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CDPが企業の気候変動対策の格付け結果を公表:日本では製造業の83%が回答2020年4月15日

CDPが企業の気候変動対策の格付け結果を公表:日本では製造業の83%が回答

世界各地の8,400社以上の企業の気候変動対策に関する調査、格付けを行うCDPが、日本の大企業であるFTSE Japan Index構成銘柄(500社)における調査結果を公表しました。この結果から、日本の大企業における最新の対策動向をご紹介します。

1.製造業は83%が回答

DPの調査は企業からの質問票への回答を元に行われ、AからD-までの8段階に格付けされますが、2019年度は500社中のうち過半数を超える316社(63%)が回答を提出しました。

CDPへの回答率が高い背景としては、CDPへの回答がCDPに賛同する世界525以上の機関投資家(資産運用規模96超米ドル)に提供され投資の意思決定プロセスで活用されていることや、回答有無を含む回答内容が原則一般公開されることが挙げられます。

また、回答率を業種別で見てみると、1位が化石燃料(5社のうち100%)、2位が製造(122社のうち83%)、3位が素材(60社のうち80%)と続いており、特に2位の製造と3位の素材では調査対象の企業数が多いにも関わらずその大多数が回答しており、それらの業種では特に対応の重要性が認識されていると言えます。

2.2030年目標が急増

図1は企業のGHG削減の目標年をあらわしたものです。(スコープ1:直接排出量とスコープ2:エネルギー起源間接排出量

図1.排出削減目標の目標年 (スコープ1、2排出量)

中期的な2026年~2030年の総量目標を持つ企業が2019年時点で132社あり、前年の83社と比べて約1.6倍と急増しています。

また、長期的な2046年~2050年の総量目標を設定している企業は同51社で、こちらも前年の38社と比べて増加しており、中長期的な視点を持って気候変動対策を行う日本企業が増加傾向である様子が伺えます。

また、比較的短期間での達成を目標としている2025年迄の目標年を掲げる企業は、売上高や生産量を分母とする原単位目標が主流です。しかしそれ以降の中長期での達成を目標にしている企業では総量目標の方が上回っており、今後売上が増え続けても着実に排出量を減らすという決意を持った企業が多数派になってきていることが分かります。

3.SBTは2021年までに主流化

スコープ1、2のGHG排出量削減目標のうち、パリ協定が目指すいわゆる「2℃目標」の達成に必要な削減カーブに沿った、科学的根拠に基づいた排出削減目標を設定している日本企業は、原単位目標の設定企業の中では既に14%、総量目標の設定企業の中では40%存在しており、特に後者は前年の38%、前々年の16%と比べて増加傾向です。

この他にも、SBTの総量目標を設定していないが今後2年以内に設定予定の企業が、これを既に設定済の企業と合わせると原単位目標の設定企業のうち過半数の62%、あるいは総量目標の設定企業も過半数の76%が、それぞれ2021年迄に野心的な目標であるSBTを設定予定ということになります。逆に言えば、2022年以降は、SBT以外の削減目標を持つ日本の大企業は少数派になる見込みです。

図2.SBTの設定企業 (外円:総量目標、内円:原単位目標)

4.省エネ製品はチャンス

気候変動に関する機会の認識としては、製品・サービスを機会と捉えている日本企業が61%と圧倒的に多く、具体的にはそのうち約半数の51%は「低排出製品及びサービスの開発または拡張」を機会として捉えている状況です。また、製品・サービス以外にも、エネルギー効率を機会として捉えている日本企業も11%存在しています。

図3.気候変動関連機会の要因

今回のCDPによる調査結果で、製造、素材の各業種を含む日本企業は、しかるべき気候変動に関する野心的な中長期目標を既に設定済または設定中であることが分かりました。このことから、今後より一層本格的な緩和策の実行が必要になってくることが見込まれます。

(参考文献)

CDP(2020年1月)「CDP 気候変動 レポート 2019:日本版」
https://www.cdp.net/en/reports/downloads/4817