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脱炭素時代のビジネス環境について考える~省エネから脱炭素へ~2020年3月13日

脱炭素時代のビジネス環境について考える~省エネから脱炭素へ~

1970年代のオイルショックを経て、日本は官民を挙げて省エネに取り組んできました。生産現場の歩留まりを上げることや、製造工程で発生した余分な熱を再利用する取り組みなどを進め、世界でもトップクラスの省エネ技術を誇ってきました。

ところが近年、地球温暖化対策が世界的な課題として取り上げられるようになり、CO2を多く発生する石炭をはじめとした化石燃料の使用に、厳しい目が向けられるようになりました。とくに製鉄業や非鉄金属業、電力事業などが対応を迫られています。

製造業全般においても、製造工程のみならず、原材料の調達から物流、リサイクルに至る一連のプロセスで、CO2を削減する取り組みが求められています。

1.持続可能な開発目標(SDGs)も脱石炭化を加速

地球規模で温暖化対策が世界的に求められるようになる中、持続可能な開発目標(SDGs)への対応も、株主などから求められるようになり、各企業は経営にSDGsを取り入れる必要性が出てきました。SDGsは、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される、2016年から2030年までの国際目標です。

2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されています1)

SDGsで掲げられている17のゴールのうち、

  • 「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
  • 「産業と技術革新の基盤をつくろう」
  • 「つくる責任 使う責任」
  • 「気候変動に具体的な対策を」

の四つが脱炭素と関わっていることもあり、企業がSDGsへの取り組みで温暖化対策は株主からも注目される取り組みになると考えられ、技術革新を図りながら気候変動への具体的対策へ繋げる考え方は製造業にとって今後特に重要になると考えられます。

図1.写真 製造業からのCO2排出に厳しい視線が向けられる

出典:写真AC(2020年2月10日) https://www.photo-ac.com/

2.国内企業の脱炭素へ向けた取り組み

次に、国内企業が具体的にどのような取り組みをしているのかをみていきます。

「国内エネルギー企業で、長期需要予測に基づき自社に厳しめの温暖化対策や事業戦略を投資家に示す事例が増えている」2)といいます。2050年代CO2の排出を実質ゼロにする目標を公表する企業や、国内の石油需要が40年には半減すると予測する企業もでています。このような事例は世界で脱炭素の流れが強まり、投資家が企業に対して厳しい視線を向けていることが背景にあると考えられます。

世界的にCO2の削減を企業に求める投資家のプレッシャーがますなかで、日本企業もCO2削減の目標達成に向け一層具体的な検討をする必要が出てきているようです。

3.日本政府も企業の対応を後押し

環境省も昨年末、2020年度当初予算案で「気候変動×防災」の大方針を打ち出しました3)。気候変動対策にも防災にも「掛け合わせ」で効果を発揮できる事業に予算を手厚く配分したものです。

これは政府の取り組みのごく一部にはなりますが、災害時に避難所となる施設で、平時はCO2排出抑制、停電時には非常用電源として活用する再生可能エネルギー設備を整備する事業や、各地方自治体で再生可能エネルギーを大量活用できるインフラ構築事業など、CO2排出ゼロへ向け、政府が積極的に予算を充てる中、官民双方で脱炭素への意識が今後一層高まると想定されます。

国全体でも環境への意識が高まる中、政府のこうした具体的な取り組みもあり、今後企業も「実行を伴う」脱炭素対策として財政面の健全性以外に環境面の具体的な目標設定・努力・実行、そして達成が投資家や地域社会から今後一層注視されると考えられます。

(参考文献)

1) 外務省公式サイト(最終閲覧日2020年2月12日)「SDGsとは?」:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

2) 日本経済新聞 (2020年2月7日)「国内エネ、「脱炭素」目標強化 欧州では報酬連動も」:
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55361290W0A200C2TJ1000/

3) 環境省公式サイト(2019年12月)「令和2年度環境省重点」:
https://www.env.go.jp/guide/budget/r02/r02juten/01_juten.pdf