産業廃棄物や廃水を減らそう
暑い夏が来る前に、ドレンについて考えてみませんか。
やっかいなドレンがひき起こす問題
工場では毎日さまざまな産業廃棄物が発生します。コンプレッサから排出されるドレンもその一つ。処理の手間やコストに頭をいためている管理者の方もいらっしゃるでしょう。
SDGsでも廃棄物や未処理排水の削減を目指したゴールが設定されています。SDGsでは目標6の「安全な水とトイレを世界中に」で未処理排水の削減を、目標12の「つくる責任、つかう責任」であらゆる廃棄物の管理と削減を目指しています。
本記事ではドレンの発生原因と、不純物を含んだドレン問題についてお話します。
暑い夏とドレンの関係
蒸し暑い日本の夏。特に関東地方などの太平洋側では顕著です。これは、夏になると温かい太平洋高気圧が日本列島近海まで張り出し、高気圧周辺で温められた海面で発生した水蒸気が運ばれてくるからです。
暑い夏の日に氷の入ったグラスを用意すると、グラスの周りにたくさんの水滴がつきますね。水滴がつく量が冬よりも多いのには、中学校で習った「飽和水蒸気量」が関係しています。
空気のかたまりが含むことのできる水蒸気量の上限を「飽和水蒸気量」と言いますが、これは空気の温度によって変わり、空気の温度が高くなるほど、含むことのできる水蒸気の量は多くなります。水蒸気をたくさん含んだ温かい空気が冷たいグラスに触れて冷やされると、空気中に含むことのできる水蒸気の量が少なくなり、含み切れなくなった水蒸気が水滴になって出てくるのです。
エアコンからドレンが出る仕組みもこれと同じです。エアコンは冷房運転時、温かい空気を取り込んで冷やし、涼しい空気を室内に送り込みます。この時に温かい空気が急に冷やされることで水滴が発生し、ドレンホースを通って外に排出されます。室外機のあるベランダが水で濡れていたりするのはこのためです。
工場のドレン問題
家庭用のエアコンであれば床を濡らす程度でも、工場で使われる大型の機械となると、ドレンがバケツにたまる程の量になることがあります。
コンプレッサを例にとってみましょう。コンプレッサは周囲の空気を取り込んで圧縮し、工場のラインなどへ送り出しています。その時に取り込まれる周囲の空気が温かく湿っていた場合、コンプレッサは空気と一緒に大量の水蒸気を取り込むことになります。
例えばコンプレッサが周囲の空気を大気圧から0.7Mpaまで圧縮したとします。この時、圧縮された状態でタンクに入っている空気は、周囲の空気に比べると1/8まで押し縮められています。そして、空気と一緒に取り込まれた水蒸気も元の1/8のスペースに押し込められていることになります。
圧縮された空気は大変熱くなっており、そのまま送り出すわけにはいかないので、タンクや配管、ドライヤを通る過程で冷やされます。この過程で空気に含み切れなくなった水蒸気が大量のドレンになって出てくるのです。
油を含んだドレンが引き起こす問題
大量に発生するドレンが問題視される理由は、多くの場合ドレンに不純物が含まれ、そのまま捨てるわけにいかないからです。
例に出したコンプレッサは周囲の空気を取り込んで圧縮しますので、周囲の空気が不純物で汚れていた場合は不純物も一緒に取り込んで圧縮され、圧縮空気やドレンと一緒に出てきます。また、コンプレッサがオイル潤滑式の場合も圧縮空気やドレンに油が含まれています。工場では油その他の不純物が含まれた空気をそのままラインに送り出すことはせず、フィルタなどでろ過してから利用しています。
ドレンの方も不純物が含まれたまま地面に流したり、川や下水に捨てたりするわけにはいきません。工場・事業所からの排水には水質汚濁防止法や下水道法で基準が設けられています。オイル潤滑式コンプレッサで使われている鉱物油の場合、ノルマルヘキサン抽出物質含有量が1Lあたり5mg以下であることが求められていますが、オイル潤滑式のコンプレッサから出るドレンにはこの基準を超える油が含まれています。
そのため、ドレンをすべて産業廃棄物として処理するか、ドレンに含まれる油と水を分離装置で分離し、残った油や汚れたフィルタを産業廃棄物として処理する必要があります。
オイルフリー化
コンプレッサには前述のオイル潤滑式の他に、潤滑油を使わないオイルフリー式もあります。オイルフリーコンプレッサは多くの場合、発生したドレンを下水処理することが出来ます。(前述のとおり、吸い込んだ空気に不純物が含まれていた場合はドレンにも不純物が含まれます。また、各自治体の排出基準を確認する必要があります。)
オイルフリー機は食品、塗装、医療、半導体、精密機器等の油分を嫌う用途で広く使われています。これ以外の用途であっても、潤滑油の管理や油による汚染、ドレン処理にかかるコストを考慮するとオイルフリー機を検討してみる価値があると言えるでしょう。