工場で生産ラインが確保されています。それは日本だけでなく、中国や韓国、タイなどにも工場を持ち、その中でいかに温室効果ガスを抑えるのかという課題を抱えています。

今回は、製造業の生産技術部門の担当者にとって、具体的な施策やCO2削減や省電力など環境への取り組みが大切な理由についてご紹介します。

1.温室効果ガス排出抑制で生産技術部門に求められるもの

製造業の生産技術部門の担当者に求められるのは、造現場と生産技術部門の双方が効果的に温室効果ガスの排出抑制ができる製造・生産ラインをつくることです。本来は、コストの見積もり(工程設計書)を作成し、安全性・品質面などを決定します3)

その上で、生産技術部門が温室効果ガスの排出抑制を検討した現場を担当することで、設計の段階から実用レベルまで生産効率の改善策を提示し、最終的には環境にも優しい設備・運用案を模索します。

製造業で温室効果ガスの削減に取り組むためには、計画書を作成して、点検や評価が適切に行われるようにする必要があります4)。そのときに生産ラインの点検・評価責任者やリーダーを決めます。

環境への取り組みを率先して行うことで企業イメージの向上にも繋がるなど「インセンティブ」が確保できます2)。工場周辺の地域住民や製品を購入して使用する消費者も企業の取り組みに期待しているのです。そして、技術革新による世界的な注目を集める製品は高性能なだけでなく、環境にも配慮した製品であることが必要です。

このような理由を背景に、国・政府だけでは十分に達成できない「SDGs」(目標13:気候変動)の達成を企業が率先して温室効果ガスの排出削減目標に向けた技術開発や製造ラインの構築を進めているのです5)

図1.「SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン」の「目標13: 気候変動に具体的な対策を」のイラスト

出典:国際連合広報センター・持続可能な開発「2030アジェンダ」
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/

2.環境省のガイドラインが定める生産技術部門(製造業)に対する3つの措置とは

環境省は製造業の生産部門に対して、次のような3つのガイドラインを示しています。

①効果的な取り組みの推進

製造業の生産技術部門が、「PDCAサイクル」をモデルに用いて社内に徹底告知し、効果的な排出抑制を行うために社内体制を整備する6)。PDCAサイクルに従い、継続的に取り組むようにする。

②生産事業者が排出する温室効果ガスの抑制

製品の製造過程で生じる温室効果ガスの排出抑制を行うことで、企業の排出量を減らす。結果として、燃費や環境対策のためだけに設備投資をせずとも当該設備の運用上の工夫によって更なる向上が期待できます6)

③日常生活での排出抑制の貢献

生産された家電や電子機器、自動車などを使うとき、温室効果ガスを出すものがある。生産技術部門(製造業)が、排出を抑え効率化した製品をつくることで、日々の生活を通して利用することで少しでも排出する温室効果ガスを減らすことができます6)

例えば自動車では、モデルチェンジなどで、温室効果ガスの排出量を抑えた新車が販売されます。それを購入して運転することなどが該当します。温室効果ガスの排出量を抑えた車両を使うことで、環境問題への意識付けができるのです。

つまり、生産技術部門は、単なる製品の低コスト化・人件費削減の効率的な製造だけでなく、温室効果ガスの抑制を前提とした社内体制の構築と製造過程の排出抑制、出荷・販売後の使用による排出抑制をセットで考える必要があるのです。上記のガイドラインを念頭に、生産技術部門の担当者は取り組みを計画・実施することが望ましいでしょう6)。

導入する3つの流れ

  • 設備への対策を適用(=設備の確認や設備投資)
  • 管理マニュアルの作成(=実用段階の準備)
  • データの計測・記録、運用(=実行段階、稼働テストや本番稼動)

図2.「PDCAサイクル」のモデル

出典:産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/pdf/ghg_guideline_sangyo_4.pdf

3.太陽光発電システムの導入とエネルギー削減の部門協力

設備の効率化だけでは限界があるため、再生エネルギーの導入などを行っている企業があります。

例えば、太陽光発電システムを設置し、化石燃料だけに頼らない自家発電システムを構築して電力を補う。生産・技術・環境部門が連携して固定エネルギーの削減へ取り組む。また、インバーター機器の導入や空調の最適化など、技術部門だけに留まらず、組織全体でエネルギー効率化に向けた取り組みを行う企業も増えてきています。

(参考文献)

1) 「Sustainable Development Report 2019」(最終閲覧日:2020/2/13)
https://s3.amazonaws.com/sustainabledevelopment.report/2019/2019_sustainable_development_report.pdf

2) 「SDGsへの取り組みを活用した持続可能社会への移行加速」(最終閲覧日:2020/2/13)
https://www.jst.go.jp/crds/sympo/20190829/pdf/09.pdf

3) 「生産技術の社内での位置づけ、役割」(最終閲覧日:2020/2/13)
https://careergarden.jp/seisangijyutsu/yakuwari/

4) 「温室効果ガス排出削減計画及び平成29年度実績の報告概要」(最終閲覧日:2020/2/13)
https://www.pref.okayama.jp/page/565800.html

5) 「動き出したSDGsとビジネス~日本企業の取り組み現場から~」(最終閲覧日:2020/2/13)
http://www.ungcjn.org/pretest/sdgs/pdf/elements_file_2966.pdf

6) 「産業部門(製造業)の温室効果ガス排出抑制等指針」(最終閲覧日:2020/2/13)
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/gel/pdf/ghg_guideline_sangyo_4.pdf