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食の安全が注目される時代。食液塗布工程のリスクを知っておこう。2022年1月28日

華やかなチョコレートやナパージュの塗布に潜むリスクとは

2020年6月1日より改正食品衛生法が施行され、食品を扱う全事業者に対して「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」が義務化されました。食の安全を確保するために、ますます厳格な衛生管理が求められるようになっています。

中でも食液塗布は異物混入などのリスクがあり、非常に気を使う工程です。その一方で食品の味を高め、華やかに見せる食液塗布はこれからニーズが高まることも予想されます。

改めて食液塗布工程におけるリスクや食品衛生法の規定を確認し、対応策を講じておきましょう。

食液塗布工程における課題とは?

「食液」には多くの種類があり、食液塗布工程ではさまざまな衛生上の課題があります。代表的な例をご紹介します。

ハケや筆の使用による異物混入のリスク

ハケや筆で塗布すると、抜け毛が混入してしまう恐れがあります。抜け毛の心配が少ないシリコン製のハケもありますが、こちらは先端部が欠けてしまう恐れがあり、その場合破片の発見が困難になります。

ハケや筆による塗布の難しさ

ハケや筆で塗布するには食品に触れる必要があり、繊細な作業であればあるほど熟練の技術が求められます。経験の少ない作業者は作業中に食品の形を崩してしまったり、平らに塗らなければならないのに刷毛目を付けてしまうことがあると思います。タルトの上に乗っているフルーツが歪んだり、製品ごとに艶の出方が違ったりすることは、なるべく少なくしたい現象です。

また、具材の落下などイレギュラーなことが起これば起こるほど作業に時間がかかり、異物や菌の混入リスクも高まります。

離型剤塗布作業の負担と異物混入リスク

パン工場では生地を発酵させる際、大きな容器(ドゥボックス)に離型油を塗布します。これは容器に生地がくっつくことを防止するための作業です。

一次発酵では大きな容器を使いますが、容積が大きくなると壁面や底に手が届きません。そのため、ローラーやモップなどが使用されることがあります。これは非常に重労働な上に、ローラーやモップの抜け毛やゴミが混入する恐れがあります。

ピストレ使用による材料の飛散

洋菓子の小売店に普及しているピストレ(ハンディタイプの電動エアレススプレー)は、吹付け作業の際には便利です。しかし吹付ける量や強さの調整が難しく、必要以上に材料が飛散してしまいます。

飛散防止の為に作業台にラップを敷いたり囲いを準備したりと非常に手間がかかり、食品衛生の基本である作業場の清掃に支障をきたす恐れもあります。

また、ピストレの質量はだいたい1.5kgほどあります。塗布する液体を含めると2kg弱になります。長時間の作業には向きません。

工業用スプレーガンを使用するリスク

効率良く作業するために、やむを得ず工業用スプレーガンを使用している場合があります。しかし、工業用スプレーガンは構造、材質、潤滑剤などにおいて食品製造を想定していません。そのため食品衛生法に抵触する恐れがあります。

食液塗布工程で使う機器に適用される法令とは?

食品衛生法は、食品製造工程で使う器具及び容器包装について、以下のように定めています。食液塗布工程でもこれに沿った器具を使うことが求められます。

食品衛生法(抜粋)

  • 第15条  清潔かつ衛生的でなくてはならない。洗浄性を重視、液溜りを防止する構造のこと。
  • 第16条  有害・有毒物質を使用した機器を販売または販売用に製造してはならない。
  • 第17条  規格・基準に合わない材料・方法により製造してはならない。
  • 第18条  機器からの有害物質溶出が基準値以下であること。 

食液専用のスプレーガンのメリットとは?

ハケや筆の扱いには熟練の技術が必要になります。また、異物混入の観点から、なるべく製品と器具が接触しないことも重要な要素です。その点スプレーガンを使うと製品に直接触れず、比較的容易に塗布することが可能です(もちろん慣れは必要です)。

ただし、いくら非接触と言っても工業用のスプレーガンは食品衛生法に準拠していません。食液塗布工程においては、食品専用に作られた器具を使うことをおすすめします。

食液専用のスプレーガンには以下のメリットがあります。

食品衛生法に準拠している

食液専用スプレーガンの構造や使われている材料・潤滑剤は食用規格に準拠しています。また食品を塗布することを第一に考えて設計されており、清潔を保ちやすくしてあります。食品衛生法15条にも配慮して洗浄性を高め、液溜りを防止する構造になっています。

異物混入リスクの低減

スプレーガンは食材に触れることなく食液を塗布することができるので、異物混入のリスクが減ります。

作業効率の向上

ハケや筆、ローラーなどに比べて格段にスピーディーに作業することができ、作業者の負担が減ります。電動エアレススプレーと違いスプレーガン自体の重さは約400gです。質量の軽さも作業性を上げ、作業者の負担を減らすことが出来ます。

製品の標準化とクオリティアップ

スプレーガンの操作は簡単で、熟練技術がなくてもある程度均一に塗布することができます。また液体の噴出量などの各種条件を数値で管理することができます。これまで作業者によって差があった品質を一定に保ちやすくなります。

製品品質の向上も期待できます。例えばボンボンショコラなど表面がピカピカのチョコレートは、型にスプレーで色を付けてからチョコレートを流し込んで色を転写させて作ります。細かい霧で薄く何度も塗り重ねることでピカピカな表面になるのです。スプレーガンではこのような作業もやりやすくなります。

食液塗布工程にもリスク管理が必要です。早めの対処を!

食に対する安全性がますます求められる昨今、食液塗布工程にもリスク管理が必要です。食液専用のスプレーやポンプを導入すれば、リスクを回避するとともに、生産性や品質を向上させることができます。初めての方はまず、食液用のスプレーを試してみることをお勧めします

最後に1つ、お断りです。これまで食品専用の機器をご紹介しましたが、食品衛生法『準拠』と記載しています。食品衛生法は許認可を出す法律ではありませんので、適合や合致という言葉を使えません。法に沿って製造している食品衛生法『準拠』の機器であることをご理解ください。