コラム 塗装のコンシェルジュ

塗装のエネルギーロスを減らして、コスト削減につなげよう!

エネルギーを消費しているポイントはどこでしょうか。

製造工程の中でも、塗装工程は大きなエネルギーを消費します。多くの製造工程がある自動車製造で、全体のCO2排出率の中でも4分の1を占めるほどです。そのため、塗装工程の省エネ化を進めることは、コスト削減に直結します。環境対応技術は進歩を続けているので、改めて塗装工程を見直し、できるところから適切な省エネ対策を進めていきましょう。

前回の記事はこちら

塗装工程でエネルギー消費量が多くなるポイントは?

塗装工程で多くのエネルギーを消費するのは、吹き付けと乾燥です。塗装は何度も塗り重ねる必要があるため、その際のスプレーガンのエアを作るエネルギーや、塗装ブース内の空調を管理するエネルギーが必要となります。

また、塗料を安定付着させるための高温での焼き付け乾燥も、熱風を作るために多くのエネルギーを消費します。

塗装ブースの省エネ対策

塗装はブース内で行われますが、このブースでの消費エネルギーを削減したり、エネルギー源を環境対応のものに移行したり、省エネ化を目指した技術が開発されています。

塗装ブース内の効率化

塗装ブースの間口を小さくする、ブース内で製品を回転させて塗装することで空間に無駄をなくすなど、ブース内の作業や空間を効率化することを念頭に置いて塗装ブースを設計することで、エネルギーコストを削減することができます。

塗装ブースを設置する建物の形状や製造品に合わせて最適な設計をすれば、省エネだけでなく、産廃量の削減や直行率の上昇などを実現することも可能です。

ブース排気のリサイクル

塗装ブースからの排気をリサイクルして、塗装ブース内の空調に利用する取り組みも行われています。排気中の塗料カスとVOCを除去して再利用するため、温湿度調整の負担が少なく済みます。

乾燥炉の省エネ対策

乾燥には熱風を作るためのエネルギーが大量に必要となります。そのため熱源の省エネ化など、さまざまな対策が進んでいます。

排熱のリサイクル

乾燥炉で使う熱風は、大気をガスやLPGなどで加熱することで作り出しますが、同時に大量の排熱を大気に拡散しています。この排熱を回収し、乾燥炉の吸気として取り入れることで使用エネルギーの削減ができます。

ヒートポンプの導入

熱源を省エネが期待できるヒートポンプに変更する取り組みも進んでいます。例えば、ガスバーナーによる加熱と吸収式冷凍機による冷却をしたときに比べ、エネルギー使用量を50%以上削減できる、との試算もあります。CO2排出量も50%以上削減できる見込みで、エネルギーコストが大幅に削減できます。

「吸着式ドライヤ」は、圧縮空気中の水分を吸湿材(吸着材)で吸着し、除湿を行います。冷凍式エアドライヤに比べて高い乾燥度を得られる特長がありますが、価格は高くなりがちです。

赤外線加熱の導入

乾燥炉の形状や製品によってエネルギー効率は異なりますが、一般的に熱風循環方式よりも赤外線方式の加熱が高効率・省エネルギーと言われています。

熱風循環方式は、燃料をバーナーで燃焼させて空気を加温し、熱風循環ファンにより乾燥炉内に熱風を供給します。乾燥炉内全体に広く熱が行き渡るので乾燥ムラが少なく、複雑な形状の製品にも対応できますが、全体を加温するために消費エネルギーが多くなります。

一方、赤外線により放射加熱する赤外線方式は、循環ファンが必要ないので短時間で高温まで達します。また、放射されている部分のみ加熱されるため効率がよく、エネルギーを削減できます。

日々のメンテナンスの徹底

塗装ブース、乾燥炉などの機械共通事項ですが、空調や換気の適正化、熱漏れのチェック、フィルター掃除など、日々のメンテナンスが疎かになっていると、無駄なエネルギーを消費することになります。不具合を感じながら使っていると、大きなコスト増につながっていることも。

ブースのメンテナンスは骨の折れる作業ですが、だからこそ点検扉の有無などメンテナンスのしやすさを意識して、ブースを選定することをおすすめします。

まとめ:塗装ブースと乾燥炉の運用を再確認!

エネルギーの消費が大きい塗装ブース、乾燥炉は、使い方を工夫したり、設備を再検討すると、大きな省エネ効果が見込めます。今や企業にとって必須の環境対応はもちろん、コスト削減も期待できます。

自社の設備が非効率だと感じていたり、長く設備更新をしていなかったり、塗装についての疑問がある場合は、ぜひ製造メーカに問い合わせてください。有益な最新情報をアドバイスしてくれるはずです!